−DIEGO JAPAN TOUR "OPEN"−
 
 
2004年12月30日。そして翌日の31日。この二日間、あのDIEGOが日本へとやってきてDJプレイをする。僕は彼の大ファンであり、過去の来日二回ともに行ってそのプレイを体験している。そして一回目・二回目ともに彼と酒を酌み交わし、過去のリリース作品(CD)全てにサインまで貰っている。今回三度目の来日。そして年末・大晦日の年越しプレイ!! …これはもう、行くしかない。
 
 
12月30日(木)。いつもより仕事を早く終え、一旦帰宅後、渋谷へと向かう。今日はtackさんがこっちへ来ているので彼と共に向かう。正直、ここ最近仕事やら何やら忙しくて、その疲れも抜けないのでDIEGOのツアーも「東京はやめて大阪だけにしておこうか」などと思ってはいたのだけど、でもtackさんも来るとなったらそうはいかない。彼もDIEGOのファンなので、とりあえず盛り上がりは必至(少なくとも僕ら二人は)
 
21時前位に渋谷到着。HMVにてtackさんと合流。彼と会うのもほとんど1年ぶり位に久しぶりだ。とりあえずお腹も空いているので軽く飲み&食べに向かう。
 
適当に歩いて入った、ちょっとこ洒落た雰囲気の飲み屋。豆腐料理が中心の店でなかなかに美味しかった。ビールを飲みながらテクノ話だとかに花を咲かす。思えば、(ネット上とかじゃなく)実際に人とテクノの話とかするのも物凄い久しぶりだ。どんどんテンションはあがってくる。
 
22時半位に店を出る。途中コンビニに寄って二人して栄養ドリンク補給。正直、こんなものにたよらなくては徹夜遊びに自信が無くなってきていてちょっと情けない。「やっぱ俺らトシだな」 どっちともなくお互いからそんな言葉とため息が出てしまって少しミジメ。
 
 
今日のハコ[MODULE]の場所にちょっと自信が無かったので、一旦駅方面へ戻ってから再び歩き出す。10分かそこらで辿り着いたのだけど、実はさっき入った飲み屋のすぐ近くだったことに気付いて唖然…。これだから方向音痴はイヤだ、と軽く自己嫌悪。
 
時間は23時位。[MODULE]の中へ入る。フロアをのぞくと客はかなり少ない。今日のパーティ、DIEGOの他にはシンニシムラも回すということで、DIEGO目当てじゃない、シンさん目当ての客で混み混みになってしまうのだけは嫌だなぁ、と心配してたのだけど…これなら大丈夫そうか。
 
 
と、僕らがフロアに入って10分もしない位だったか。メガネをかけた、痩せて小柄な一人の外人がレコードボックスをかついでフロアへと降りてきた。その顔を見て僕は言葉を失った。
 
 
…DIEGOだ!!!!!!
 
 
そう、その人こそDIEGOだった。髪を短く切ってメガネをかけていることで、以前会った時とは随分印象が変わってしまっていたけれど、間違いない。DIEGO HOSTETTLERその人がそこにいた。
 
どうしよう…。何と言って話しかけようか。僕のことちゃんと覚えているだろうか…。
 
などと考えていたのだが。すると。
 
 
「I MET YOU AT OSAKA?」(オレ、お前に大阪で会ったよな?)みたいな感じで
 
なんと向こうから話しかけてきたのだ。
 
 
僕は嬉しさと驚きのあまりただ「YES,YES」などとしか答えられない。そして再会を期して軽くハグ。
 
DIEGOは「EVERYTHING OK WITH YOU?」(調子はどうだい?)みたいなことも言ってくれた。
 
僕のことを覚えていたどころではない。まさか向こうから話しかけてきてくれるとは…。これでもう、僕のテンションは一気にマックスまでアガッてしまった。
 
DIEGOは「上で酒でも飲もうぜ」みたいに誘ってくれたので、僕もtackさんもDIEGOと共にバーの方へ。
 
三人で酒を飲みつつ軽く会話をかわす。しかしやっぱりtackさんは凄い。英語でどんどん積極的にDIEGOへと話しかける。話はなんと音の製作機材にまで及んでいた(tackさんは自作トラックを創っているのだ)
 
なんでも、DIEGOの新作アルバム[OPEN]で使っている音の製作ソフトはtackさんも持っているものらしく、「あのソフトであんな音が出せるとは…」とtackさんはひたすら感嘆していた模様。
 
そしてDIEGOと一緒に写真を撮り(こないだFABRICEの時の反省?から今日はデジカメ持参)、恒例の、サインをおねだりタイム。今回は新作アルバム[OPEN]に「TO OG、DIEGO!」と名前入りでのサインを貰った。これで僕は、DIEGOのこれまで出ているアルバム4枚全てにサインを貰ったことになる。
 
サインを貰った[OPEN]を出してトラックリストを指差しながらどの曲が好きか、とかそんな話をする。僕は三曲目の[THE VOICE]と言うと、DIEGOが「VERY RAVY TRACKKKK!!!」とか言っていた。
 
 
そしてDIEGOから凄い発表。なんと…明日、31日の大阪はDJではなくライブをやるらしい!!
 
