中学校の時の同級生、高橋君。一時は頂点に立った彼が、
だんだんと落ちぶれていく様子を過去を交えて淡々と描く。

1.プロローグ  奴の登場
 

  それは中学校へ入学してすぐのことである。朝の校門には生活指導の教師がわんさかいて、第一ボタンを開けて入ろうものならみっちりと指導が入る。当然入学したての頃はそういった制度におびえながら登校するものなので、その辺はきっちりとわきまえていた。
 だが、奴は違った。そう、高橋君である。彼は何を思ったか学ランの中のシャツを外に出し(シッポと呼ばれた)第一どころか第二ボタンまで開けて登校してきたのだ。当然指導部からお怒りの言葉を受けていたが、彼は何食わぬ顔で教室へと入っていった。すると、すかさず隣にいた友人がこう言った。
「なんだ あいつ。馬鹿か」
 同感だった。友人との話し合いの結果彼は、「毎朝コーヒー飲まないと一日が始まんないんだよね」レベルのいきがった野郎ということになった。
 しかし世の中は謎である。こいつは異様にもてた。というのも、中一にしてすでに彼女がいたのだ。マセガキと言えばそれまでだが、同級生の立場からすればそれは許せないことだったのだ。
 そしてもう一つ解せない点があった。彼は運動があまり得意でない。例をあげると体育のバスケットボール。普通、バスケットボールのシュートというのは大きな弧を描きリングにスパッっと入るものだが、彼のシュートはボールが物凄い速さでリングへ一直線に向かっていき、ギャン!という音と共にリングにはじき返される。あまりにもこの現象が続くため、彼は一部の人間から「ギャン!」と呼ばれつづけた。それなのにもてたのである。
  このようなイライラが二年間続いた。だが三年生になったある日、ついに奴の地位を蹴落とす作戦が立てられたのである・・・

                                      2へ続く



HOME