2003年8月17日→8月23日鹿児島(枕崎)一人旅
 
 
(2) 寝台特急[なは]の旅。
 
 
 
さあ、いよいよホームにやって来た西鹿児島行きの特急[なは]。今夜はこれに乗ります。[なは]は全部で9両編成。1〜4号車及び8・9号車は普通の開放型B寝台。6号車には寝台料金不要のレガードシート車(高速夜行バスの様な感じで、シートピッチ広めのリクライニングシートが並んでいる)。そして7号車は二人用個室のデュエット。僕の乗る、一人用個室ソロは5号車になります。
 

5号車[ソロ]のサイドビュー。
窓が二層に並んでいます。

そして5号車入り口付近に光る、
[SOLO]のエンブレム。
 
さあ、ワクワクしながら車内に乗り込みます。去年の北海道旅行の帰り、[北斗星]に乗る時もそうでしたけど、寝台列車には何かこう、人の心をワクワクさせるものがありますね。チケットを見ると、自分の個室は「4番」と書かれています。4番の個室は、デッキ寄りの、二階の部屋でした。デッキに近いと言うことはトイレにも近いワケで、これはある意味便利かもしれません(笑)
 
早速自分の個室に入ってみます。個室のドアは、ナンバーキー方式。自分で好きな番号を入力して、それをキーワードにする方法の様です。さて、ドアを開けて部屋に入ってみると…。
 
 
せまっ!! 狭い!!
 
 
まあ予想はしてたコトなんですが(笑)、結構狭いつくりです。同じソロ個室でも、去年乗った[北斗星]のよりもかなり狭く感じます。と言うのも、[北斗星]とは個室の造り自体が全く異なっています。[北斗星]は線路の枕木方向に個室が二階層に並び、二階部分へ上がる階段は個室内に設置されていると言う構造でした。上下の個室が、入れ子構造の様な形になっています。従って、階段部分がある分、全体として何となく天井が高い造りになっています。実際、個室の入り口付近では、余裕で立つことが出来ます。
 
較べて、[なは]のソロは線路の進行方向に個室が二階層に並び、真ん中に通路があると言う造り。二階部分への階段は個室の外、入り口ドア付近に設置され、上下の個室は完全に二層に分離された造り。従って、とにかく天井が低い。とてもじゃないけど、個室内で立ち上がることなんて出来ません(笑) まあ、寝たり座って過ごす分には全然問題ありませんが。あと、[北斗星]と違って、個室内に荷物置き場となる場所もありません。荷物はベッドの上に置く形になります。その代わり、ベッド自体は[北斗星]のよりもかなり大きめに出来ています。それに進行方向向きなのは、座席で言うクロスシートと同様なワケで、「寝る」と言う観点のみで考えれば、[北斗星]のよりも快適な造りをしている。とも言えます。
 

ソロ個室の入り口。

ソロ個室内。
入り口から奥の方を見る。

ソロ個室内。
今度は奥から入り口を見る。
 
とりあえず部屋に荷物を置いて、せっかくなので少し車内探方。5号車のソロ。通路はずっとダウンライトのやや暗めで落ち着いた照明で照らされていて、かなりムーディでイイ感じ。元々は普通の寝台車両を改造して造った車両のハズなんですが、タネ車の面影なんてどこにもありません。ここだけ見れば、新車と言われても分からないくらい。…でも、その代わりデッキ部分とか見ると、「ああ、やっぱり車齢が経っているなぁ」と感じずにはいられません。どうしても「古さ」を感じてしまいます。
 
さて、隣のレガードシート車もちょっと覗いてみます。三列にリクライニングシートがずらりと並んでいます。このレガードシート車、寝台料金不要で乗れるので、リーズナブルな旅行にはうってつけ。寝台車に乗った場合、B寝台(開放型・ソロ個室共に)なら運賃・特急料金の他に6300円の寝台料金が必要になるのですが、レガードシートならば運賃と特急料金の他に必要なのは510円の指定席料金のみ。それにリクライニングシートもかなり深く倒れる造りになっているので、何とか眠ることも出来るでしょう。
 
とは言えやはり、大阪→鹿児島までレガードシートと言うのはさすがにキツイと思います。事実この日も、新大阪を出た直後では、レガードシート車に乗っていた乗客はいなかった様です。
 

ソロの通路。両側に部屋が並んでます。
通路のダウンライトがとてもイイ感じ。

レガードシート車内。
 
ここで部屋に戻ります。名古屋→新大阪間の旅路だけでもう結構疲れちゃってますし(笑)、何よりお腹も空きました。て言うか飲みたい!! 部屋で早々に宴会といきましょうか。
 
ソロ個室。ふと入り口付近に目をやると、各個室の入り口ドアの横に、それぞれ絵が飾ってあります。これはなかなか気の利いた演出だと思います。[なは]なんて正直、あまり利用客が多いワケでもないでしょうし、鉄道会社側としてもそんなに力を注げる存在でも無いと思うのですが…。それなのにこうした、ちょっとした気遣いの様なものがあると、とても嬉しくなります。
 

部屋の出入り口横に飾られた絵。
照明に照らされてなんともムーディ。

ソロ個室内から絵を観る。
 
部屋に戻って、しばらくするとドアをノックする音。開けると、車掌さんが車内改札にやって来ました。チケットを見せ、問題無く改札も終了。さあ、やるべきことはこれでもう全て終わりました。もう後は、車内備え付けの浴衣に着替えて楽な格好になって…さあ、いよいよ酒宴の始まりです!!
 

