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〜 2003年8月17日→8月23日鹿児島(枕崎)一人旅 〜
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(8) 枕崎の夜。
駅前でタクシーを拾い、今夜の宿へと向かいます。向かうタクシーの中、運転手さんはずっと高校野球の話をしていました。正直、僕はスポーツ興味無いんでほとんど分からないんですが…(笑) でもそんなのお構いなしでひたすら話し掛けてきます。分からずにひたすら「そうですね…」と相づち打つしか出来ない僕。でも、こんな気さくさが田舎の人のイイところ。そう言えばこの運転手さん、乗せてもらう前に枕崎駅前の灯台の前で写真頼んだりしたんですけど、快くきちんと撮って下さったし。
さて、10分ほどでタクシーはホテルへ到着。今晩の宿は[枕崎観光ホテル岩戸]。タクシーを降り、さっそく中へと入ります。受付でチェックインを済ませ、宿のおばちゃんに案内されて自分の部屋へ。廊下には大きな壺やら置物やら置いてあります。なんだか結構歴史のありそうな宿と言う感じです。そして部屋に入ってみるとなんと!!和室でした。おまけにやけに広い…。若い(と言う程もう若くもないか)男の一人旅にはちょっと不釣合いな気もしてきます…。しかし和室の部屋で寝るのなんて、何年ぶりになるんだろう。
枕崎観光ホテル岩戸。 |
客室は純和室。
おまけにやたらと広い…。 |
さすがにここまで来て疲れたので、腰を降ろしてリラックス。と、何やら「ザザーン、ザザーン」と音が聴こえてきます。「まさか!!」そう思って窓を見てみると…そうです。この宿、すぐ裏手にはもう海。海岸沿いに建っていたのです。波の音が聴こえる宿…なかなかにロマンティックで素敵です。
そして窓のすぐ側には椰子の木まで。なんとも南国ムード満点です。これだけ見てると、まるで日本以外のどこか、南のリゾートアイランドへ来てしまったかの様。
宿の窓から眺める、枕崎の海岸線。
日光を浴びて綺麗… |
窓のすぐ側には椰子の木が…
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時計を見ると、時間はまだ17時くらい。宿でのんびりするにはまだ早過ぎます。せっかくここまで来たのだから、近くをちょっと散歩してみることにします。
出る前にフロントにカギを渡し、ちょっと気になったのでフロントのおばちゃんに夕食のメニューを尋ねてみます。そして、肉が出ないかどうか聞くと(僕は肉が嫌いなので)、「じゃあ肉は出さない様に言っておきましょうか?」とのお返事。決まりきったメニューしかダメと言うのではなく、客の好みに合わせての、こういう心遣いをしてくれると何だかとても嬉しいです。
宿を出て、宿の裏手に回ってずっと海岸線沿いに歩いてみます。海岸線がとても綺麗です。周囲はテトラポッドで護岸されているのだけど、たまに階段で下に下りれる場所があって、降りてみるとごつごつした岩肌が顔をのぞかせます。そして潮風がとても気持ちいい。夕方とはいえ、まだまだ太陽は頭上。凄く暑いのですが、でも潮の匂いとほんの少しの風。それが何とも言えないのです。まさに「海の町に来た」そんな気分で胸が一杯になります。
枕崎の海。
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海岸線沿いに向こうを見ます。
はるか向こうに、宿も見えます… |
そして海岸沿いに幾つも点在する鰹節工場。枕崎と言えば鰹で有名な町なのです。いや、それ以外には何も目立つものは無く、ひたすら海岸線が続いているばかり…。でもそれがイイのです。その、「何も無さ」加減がとてもイイのです。
はるか向こうには、枕崎のシンボル[立神岩]の姿も見えます。美しい景色を眺めながらの、のんびりとしたお散歩。何だか心が洗われるかのよう。
この海岸沿いの道、
どうやら「えびすさん通り」と言うらしい… |
鰹節工場。
たくさんの木材が積んであります。 |
尚も海岸沿いを歩きます。
海辺にはごつごつした岩が。 |
向こうには立神岩の姿が…。
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と、ふと目をやると海のすぐ上をトンビが飛んでいます。…いや、よく見ると違う!! トンビじゃない。トンビよりも幾分スマートで、そして何よりも色が白いタカ…。「ミサゴだぁ!!」 思わず僕は叫んでいました。そしてその鳥の飛んでる方へ走り寄ってしまっていました…。
実は、このミサゴという鳥。僕の大好きな鳥なのです。僕はタカやワシなどの猛禽類が凄く好きなのですが、その中でもとりわけこのミサゴというタカに魅かれます。タカという鳥はどちらかと言うと、勇猛で男性的なイメージが強い生き物だと思うのですが、このミサゴという鳥は、そのスマートで均整の取れた体と言い、白く美しい羽毛といい、どこか優美で女性的なものを感じるのです。
そしてこのミサゴ。タカの中では変わり者で、魚しか食べないのです。他のタカが野山で他の鳥や獣を捕らえて食べるのに対し、海や湖沼の上に出て魚だけを狩るタカ。肉が嫌いで魚が好きな僕にとって、その辺りも何となく親しみを感じる部分なのかもしれません。
