佐藤正人の“音楽セミナー”


第6回 「アンサンブルについて3」

1 サクソフォーン・アンサンブル
  (1)サクソフォーンアンサンブルの特徴
  (2)サクソフォーンアンサンブルのテクニック
  (3)サクソフォーンアンサンブルの編成
  (4)配置について
  (5)レパートリー
2 木管アンサンブル
  (1)木管アンサンブルについて
  (2)レパートリー
  (3)配置について

1 サクソフォーン・アンサンブル
  (1)サクソフォーンアンサンブルの特徴
サクソフォーン・アンサンブルは、ソプラノからバリトンまでといった、 同属楽器の編成によってなっています。

 ・表現力の自由さ。
 ・純粋な音質。
 ・ヴィブラートの美しさ。
 ・現代的なメカニック。

 以上のような特徴があり、まさに理想的なアンサンブルといえるでしょう。 弦楽四重奏などに匹敵するといっても過言ではないと思います。 最近では、中学生や高校生も高度な曲に取り組み、すばらしい演奏を耳にする機会が増えてきてます。
  (2)サクソフォーンアンサンブルのテクニック
 まず、それぞれの楽器に慣れなければなりません。 というのは、吹奏楽とは少し異なり通常、アルトで演奏されるパッセージを、 テナーやバリトンでも演奏しなければならない場合が、たくさんでてくるからです。

 基本的なアンブシュアなどは同じですが、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンには、 それぞれのふきかたがあるのです。 例えばソプラノの多くは直管のものが多く、バリトンと比べると立ち上がりが少し違います。 ですから、まずアンサンブルで一番大切なことは、メンバーの呼吸をひとつにすることです。

アンサンブルでは、縦の線(曲の初めや終など)が特に大切です。 自分勝手にどんどん吹くのは考えものです。 必ず自分の立場(主旋律、対旋律、伴奏など)を考えて演奏することが必要です。

 サクソフォーンはピアノ異なり、音程を変化されることのできる楽器です。そのため純粋で美しいハーモニーを作り出すことができるのです。音程を変化させる方法は二つあります。ひとつはアンブシュアによるものです。締めると音程は上がり、緩めると音程は下がります。二つめは、替え指を用いる方法です。たとえば、ラの音は右手のファ、ミ、レのいずれかを押さえると音程は下がり、ソ♯のキーを押すと音程は上がります。自分なりに研究して替え指を見つけて見てください。しかし、ここで注意していただきたいのは、機械的に合わせるのではなく、あくまでも耳を使って、合うまで努力をしてほしいということです。
  (3)サクソフォーンアンサンブルの編成
 サクソフォーンアンサンブルには、次の種類があります。

  <二重奏(デュエット)>
  ・アルト2 ・テナー2 ・アルト1、テナー1など

  <三重奏(トリオ)>
  ・アルト2、テナー1  ・アルト1、テナー2
  ・アルト1、テナー1、バリトン1など

  <四重奏(カルテット)>
  ・アルト2、テナー1、バリトン1
  ・ソプラノ1、アルト1、テナー1、バリトン1など

  <五重奏(クインテット)>
  ・ソプラノ1、アルト2、テナー1、バリトン1など

  <六重奏(ゼクステット)>
  ・ソプラノ1、アルト2、テナー2、バリトン1など

  <八重奏(オクテット)>
  ・ソプラノ2、アルト2、テナー2、バリトン2など

  <ラージアンサンブル>
  ・ソプラノからバスまで、20名くらいからなるアンサンブル。

  <サクソフォーン・オーケストラ>
  ・上記の編成にコントラバスや、打楽器を加えた60人くらいのサクソフォーンだけのオーケストラ。

 大体における、サクソフォーンアンサンブルにおける編成というのは四重奏で、 ソプラノ、アルト、テナー、バリトンと、 アルト2、テナー、バリトンの2種類の編成があることは、前に述べました。 一般に前者はフレンチスタイル、後者はアメリカンスタイルと呼ばれます。 現在、サクソフォーンアンサンブル四重奏として演奏される作品の大部分は、フレンチスタイルです。 アメリカンスタイルと比較して音域も広く、音色の変化にとんでいるので、この編成のほうが好まれて演奏されています。

