1. 「モリタート Moritat」"Saxophone Colossus" Sonny Rollins 1956
モダン・ジャズのレコードのベスト・テンを作れば、誰が選んでもまずはずれることはないソニー・ロリンズの
傑作「サキソフォン・コロサス」から一曲。
この曲は「マック・ザ・ナイフ」という題でも知られていますが、クルト・ワイルのミュージカル「三文オペラ」
からの曲です。このロリンズの素晴らしさといったら!自由奔放、天衣無縫、豪快にしてユーモラス。緩急自在に
即興的なメロディーが溢れてきます。
ドラムのマックス・ローチはモダン・ジャズ・ドラミングの最高のお手本を聴かせてくれます。チンチキチンチキと
いうトップ・シンバルとハイハット・シンバルが正確で躍動的なリズムを刻み、即興的なスネア・ドラム、タムタム、バス・ドラム
のパッセージがソリストを鼓舞します。演奏は、テーマの後テナー、ピアノとソロが続き、テナーとドラムの4小節交換の後ドラム、
ベースのソロになりテーマに戻ります。
2. 「変遷 Transition」"Transition" John Coltrane 1965
ジョン・コルトレーンは1955年にマイルス・ディビスのグループに参加してから1968年に死去するまで、
次々と演奏スタイルを変えて自分の音楽表現を極限まで追求していった人です。すなわち、ロリンズの影響を受けて
コード進行に沿ったアドリブ奏法を極め、モード手法によりしだいに和音進行の束縛を抜け出し、ついに
すべての演奏上の規制をはずしたフリー・フォームへと突き進んでいきました。
今日聴くのは、4ビートに乗って調性的なアドリブをするスタイルからそのような枠組みを破る調性外
での自己表現へ飛び出すギリギリの境界にある演奏です。「モリタート」のような和音進行はここにはないけれど、
モード手法による調性はあります(ごく簡単に言えば全体が一つのコードで、基本の音を意識しつつ各自が任意に変化させる)。
調性的なフレーズから時々叫び声のようなフリーク・トーンが混じってくる瞬間、私は鳥肌の立つような感動を覚えるのですが
君たちはどう聴きますか?
そしてエルヴィン・ジョーンズのドラム!コルトレーンのサックスに瞬間的に反応しながら恐ろしく手数の多い
フィル・インを繰り出してきます。まさにコルトレーンと一体になったすばらしい即興演奏を聴くことが出来ます。
これは4ビート・ドラミングの極限の形の一つだろうと思います。中間部に登場するピアノのマッコイ・タイナーのソロも
面白いでしょう?
3. 「ディア・ロード Dear Lord」"Transition" John Coltrane 1965
同じレコードから続けてもう一曲。嵐の後のような美しいバラードです。これはオーソドックスに 和音進行に基づいた演奏で、先ほどの曲ではあまり目立たなかったベースのジミー・ギャリソンが4ビートに こだわらないおもしろいベース・ラインを弾いています。コルトレーンは晩年、私は聖者になりたいんだ、と いっていたそうです。
(男子B)プリントを読むとずいぶん理解しにくいことが書いてある。でも
今聴いていて僕は気持ちよかった。それで充分だと思う。
(男子C)今回はドラムが中心のように感じた。ジャズのドラムはとてもむずかしそう。
シンバルがよかった。もうすこし弦楽器について聴いてみたいです。ジャズでモヒカン刈りというのはすごい!
(ロリンズが来日したときモヒカン刈りだった、という話をしたのです)
(女子D)サックスの音がすごく力強かった。ドラムソロもおもしろかった。最後のサックス・ソロが良かった。
2.サックスとドラムがすごく迫力があった。聞けば聞くほど頭がパニックになるようなすごく難しい曲のような気がする。
ピアノソロになったときは新鮮な感じがした。サックスとドラムがあまりにもすごいので、ピアノ・ソロになるまでベースの存在に
全く気が付かなかった。サックスも素晴らしいけどドラムもすごい!!とにかくすごかった。3.バラードは好きなので、こういう曲も
たまには聞きたい。さっきの曲とはうって変わった静かな曲調で、本当に同一人物がサックスを吹いているのだろうか。
「Transition」もよかったけれど、この曲もすごくいい。
(女子E)「Transition」は嵐の中で雨にうたれながらドラムを叩いている男の人が浮かんでくる。最高に 燃えてる感じ。「Dear Lord」は雲の上を歩いているような気分の曲。