ミサゴは、空中でホバリングをしては狙いを定め、そして魚を狙っては海に何度も飛び込んでいました。大胆に、勇ましく海へ…。そしてしばらくの後、はるか向こうの空へと去っていきました…。まさかこの枕崎まで来て、大好きなミサゴに会えるなんて…。なんて素敵な巡りあわせなんだろう。
ミサゴが飛んでいます。
とても分かり難いですが…。 |
こちらはイソヒヨドリ。
可愛い声でさえずってました。 |
ひとしきり景色を堪能して、再び宿へと帰る時、今度はテトラポッドの上にイソヒヨドリが停まっていました。綺麗な声でなく、何とも愛らしい鳥です。
さて、宿へと戻ってきました。時間ももう18時近く。さあ風呂へ入るとしましょう。この宿、風呂はなんと天然温泉。もちろん部屋にもユニットバスが付いてはいますが、せっかく温泉が湧いているとあれば、勿論大浴場へ行くに決まっています。
大浴場は、宿から繋がってはいるのですが、ちょっと離れたところにありました。そして中へ入ってみると結構たくさんの人がいます。でも観光客風ではなく、地元のおじちゃんばかり…。そう、ここの温泉。宿泊客以外も入浴出来る様になっているのですが、どうやら地元の銭湯の役目も果たしている様です。
お湯はかなり熱めでした。僕は温泉に来ると長くダラダラお湯に浸かっているのが好きなのですが、これだけ熱いとさすがに長くはいられないです…と言うかのぼせちゃいます(笑)
部屋へ戻り、自販機で買った缶ビールを空けてグィ!! やっぱり一風呂浴びた後のビールは美味いです。窓の外を見ればひたすら広がる海。なんとも贅沢です…。
と、気持ちいい気分でぼんやりしているとフロントからの電話。「お食事お持ちしましょうか?」 そうでした。この宿、何と夕食は部屋食なのです。僕も色々なところへ旅行に行きましたけど、部屋食の宿に泊まるのは初めて。なんかちょっとドキドキしてしまいます…。
しばらくすると、仲居さんが食事を持ってきてくれました。お膳には色々と乗っています。突き出し風のものに刺身。天ぷら。何か見たことのない、得体のしれないものも…。
そしてお膳とは別に運ばれてきた、やたらでかいお椀。一体何が入っているのか。気になります…。
さあ、まずは乾杯。先ほどビールを飲んだので、それ以外のお酒がイイなぁ…。そう思い部屋の冷蔵庫を開けると、焼酎の小瓶が一本。これにします。薩摩酒造と言う枕崎市内の酒造が造っている焼酎の様です。花の絵の瓶が何とも可愛らしい…。
グラスについで飲んでみるととても軽い。それもそのはず。どうやらこの焼酎、あらかじめ割り水をして度数を15度以下くらいにまで下げ(普通の焼酎は25度)、ストレートで飲める様にしてあるものの様です。なるほど、これならワインや日本酒感覚ですっきり飲めます。
出てきた夕食。
色々と盛り沢山。 |
窓から眺める夕焼け。
夕日を観ながらの夕食だなんて…。 |
さて、ではいよいよ食べるとしますか。まずは突き出しなど。魚の卵の煮付け。ハシ休めの甘いお餅。色々あって目にも楽しいです。そしてお膳真ん中にある、何やら怪しげな揚げ物風のもの。「肉かなぁ…」恐る恐る口にすると肉では無い模様。魚っぽい匂いなんだけどちょっと硬くて変わった感触。もしやこれは、話に聞いたことのある鰹の心臓では…?
お次は刺身。刺身は二皿あります。一つは赤身やイカの盛り合わせ。そしてもう一つは鰹。イカや赤身の方は割と普通でしたけど、鰹はなんだかやたらと美味かった。しっかりとした身をタマネギなんかと一緒に醤油につけてほおばるともう…(絶句) さすが枕崎、鰹の町だけはあります。
そしていよいよ…さっきから気になって仕方が無かった、でかい椀へ。フタを開けてみると、そこにはでかい鰹の頭が!! そうです…これこそが枕崎名物として知られる、鰹の[びんた料理]なのです。ちなみに「びんた」とは鹿児島弁で「頭」のことを差すのだそう。枕崎へ来るのなら、食べてみたいなぁと思ってた[びんた料理]。まさかここで味わえるとは…。
この[びんた料理]。鰹の頭がスープに浸っています。それを箸で身をほぐしつつ、スープと一緒に味わいます。スープは、ちょっと甘い味付けで生姜の風味を感じます。鰹の頭は、意外と油っぽい感じ。でもなかなかに美味しかったです。かなり食べでのある頭でしたけど、身はほとんど食べ尽くしました…。
窓を眺めると見事な夕焼け。綺麗な風景を眺めながらの食事。お酒も進みます。焼酎をあっと言う間に飲み干し、再びビールへ。こうして、一時間以上もかけてゆっくりと夕食を取りました。
お膳を下げに来た仲居さん、鰹の頭がほとんど食べ尽くされていたのに何だか感心されてました。ここまで食べちゃう人って珍しいんでしょうか? そして気になったので怪しい揚げ物について尋ねると、やっぱり鰹の心臓でした。
結局、夕食を食べ終わった後も一人ビールをだらだらと飲みます。こんな晩酌が旅の楽しみの一つなんですよね。そしてこの時、この旅行中で初めて、音楽を聴きました。持参してたポータブルCDプレイヤーを取り出し、そして選んだ盤はC.MORGENSTERNの名作[HAWAII
BLUE]。独特の哀愁メロディーが、何とも南国の夜の雰囲気にマッチします。
そうしてこの日は、23時過ぎ位に就寝。布団に入って目を閉じると、波の打ち寄せる音が鮮明に聴こえてきます。「ザザーン、ザザーン」…こうして枕崎での一夜は更けていくのでした。
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