びっくりした。まさか彼が私と同じ気持ちでいたなんて。私の都合のいい考えは、 外れてなかったんだ。私はその嬉しさにまた泣きそうになるのをこらえつつ、こう言った。 「声、大きいです…。 でも、私も好きでした…。」 私が泣いたあたりから、車内の注目を集めているのはわかっていたけれど、 この際どうでも良かった。私が受験に失敗して、落ち込んだのも、この車両に 乗るためだったのかな、なんて小説にもならないような甘いストーリーを考えていた。 それから夏休みが始まるまで、私達は並んで吊革につかまり、いろんな事を話した。 彼は偶然この車両に乗って、私に一目惚れしてからと言うもの、規則正しく 起きられるようになって親孝行してる、なんて話してくれた。 彼と私が同時に恋におちたことに私は気付いたけれど、彼をうぬぼれさせるのも しゃくだから、しばらく黙っていようと思う。 一学期最後の日、私達はいつもの電車に乗って、夏休みの計画を話し合った。 こどもみたいにはしゃいでいる彼が、年上なのに可愛く見えて、とても愛しかった。 そう、もう一つ秘密にしていることがある。 私は県立高校の編入試験に合格したのだ。二学期からは晴れて、彼の後輩になる。 せっかく慣れてきた女子校を離れるのは少し寂しい気もするけど、彼の近くに いられるのはもっと嬉しい。新学期、新しい制服を着て彼を驚かせてやるつもりだ。 夏休みの間に口を滑らせないよう、注意しないとね。 -完- |