 しかし、ソプラノサクソフォーンは、ある程度経験を積まないと音程もとりにくく、 また、吹奏楽に取り入れられる機会も少ないので、中高生にとってはややなじみが薄いと思われます。 手軽にサクソフォーンアンサンブルの楽しさを経験していただくためには、 アメリカンスタイルで作曲・編曲された作品からはいるほうがよいでしょう。
  (4)配置について
ほとんどの場合、ステージを見て左側に、1stを受け持つ人が位置します。 そして、いずれもお互いの顔が良く見えるように工夫してください。 図を見て、演奏する曲や本番のステージにあったセッティングを心がけて下さい。
  (5)レパートリー
作曲者/編曲者 曲名 編成
(S:ソプラノ,A:アルト,T:テナー,B:バリトン)
〜三重奏〜
バッハ ムゼット A2,T.
ベートーヴェン 三重奏曲作品87 A2,TまたはA,T,B.
リュリ ガボットとロンド A2,T.
パーセル メヌエット A2,T.
〜四重奏〜
アプシル 4重奏による小品 S,A,T,B.(以下同じ)
アルベニス 3つの小品
アルベニス セヴィラ
ボッケリーニ メヌエット
ボルツォーニ メヌエット
ボザ アンダンテとスケルツォ
クレリス かくれんぼ
クレリス 紡ぎ歌
クレリス 序奏とスケルツォ
ダマーズ 四重奏曲
デドゥリック モダンアート組曲
ドビュッシー 小さな黒人
ドビュッシー 亜麻色の髪の乙女
ドビュッシー 小さな羊飼いとゴリヴォーグのケークウォーク
デザンクロ 四重奏曲
デュボア 四重奏曲
デュボア 変奏曲
フランセ 小四重奏曲
ガーシュイン 3つの前奏曲
グラズノフ サクソフォーン四重奏曲作品109
イベール 物語
ジャンジャン 四重奏曲
ラクール 四重奏曲
ランティエ アンダンテとスケルツォ
メンデルスゾーン 紡ぎ歌
ピエルネ 序奏と変奏
ピエルネ おばあさんの歌
ピエルネ 昔の歌
ピエルネ 小さな鉛の兵隊の行進
リヴィエ グラーヴェとプレスト
リュエフ 演奏会用四重奏曲
ワルター クウィンタリズム
ワルター トランジェション
ワルター フィナーレ
ヴェロンヌ 半音階的ワルツ
ティスネ アリアージュ
バッハ 有名なアリア
バッハ サラバンドとバディネリ A2,T,B.(以下同じ)
ビゼー アダージェット
ビゼー 「アルルの女」より
ヘンデル アダージョとアレグロ
ベネット サクソフォーンシンフォニエッタ
〜五重奏〜
ゼム スカンジナヴィア民謡 A2,T2,B.
〜六重奏〜
コレルリ サラバンドとクーラント
ドニゼッティ 「ルチア」より6重奏曲
ホルメス 黒人霊歌による変奏曲
マスネ 「絵のような風景」よりアンジェラス
パレラ エルカペオ
ワルタース わが人生
ワルタース ピッツァパーティー
ワルタース スピリチュアル・コントラスト


★お薦めレパートリー★
作曲者/編曲者 曲名 出版社
ショルティーノ
P.Sciortino
教徒の踊り
DENSE PAIENNE
CHOUDENS
ピエルネ
G.Pierne
民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
INTRODUCTION ET VARIATION
SUR UNE RONDE POPULAIRE

アルベルニ/根津 真
I.Albeniz
カディス
CADIZ
未出版
リヴィエ
J.Rivier
グラーヴェとプレスト
GRAVE ET PRESTO
GERARD
BILLAUDOT
グラズノフ
A.Glazounow
カンツォーネ・ヴァリエ
CANZONA VARIEE
BOOSEY&
HAWKES
デュボワ
P.M.Dubois
四重奏曲
QUATOUR

ヴェローヌ
P.Vellones
半音階的ワルツ
VALES CHROMATIQUE
HENRY
LEMOINE
ランティエ
P.Lantier
アンダンテとスケルツェット
ANDANTE ET SCHERZETTO
GERARD
BILLAUDOT
シモニ
J.M.Simonis
ブタド
BOUTADES
GERARD
BILLAUDOT
ジャンジャン
F.et M.Jeanjean
パピヨン
PAPILLONS(Scherzo)
SALABERT
サンジュレ
J.B.Singelee
アレグロ・ドウ・コンセール
ALLEGRO DE CONCERT
CARL
FISCHER
アプシル
J.Absil
タランテラ
TARENTELLE
HENR
LEMOINE
フランセ
J.Francaix
小四重奏曲
PETIT QUATUOR
B.SCHOTT
クレリス
R.Clerisse
序奏とスケルツォ
INTRODUCTION ET SCHERZO

