邦楽レビュー

 

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70’West Japanese Rock Scene / V.A.

1.涙の中へ / シェラザード 2.陽炎の街 / 乱舞流

3.赤と黒の戦い / カリスマ 4.人造人間 / ラウンドハウス

5.Dr.マッコイ / 天地創造

6.セレナーデ / 魔璃鴉 7.少年期 / シェラザード

 70年代に関西のインディーズロックシーンで活躍したバンドの発掘音源。インディーズと言えどもそのレベルはかなり高い。関西ハードロックシーンの火付け役「ノヴェラ」の前身バンドとして知られるシェラザード、DADAの泉陸奥彦とブラックペイジの菅沼孝三が在籍したトリオバンド「カリスマ」、シンフォニック・ジャズロックの名バンドとして名高いアイン・ソフの前身バンド「天地創造」、化粧系バンドの元祖と言われる「マリア」など、日本のロック史においても重要な音源が満載なのだ。特に、シェラザード、カリスマ、ラウンドハウスの楽曲はデキが良く、カリスマのバカテク演奏は格好良過ぎる程すばらしい。ドラムの菅沼孝三は、まだ10代だというから驚かされる。音が悪いのを差し引いても、聴く価値はあるはずだ。

 

東京・シンフォニック・シンドローム/ V.A.

1.バビロニア / メイド・イン・ジャパン・セッションバンド 

2.ザ・クラップ / タイムユニット 3.アクアポリス組曲 / アクアポリス

4.都 / グリーン

 こちらは、80年代における東京のインディーズロックシーンで活躍したシンフォニック系バンドの発掘音源。関西はハードロック系が多かったようだが、関東はジャズロック系が多かったらしく、どのバンドもジャズ的なアプローチを見せる。アウターリミッツや観世音などのメイド・イン・ジャパン・レコードに在籍するバンドのスーパーユニットとして結成された「メイドインジャパン・セッション・バンド」。アヴァンギャルドなジャズロックバンド、「タイムクラップ」。シンフォニック・ジャズロックの「アクアポリス」。伝説のプログレバンドと呼ばれている(生きている人間に対して、伝説とは何だと言いたくはなるが)UKタイプのバンド「グリーン」の4バンドが収録されている。個人的にはどのバンドも好なのだが、今ではまったく流行らない大曲指向のプログレ系ジャズロックのコンピレーションとなってしまっているところは、当然といえば当然だろう。関西盤は、ギターで聴かせる作品が多かったが、関東盤は、キーボードで聴かせる作品が多い。グリーンの「都」は、さすがに今でも名前が残っているだけあり、切り詰められた曲のなかにも大きな存在感がある。こちらのCDも音が悪いという点はあるが、ジャズロック・ファンなら、それを差し引いても聴く価値はあるはずだ。

 

銀の翼 / スターレス

1.プロローグ 2.銀の翼 3.ひとみの奥に・・・ 4.アフロディジアック

5.章末 6.ブレス 7.ダジリング・ディザイア 8.予感 9.明日の影

 80年代に活躍した関西のB級プログレッシヴ・ハードロックバンドの1st。正直、いきなり笑わせてくれた。どの曲も、B級ハードロックファンにはマストな音、曲展開を見せてくれるのだ。ブックレットのレビューもひどいもので、ノヴェラそっくりとか、この曲は平山並みのデキだとか、ことあるごとにノヴェラと比較され、そしてノヴェラ以上の評価をされることはない。しかし、このB級さのなせる技として、このバンドは微妙に人気が高い。人によっては名バンドだとさえ言い張る。それほど、マニア好みな確信犯的B級ハードロックなのだ。1stライブから200人動因したというのだから、そのB級パワーは恐ろしいものだ。まさに、日本人のB級好きを体現するようなバンドである。

 