大阪のゼンタ氏からはそんな情報を聞いてはいたのだけど、でもKANZLERAMTのサイト見てもそんなことは一言も書かれていなかったし、半ば信じてなかったのだ(ゼンタ氏ごめん)
 
でも…ハッキリ本人の口から「明日はライブだから」とか言われたら…。既にマックスまでアガッていたハズの僕のテンションは更にアガる。そして「明日は行けねぇよ…!!」と残念そうなtackさん。
 
 
3・40分くらいも喋ってただろうか。色々と用意もあるだろう。DIEGOがバーから出ていったので、僕らは荷物をコインロッカーへ預け、軽装になって戦闘態勢を整える。
 
それからは僕とtackさんはフロアとバーとを往復しながら酒を飲む。とにかく飲む。DIEGOのプレイでガッツリ踊る為にも体力温存。フロアへ行ってもあまり体を動かさない様にする。
 
 
と、いつの間にか時間は0時を軽く過ぎている。DIEGOの出番はいつだろうか…。ハコの人に聞いてみると、どうやら今食事に行っているらしい。と言うことは出番は1時過ぎくらいか。
 
1時になろうかと言う位に、DIEGOがフロアへ戻ってきた。…やった。ついに回してくれるのか。
 
しかしブースで何やらチェックして、またすぐにフロアから出て行ってしまった。…じらすなぁもう!!!
 
 
時間は1時半。とうとうDIEGOがブースに現れた。ヘッドホンを付け、今度はもうプレイ態勢が整っている。
 
前のDJの、デトロイト〜ハウスぽいトラックにそのまま、上音のちょっと綺麗でリズムのハッキリとしたトラックをかぶせていく。「JORIS VOORNだよコレ!!」 tackさんが反応している。JORIS VOORNというアーティストは僕はよく知らない。ただ、KOWALSKIの[DAYS OF THE LIAR]のリミックスを手掛けていることで名前だけは知っているけれど。tackさんは今ハマっているらしい。
 
そこから次々とタンテにレコを載せ、そしてCDJも使って色々な曲を織り交ぜていく。そう言えばこないだのFABRICEもかなりCDJを多用していたけれど、最近は皆タンテだけじゃなくってCDJも使うんだなぁ。 
 
DIEGOのプレイ。今まで聴いた二回とは今回はかなり違った雰囲気だ。過去二回はとにかく、バッキバキのハードミニマルで狂った様に踊らせてくれた。BPMも速かったし、とにかく凄いハードだった。あれだけディープでメロウなトラックを創っている人とは思えない、そのハードなアゲっぷりに驚かされたものだ。
 
でも今回は違う。ハードな感じではあるものの、BPMはそんなに速いワケでもない。ハードな中にディープさを秘めたプレイ。少し深めのハードミニマル主体。と言っても田中フミヤとかみたく、ディープ過ぎるというワケでもない。上音の綺麗なトラックだとかも色々かけて、適度なポップさも魅せる。何とも言えないその絶妙なバランス感覚がたまらない。tackさん曰く「ハードでクールな音」とも。
 
そして次に何がかかるのか。もうワクワクして堪らないのだ。ハード系の人で、こんな次にかかるトラックが何かワクワクさせてくれるのは珍しい。ハードミニマルって基本的には耳で聴くものではなく、体で直に感じて踊る為のものだから。
 
確かに過去二回の彼のプレイは、それは「体で感じる」タイプのプレイだった。でも今日のは「耳と頭に」作用してくる、そんな音だと思う。
 
フロア最前列からブースを覗き込んでみると、DIEGOはひたすらEQやフェーダをいじっている。常にレコードやCDから二枚以上の音が出ていて、絶妙な音の混ぜ方で聴かせていく。
 
 
プレイ中盤。ピアノの音が印象的なトラックがかかる。「またJORIS VOORNだ!!」 tackさんがまた反応(笑)
この曲、tackさんは今年のメタモでQ-HEYがかけたのを聴いて、それが凄く良かったらしい。でもこの曲、僕も聴いたことがある。もしかするとこないだFABRICEがかけていたのかもしれない。
 
DIEGOもJORIS VOORNを気に入っているのか、後でtackさんに聞いたところ、今回のプレイでは全部で四曲もかけてたらしい(笑)
 
 
この頃になるとフロアも結構な人が入っていて、物凄く盛り上がっている。曲のブレイクで、隣で踊ってる全然知らない人とかと輪になって一緒に盛り上がったり。こういうのがあると凄く楽しい。
 
フロアの盛り上がりに比例して、音もかなりハードになってきている。でもプレイしているDIEGO本人は必要以上に煽ったりすることもなく、ひたすらクール。表情一つ変えずに淡々と機材をいじってレコードをミックスしていく。「クールに燃える」 そんな音とプレイスタイルだ。
 
 
そしてブースをふと覗いた時、タンテに載っていたレコードを見て僕は言葉を失った。
 
「これ…DIEGOさん自身のアルバム…OPENだ!!」
 
今回は一応このアルバムのリリースツアーだから、このアルバムからのトラックをかけるのが本来なら当たり前かもしれないけど、でもDIEGOってあまり自分のトラックをDJでかけない人なのだ。以前に大阪で本人の口からも「俺は自分のDJで自分の曲をかけるのは嫌いだ」みたいなことを聞いたこともある。
 
でも今回は…かける気だ!!
 
