こうして嘘つきの僕は世の中をすかした目で眺めながら家路につく。

そして普段の僕に戻って作詞ノートに向かうのだ。

嘘つきの僕は、いろんなことを教えてくれる。ドラマティックな展開が

滝のようにあふれてくる。そして今日も僕は歌詞が書けるのだ。



嘘つきの僕は何人もいる。恋する少女もいれば、バリバリのヤンキーもいる。

くたびれたサラリーマンもいれば、余生を楽しむおばあちゃんもいる。

なりきり度はそれぞれ違えど、その人間になって、世の中を見ると

嘘は俄然リアリティを帯びてくるのだ。



僕の嘘つき生活は、まだ始まったばかりで、なりきれるキャラクターも少ない。

もっともっとバリエーションを増やして、プロ作詞家として、堂々と嘘を

つけるようになりたいと日々頑張っている。数年後、あなたが涙を流した歌が、

僕のついた嘘だったとしたらそれほど嬉しいことはない。



この文章にも、嘘がいくつか混じっている。

あなたにはそれがどこか見破れるだろうか?

見破られるようだったら、僕もまだまだ修行が足りないな、と思う。



-完-