右から順に、白ワイン。弁当。
そしてチーズにつまみにビール…。

ただ今一人酒盛り中。
あ〜ワインうめ〜っ。
 
早速、新大阪駅で購入したものを広げます。白ワイン・お弁当・チーズにおつまみにビール…。はやる気持ちを押えつつ、まずは白ワインを開けます。[神戸ワイン]と書かれたこのワイン。何でも、神戸市内の農園で採れるシャルドネだけを100%使用したものだとか。一体どんな味がするのでしょうか?
 
コップに注ぎ、香りを嗅いでみるとなかなかいい香り。しっかりとワインの香りがします。そしてグイっと一口。うん…なかなか美味しいです!! やや甘味が強い感もするのだけど、でもしっかりとボディもあります。酸もあってさわやかでなかなかに飲みやすい。日本産のブドウだけを使って造った、という点を考えれば、非常に良く出来たワインだと言えるんじゃないでしょうか。
 
そしてワインにはチーズ。ああ…美味しい!! そして…し・あ・わ・せ。これこれ。これなんですよ。僕の求めていたものは。一人旅の、最初の夜をワインとチーズでちょっとお洒落に贅沢に演出。はぁ…なんか自分でウットリです。て、こんな僕ってちょっとヘンですか?
 
お弁当は、太閤寿司とか言うのを買いました。色々な形の押し寿司が入っています。駅弁も、酒の肴として考えるのなら、こういう寿司スタイルのが一番イイですね。気軽に手でつまめますし。
 
更におつまみ(豆菓子類)とビールに手を伸ばし、足を伸ばしてベッドの上でくつろぐソロの個室内。最初部屋に入った時は「狭い!!」とか「カプセルホテルじゃんかっ!!」とか思ったソロ個室ですが(笑)、慣れてくればなかなかに快適です。まあ、開放型B寝台と同じ金額で、これだけのプライバシー空間が確保できるのだから、これ以上贅沢を言ってはバチが当たるってもんです。
 
結局この日は、12時くらいに就寝。お酒をたくさん飲んだこともあってか、結構すんなりと寝付けました。
 
 
 
翌朝、目覚めたのは6時前かそれ位だったでしょうか。列車はもう九州に入っています。博多を過ぎたあたりを走っていました。もう空もすっかり明るくなっています。そして、天気も良さそうです。
 
さて、昨日一晩過ごした[なは]の車内ですが、気になったのは、思っていたよりも結構音が響くと言うこと。客車と言うのは、電車や気動車と違って動力をもたない分、音が静かと言うのが通説。確かに、モーターやディーゼルエンジンの音は皆無ですが、でも車輪の走行音がダイレクトに響く様に感じました。まあそれは今回僕の乗った個室が、たまたまデッキ寄り(恐らく車輪の真上くらい)の部屋だったと言うのもあるかと思いますが。また、揺れも、走行中はほとんど無いのですが、駅を出る時など、走り出す際にはガクン!!という衝撃が来るのが気になりました。
 
そんなことを考えながら、だらだらと寝そべったりしてまったりと過ごす個室。寝台列車って、この時間がたまらなく幸せなのです。と、しばらくそうしているうちに時間も7時をまわり、車内販売が始まりました。この[なは]、夜は車内販売は無いのですが、朝は弁当や飲み物のワゴンサービスがあります。僕もとりあえず朝食をゲット。本当はもっと軽いものが良かったのですが、弁当類が幕の内しか無かったので、しかた無くそれを購入。見ると結構なボリュームがあります。食べきれるかなぁ…。
 
列車は尚を走り、八代を過ぎたあたりからは海沿いを走る形になります。僕の乗った個室は運良く海側の方だったので、窓一面に絶景が広がります…。
 

海沿いの車窓-その1

海沿いの車窓-その2
 

海沿いの車窓-その3

海沿いの車窓-その4
 
「海沿い」そう書きましたけど、本当に海の間近を走っているのです。砂浜にそのまま線路があって、その上を走っている様な、いや、もっと言うのならば、海の上を列車が走っている様な、そんな感覚にすらとらわれます。天気も快晴。青い海と青い空。いやがおうにも南国ムードが高まってきます。九州へ来たんだ!! そんな実感がわいてきます。
 
ここで、素晴らしい風景を眺めながらの朝食タイム。幕の内、やはりボリュームがかなりのもの。普段朝食を取らない人間なのに、朝からこんなに食べてしまったら…。「もう今日は、お昼抜いてもいいかもな」 そう思いました。しかしまさかこの日、本当にお昼を食べられなくなる羽目になるとは、この時には予想もしませんでした…。
 
列車は尚も走り続けます。鹿児島本線は単線が続くので、途中何回か駅で反対方向の列車とすれ違い。JR九州の看板特急[つばめ]ともすれ違います。
 

どこかの駅ですれ違った、特急[つばめ]。
JR九州ご自慢の車両。

鹿児島到着直前に振り出した雨。
本当に強い雨でした。
 
どれくらい走ったでしょうか。もう鹿児島まであと一歩!! そこまで来た時、雲行きが何やら怪しくなってきました。そして突然振り出した大粒の雨!! 窓がみるみるうちに濡れていきます…。そんな、さっきまであんなに綺麗に晴れていたのに。今日の天気はどうなるんだろう…。
 
しかしそんな心配も束の間。ほんの10分も経たない位に雨はやんでいきました。再び一面に広がる、まぶしいまでの青空。そして10:23。特急[なは]は定刻通り、終点の西鹿児島へと到着しました。さあ、これからいよいよ、鹿児島旅行、本番のスタートです!!
        

西鹿児島に到着した[なは]
長旅お疲れ様でした。

西鹿児島駅。
 
 
 
 
 
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