悪魔と11人の子供たち / ブルース・クリエイション

1.原爆落とし 2.MISSISSIPPI MOUNTAIN BLUES

3.JUST I WAS BORN 4.悲しみ 5.ONE SUMMER DAY

6.脳天杭打ち 7.SOONER OR LATER 8.悪魔と11人の子供達

 後にヒットするクリエイションの前身バンドとして知られるブルース・クリエイションの2ndアルバム。バンド名にブルースとつくだけあってブルースくさい演奏を聴かせるバンドだが、しかしこの作品はブリティッシュ・ハードロックの影響を色濃く受けている。竹田和夫がザッパやサバスなどの影響でブリティッシュ路線に変更したためらしく、ブルース指向だった布施からボーカルが変わっている。しかも、このボーカルが恐ろしい。誰がどう聞いても片言英語なのだ。しかも、それがマイナスになるどころか、圧倒的な存在感を植え付けているところがすごい。ブラック・サバスをよりブルース寄りにしたようなサウンドで、曲のデキ、竹田のギターもすばらしい。70年代ハードロックの名盤中の名盤である。

 

ブルース・クリエイション / ブルース・クリエイション

1.CHECKIN' UP ON MY BABY 2.STEPPIN' OUT

3.SMOKE STUCK LIGHTNIN' 4.DOUBLE CROSSIN' TIME

5.I CAN'T KEEP CRYING 6.SPOONFUL

7.ROLLIN' AND TUMBLIN' 8.ALL YOUR LOVE

 ブルース・クリエイションの1st。2ndをはじめに聞いたので、全曲ブルースのこのアルバムには多少の違和感を覚えなくもなかった。全曲ブルースのカバー曲なのだが、ブルースに疎いので原曲を知らない私は、対比して批評することはできない。しかし、ブルースにあまりなじみのない私にも、楽しく聴ける作品であることは確かだ。(私の場合、何でも良いというので、当てにならないが)スプーンフルなどは、クリームのバージョンとはまったく違うが、こちらが原曲により近いのだとか。私は、この1stを聴く前に、2ndか、クリエイションの1stを聴いてみるべきだと思う。それで、竹田和夫のギターにほれたら、必ず聴くべきだろう。

 

No Picture

Same / カルメン・マキ&ブルースクリエイション

1.UNDERSTAND 2.AND YOU 3.LORD,I CAN'T BE GOING NO MORE

4.EMPTY HEART 5.MOTHER CHILD 6.I CAN'T LIVE FOR TODAY

7.MEAN OLD BOOGIE 8.ST.JAMES INFIRMARY

 元祖女流ハードロッカーであるカルメン・マキが、OZ結成前にブルクリと組んで、「悪魔と11人の子供たち」発表頃に発売したアルバム。この作品は、悪魔と11人の子供たちに比べると、全体的に、よりハードロック寄りにしあがっている。OZとブルクリをちょうど混ぜ合わせたような感じだろうか。特に一曲目のカバー曲
「UNDERSTAND」は格好良い。ファンタジーというアメリカン・ハードロックバンド(イギリスのプログレバンドではない)のカバーだそうだが、いかんせんファンタジーのCDが見つからない(出ていないといううわさもある。LPは、日本盤さえもあったのそうなのだが)ので、原曲との比較のはできない。しかし、全体を通して格好良いのだから、なんら問題ない。ブルクリの2ndを聴く前に、こちらから聴いても問題はないくらいだ。それに、ブルクリの2ndと違ってボーカルがマキなので、片言の英語ではない分、よく聴かずにいきなり敬遠するようなことにはならないだろう。

 

白熱のブルースクリエイション / ブルースクリエイション

1.ROLLING STONE 2.悪い夢 3.DRINKING BLUES

4.悪魔と11人の子供達 5.UNDERSTAND 6.TOBACCO ROAD

 ブルースクリエイションの唯一のライブ音源。PinkFloydの初来日公演が行われた箱根アフロディーテにおけるロックイベント開催日同日に行われたフォークジャンボリー出演時の演奏を収録。なぜ、完全ロックバンドのブルクリがアフロディーテのイベントではなくフォークジャンボリーなのかはナゾ。無論、フォークジャンボリー出演時であれ、ブルクリらしいハードな演奏を聴かせてくれるので、イベントの中では浮いた存在になっていたことだろう。演奏が悪いという意見をよく見るアルバムだが、竹田先生のギター目当ての人間には、別に問題ない。 無論、UNDERSTANDでは、カルメン・マキがゲストで歌っている。このアルバムに入っていない曲は、フォークジャンボリーの実況録音盤で聴ける。

