Foreign Affairs

Cinny's Waltz
Muriel
I Never Talk To Strangers
Medley: Jack & Neal/California, Here I Come
A Sight For Sore Eyes
Potter's Field
Burma Shave
Barber Shop
Foreign Affair



"Small Change"の成功は、トムに金と名声をもたらした。
のみならず、彼は、レギュラー・バンドも手に入れることとなった。
バンドの名は、ノクターナル・エミッションズ。
メンバーは、フランク・ヴィカリ(テナー・サックス)、フィッツジェラルド・ジェンキンズ(ベース)、チップ・ホワイト(パーカッション、ヴァイブ)。
"Small Change"リリース直後の76年10月以降、トムは、このメンバーと共に、ツアーに出た。
まずはアメリカ、次にヨーロッパ、そして、日本ツアーも行われたのである。
こうして出演した数多くのショーの中には、テレビやラジオでオンエアされたものもあった。
トムの独特のキャラクターは、大衆の興味を引き、タイム誌やヴォーグ誌からのインタビューもあった。
ツアーは順調であったが、トラブルもあった。
来日公演時に意気投合した女性が、言葉の違いのため、トムにプロポーズされたと勘違いし、アメリカまで追っかけてきたのである。
慌てて女性を説得して事なきを得たトムであったが、そうした様々な出来事のきっかけとなった"Small Change"とツアーの成功に関して、トムはこう語っている。
"俺は金銭志向じゃないからな。・・・(中略)・・・仲間から一目置かれ、オヤジに頑張ってるな、と思われればそれでいいんだ。俺にとって大事なのは、もっと本質的なこと・・つまり、何か意義があること、自分が誇りに思える、今までに無かった何かをやりたいんだ。70年代が終わるまでに何か確実なものを掴みたいんだ"

トムは、新作の制作を再開した。
1999年に行われた電話インタビューで、プロデューサーのボーンズ・ハウは述懐する。
"トムは、今までとは違った手法を相談してきたんだ。彼は、こう言ってきた。"まず俺がデモを作るから、出来たら聴いて欲しい。それからどういう作品にするか決めよう"
それで、トムのデモを聴いた時、僕は言った"これは白黒映画みたいだね" 白黒映画の様にしよう、というのが、カヴァー・ジャケットのアイデアの由来にもなった。
ただ、最終的にどんな形になるかは分からなかった。レコーディング中にも変化が起こるし、形もどんどん変わっていくからね"

実際のレコーディングは、1978年8月2、11、12、15日にロサンジェルスのフィルムウェイズとワリー・ヘイダー・レコーディング・スタジオで行われた。
ジャック・シェルドンのトランペットが聴けるインストゥルメンタル"Cinny's Waltz"で始まり、ベット・ミドラーとのデュエット"I Never Talk To Strangers"、ジャック・ケルアックとニール・キャサディを歌った"Jack & Neal","California, Here I Come"のメドレー、"蛍の光"で始まる"A Sight For Sore Eyes"、ジーン・シプリアーノのクラリネット、ジム・ヒューアートのベースに乗って、まさに白黒の無声映画をトムが語っているといった趣の大作"Potter's Field"、床屋が客の髪を切りながら、ひたすら喋り続ける様を描いた"Barber Shop"、ラストを飾るタイトル曲"Foreign Affair"で終わるまで、1本の映画作品を観終わったような気分にさせられる作品。

ところで、アルバム制作にいそしむ一方、1977年5月、トムはちょっとした事件に巻き込まれた。
5月27日、トムとチャック・E・ワイスは、デュークス・コーヒー・ショップで、警察に逮捕されたのである。
理由は、デュークスに張り込んでいた3名の私服警官への公務執行妨害。
トムは、警官のでっち上げだと主張、この後5年間に及んだ訴訟の末、無罪が立証された。

身の潔白を証明した後、トムは再び、コンサートに明け暮れる生活へと戻ったのだった。


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