 
かかったトラックはアルバム5曲目の[BACK JACK BACK]だった。DIEGOらしい宇宙的で壮大なシンセのイントロで始まるトラック。ハードなフロア系トラックだ。だけどイントロ部にキックが無かったり変則リズムだったりでDJには使いにくいトラックだと思っていたのだけど…。まさかこれをかけてしまうとは!!
 
もう、イントロ部のシンセが少し聞こえた時点で僕とtackさん二人は大はしゃぎ(笑) 
二人して「キター!! キター!!!!」と叫びまくる。いい歳ぶっこいた大人が年甲斐も無く壊れ過ぎ。
 
途中のブレイクではつい、僕。「カンツラーアムトォォ!!!」とか叫んじゃいました(苦笑)
 
 
しかしフロア中見ても、この曲で反応してる人ってそんなにいないのだ。まあ確かに僕とtackさんの反応は少し異常だったかもしれないけど、でもここは反応すべきところだろ? だってDJが本人自身の、しかも最新アルバムのトラックをかけているのだ。ここで盛り上がらない方がむしろおかしい。
 
そしてフロアは(一部熱狂ファンによる)異常な盛り上がりを見せ、DIEGOのプレイは最後半へ。
 
終盤では結構、デトロイトな音やジャズ風なトラックもかけていた。カールクレイグなんかもかける。テクノとジャズの中間みたいな音って、黒人のデトロイト系の人はよく使うと思うのだけど、でもそれはややもすると少し「くどく」なってしまいがちだと思う。だけど、DIEGOがかけるととてもクールに聴こえる。ミニマル中心の中に混ぜているからだろうか。とにかくクールでカッコイイ。
 
 
そして今日のDIEGOのプレイ。ラストはなんとガルニエの[赤い顔の男]。更にそこに、INNER CITYの歌モノをつなげるという反則プレイ。フロアは熱狂の渦と化し、興奮冷めやらぬままに彼のプレイは終わった。
 
時計を見ると3時40分。いつの間にか二時間以上も経っていた。
 
 
DIEGOがブースから出てくるのを見て、その後を追ってフロアから出てバーへと向かう僕とtackさん。ラストのシンニシムラのプレイは見ない(笑)
 
 
バーへ行くと、結構な人で混みあっていた。いつの間にこんなに客が入ってたのか…ちょっと驚きだ。
 
酒を飲みながらtackさんと色々話す。でも何を話しても最後には「DIEGO良かったね〜」という話になってしまう(笑)
 
バーで酒を飲みつつ、踊り疲れた体を癒しながら友人と喋ってまったり過ごす。クラブの過ごし方って、単に音を聴いて踊るだけじゃなくて、こういうのもいい。独りで来てひたすら踊り倒すのもいいのだけど、やはり気の合う音楽仲間がいた方が面白い。独りだと、踊っている時は良くても、こうしてバーで酒飲んだりしている時にたまらない「孤独」を感じて切なくなってしまう(笑)
 
DIEGO自身は今日のプレイに満足だったのか、バーで酒を飲んで色々な人に話しかけてははしゃいでいた。変な言い方だけど、彼も来日三回目で、緊張とかが取れてきた様に見える。日本のクラブにも馴染んできたって言うのか。
 
 
途中でDIEGOと数回会話したりしながら、一時間以上も酒飲んでまったりしていた。
 
DIEGOは「明日のライブでは、未発表音源もかけるよ」みたいなことを言っていた。tackさんはますます悔しそうだ。
 
 
そしてDIEGOに挨拶。
「SEE YOU TOMORROW NIGHT,AT OSAKA!!」とか言って、tackさんとクラブを出る。
 
 
今日のDIEGOのDJプレイ。個人的には今まで聴いた彼のプレイでベストだったと思う。過去二回のハードなプレイ。それも勿論カッコ良かったけど、でもそれは他のハードミニマルDJでも出来るプレイだった様にも感じる。でも今日のプレイ。それはまさに彼にしか出せない独特の世界だったと思う。彼自身のトラックは結局一度しかかからなかったけど、でもプレイの雰囲気が、彼の創るトラックと凄く共通しているものがあったと思う。
 
 
さあ。次は大阪でのライブ。一体どんなプレイを魅せてくれるのか…今夜が楽しみだ!!
 

DIEGOと僕。

DIEGOのサイン。
「To OG Diego!」
 
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