 

No Picture

インスパイア / 中島優貴

1.プロローグ 新生 2.アー・ユー・ダーリン 3.サジタリアス&アクエリアス

4.ラヴ・イズ・ミステリー 5.トラック・ミー・ダウン(ムーン・キング)

6.ロック・オン・ターゲット 7.ノー・アンサー(エア・ポケット逆噴射)

8.フォー・エヴァー 9.エピローグ 転生

 歌謡ロックシーンというのが日本に存在していたというなら(そんなもん無かったと言われば、それまでだが)、なぜ、これほどの傑作が世に評価されていないのか私には理解できない。恥ずかしいほどキャッチーなMOOGの音、メロ、歌詞。どれをとっても、すばらしいの一言。あまりのダサ格好良さに、涙を流しそうになる程だ。演奏のレベルも高いし、ボーカルだって上手い。最高の歌謡センスとロックセンスが、絶妙のバランンスで溶け合っている。これは、まれに見る傑作だとさえ言えよう。ヘヴィ・メタル・アーミーのリーダーの作品として、ポップすぎるのがいけなかったのか?レコード会社がマイナー過ぎたのか?考えれば考えるほど、原因は多々出てきてしまうのだが、それにしたってこれだけの傑作が世にうずもれてしまうのは惜しい。サイケデリックスのCharがギターで参加。

 

ヘヴィ・メタル・アーミー1 / ヘヴィ・メタル・アーミー

1.ヘヴィ・メタル・アーミー 2.イエス・オア・ノー 3.チェンジリング

4.リタリエーション 5.ロング・スペル・オブ・レイン 6.ストリート・セラー

7.ハムラビアン・ポリス 8.生命の鳳

 カルメン・マキ&ラーフの中島優貴を筆頭に、紫のチビ、コンディショングリーンのシンキ、ジョージ紫&MarinerのJJ、クリエイションのチェピートにより結成されたヘヴィ・メタル・バンド。誰に聴かせても、「こんなんメタルじゃない!」と言い張るが、これだけのメンバーがそろってるし、ヘヴィ・メタル・アーミーだと言ってるのだから、ヘヴィ・メタルなのだ。ここでも中島節が絶好調で、ヘヴィ・メタルといいながらも、絶妙な歌謡ロックセンスがにじみ出ている。もう、涙無くしては聴けない程のこのダサ格好良さは、他のヘヴィ・メタル・バンドではActionくらいのものだろう。しかし、中島優貴は、Actionよりも、もっと豪快に、もっと大胆に、歌謡センスをにじみ出しているのだ。いや、にじみ出しているというよりは、ここまでいくとあふれかえらせているのだが。しかし、ダサさを抜いても普通に格好良い作品なので、ロックファンなら誰もが楽しめること請け合い。まさに、パーフェクトの格好良さ。No.1のジャパメタ・アルバム。まさに、マスト。

 

 蔵六の奇病 / 非常階段

1.マントヒヒ(大阪) 2.磔磔 3.創造道場(大阪)

4.新宿ロフト(東京) 5.慶応大学日吉315教室(神奈川)

6.同志社大学至誠館24教室(京都)

 JOJO広重率いる、ノイズバンドの1st。私は、ノイズとかはあまり聴かないのだが、実は非常階段は以前から気になっている存在であった。このアルバムは、限定で発売されたLPの復刻CDで、蔵六の奇病というタイトルと、日野日出志のジャケにやられて、買ってしまった。この作品を聴いて思ったことは、普通に面白いということ。普通に格好良かったということ。ロックファンなら、理解できる境地に降りてきている作品だ。非常階段は、ノイズと言っても、しょうもない音だして、しょうもないフレーズ弾いてるだけのバンドではないのだ。やはり、どんなジャンルでも、名前のあるバンドは違うものだと教えてくれた。これは、音楽における退廃的美学を追求した名盤である。

 

 

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