デザンクロ
A.Desenclos
四重奏曲
QUATOUR

1 木管アンサンブル
  (1)木管アンサンブルについて
木管アンサンブルは次のような6人から13人ぐらいの編成のアンサンブルです。

・各楽器が原則的に2本ずつである。
・金管楽器であるホルンが木管楽器として扱われている。
・ダブルリードの楽器(オーボエとバスーン)がメンバーの主体。
・レパートリーとしてはバロック期から始まる。
・一定した楽器編成はもっていない。曲ごとに編成が変わる。
  (2)レパートリー
作曲者/編曲者 曲名 編成
〜二重奏〜
Beethoven 3Duos in C,F.&B♭ Cl,Bn.
〜三重奏〜
A.F.Eler Trio in F Fl,Cl,Bn.
Beethoven Variations on the theme "La ci darem la Mano" Fl/Ob,Cl,Bn.
G.S.Mayr 12Bagadell a 3 Fl,Cl,Bn.
I.Playl Trio in E♭ 2Cl,Bn.
W.A.Mozart 5Divertimennt 2Cl,Bn.
〜四重奏曲〜
L.E.Jabin Nocturne No.3 in G Fl,Cl,Hr,Bn.
P.Schickele 7Bagatells-1962- Fl,Ob,Cl,Bn.
E.Bozza Trois Pieces-1962- Fl,Ob,Cl,Bn.
A.Berger Quantet in C-1941- Fl,Ob,Cl,Bn.
G.F.Handel Overture-Suite 2Cl,2Hr.
F.J.Haydn Divertimento in C-1761- 2Cl,2Hr.
J.W.Hertel Sonata a quattro 2Cl,2Hr.
J.Wenth Quantetto-Concertante Ob,E,H,Cl,Bn.
〜五重奏〜
ラモー 木管五重奏のための組曲ト長調 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
保科洋 ソナティネ Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
モーツァルト/M.川島 アイネ・クライネ・ナハトムジーク 3Fl,Cl,Bn,or B.Cl.
A.Dvorak/M.川島 スラブ舞曲第8番 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
グリーグ/M.川島 ホルベルク組曲 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
アルベニス パバーナ・カプリーチョ Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
イベール 3つの小品 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
ダンツィ 木管五重奏曲 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
シュミット 小室内楽曲 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
ミヨー ルネ王の暖炉 Fl,Ob,Cl,Hr,Bn.
〜六重奏〜(2Ob,2Bn,2HrはHaydn,Morzartに多数あり)
J.C.Bach 4Quintets 2Cl,2Hr,2Bn.
J.C.Bach 6Blaser-Sinfonien 2Cl,2Hr,2Bn.
D.M.Michael Parthin 2Cl,2Hr,2Bn.
G.F.Handel 2Arids in F 2Ob,2Hr,2Bn.
C.D.von Dittersdorf 3Partitas 2Ob,2Hr,2Bn.
J.B.Vanhal Divertimento in C 2Ob,2Hr,2Bn.
J.Fiala Quintet No.1 2E,H,2Hr,2Bn.
F.Danzi Sextet in E♭ 2Cl,2Hr,2Bn.
C.M.von Weber Adagio&Rondino 2Cl,2Hr,2Bn.
H.Genzmer Sextet-1966- 2Cl,2Hr,2Bn.
M.Seiber Serenade-1925- 2Cl,2Hr,2Bn.
D.M.Michael Parthia No.2 Fl,2Cl,2Hr,(2)Bn.
〜七重奏〜
A.Rosetti Parthia in F 3Ob,2Hr,Bn,D,B.
〜八重奏〜
A.Rosetti Parthia No.3 2Ob,2Cl,2Hr,2Bn.
C.P.E.Bach 6Sonates 2Fl,2Cl,2Hr,2Bn.
A.Tansman 4Impressions 2Fl,2Ob,2Hr,2Bn.
〜九重奏〜
G.Donizetti Sinfonia-1817- Fl,2Ob,2Cl,2Bn,2Hr.
〜ピアノとともに〜
G.Donizetti Trio in F Fl,Bn,Pf
F.Danzzi Quintet in D.op.41 Ob,Cl,Hr,Bn,Pf.
I.J.Playel Quintet in C Ob,Cl,Hr,Bn,Pf.
L.Thuille Saxtet in B♭ op.6 Fl,Ob,Cl,Bn,Hr,Pf.


★お薦めレパートリー★
作曲者/編曲者 曲名 出版社
イベール
J.Ibert
5つの小品
CINQ PIECES en Trio
L.B.M.DRER
ロッシーニ 管楽四重奏曲 第1番 ヘ長調
QUARTET No.1 F-Dur
B.SCHOTT
ダンツイ
F.Danzi
木管五重奏曲 変ロ長調 作品56ー1
BLASERQUINTETT B-dur Op.56-1
F.F.C
LEUCKART
ミヨー
D.Mihaud
ルネ王の暖炉
Suite "LA CHEMINEE DU ROI RENE"
SOUTHERN
ヒンデミット
P.Hindemith
小室内楽曲
KLEINE KAMMERMUSK

ラモー/ウブラドウー
J.Ph.Rameau
シンフォニーと舞曲
SYMPHONIES ET DANSES

ドビュッシー/ヴォルマース
C.Debussy
アラベスク 第1番
FIRST ARABESQUE
NEIL
A.KJOS
アプシル
J.Absil
ブルガリア 舞曲集
DANSES BULGARES
HENRY
LEMOINE
アーノルド
M.Arnold
3つの水夫の歌
THREE SHANTIES
CARL
FISCHER
アンドリーセン
J.Andriessen
スペインのジェスチュア遊び
SIARADA SPAGNUOLA
DONEMUS
AMSTERDAM
  (3)配置について
基本的には各譜面台は低く、しかも可能な限りつけ手、合わせること。 同時に各奏者はなるべく譜面台から離れるます。
指揮者のいない場合は「縦長」の配置をとり、横に広がることは厳禁です。 演奏する曲やステージの大きさでも変わると思いますが、 信用のおける第三者に客観的にリハーサルを聴いてもらって、セッティングを決定するのも良い方法です。

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