Институт Философии и Языкознания(ТокиоЯпония)

哲学ノート (1) 2005年2月10日(木) 

< Karl Marx , Ökonomisch-philosophische Manuskripte aus dem Jahr 1844 >
「経済学・哲学草稿(1844年)」

  ”Die Bildung der 5 Sinne ist eine Arbeit der ganzen bisherigen Weltgeschichte.” 
                                     (Karl Marx,Ökonomisch-philosophische Manuskripte aus dem Jahre 1844)

 
 そもそも芸術とは何か?根本的に哲学的にとらえようとするためには、「感性に関する学」であるところの「美学」に取り組まなければなりません。ざっと思い当たる文献を列挙してみましょう。
 1.アリストテレス 「詩学」
 2.カント 「判断力批判」
 3.ヘーゲル 「美学」
 を基礎としながら、バウムガルテンやルカーチなどの名前を挙げることができますが、意外に知られていないのがマルクスの「経済学・哲学草稿(1844年)」なんです。その中に興味深い一節があります。

 「五感の形成はこれまでのすべての世界史の一つの作品である。」

 「五感」とは視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五つの感覚ですね。それが人間の感覚として歴史的に発生・発達・洗練されてきたものである、と読み取ることができます。面白いのはこの一節が「私的所有と共産主義」(Privateigentum und Kommunismus)という章にあることです。もちろん「草稿」ですから、テーマに関わらずに自由に思いつくままに書いてるでしょうから、話のついでにそういう流れになっちゃんたんでしょう。でも前後のコンテクストの中でどういう意味があるかを紐解いてみることも必要な事だと思います。

 五感の「形成」といっていますから、感覚は生得的に持ち合わせているのではない、ということになりますね。形成されるものとしての「感覚」とは何でしょうか?

 「すべての世界史」とは具体的にどういうことでしょうか? 「書き記されるようになって、初めて歴史は成立した。」、「1492年の地理上の発見によって世界史は成立した。」といわれています。この「歴史」(Gescichte)ないし「歴史的」(geschichtlich)ということばの重みをいかに理解するかが、哲学する上で極めて重要であることをここで指摘しておきます。

 ・・・といった感じで読み進めていくと、表題からは想像できない「美学」にかんする本としても読めるということがわかってきます。マルクスは青年期にいくつかの詩を書いていますから、芸術や美学に関心があったとしてもおかしくないですね。



 さて、本文を実際に読んでみることにしましょう。翻訳によってかなり相違がありますので、本来は原文をじっくり読まなければなりません。しかし、とりあえずは日本語訳で読んで、見通しをつけてから原文にあたっても良いでしょう。マルクスの文体は疑問の余地がないように、くどいくらいに論理的に構築されています。軽い文章に読みなれている現代人にとっては、かなり根気が必要とされます。もし日本語訳で読んだとしても、英語の長文読解のように、文章の構造図式を作ってみないと、よく理解できないかもしれません。

 まず、上記の文章があるパラグラフの結論部分をとりあげましょう。

 ”also die Vergegenständlichung des menschlichen Wesens, sowohl in theoretischer als praktischer Hinsicht, gehört dazu, sowohl um die Sinne des Menschen menschlich zu machen als um für den ganzen Reichtum des menschlichen und natürlichen Wesens entsprechenden menschlichen Sinn zu schaffen. ”

 ドイツ語初級者のためにも丁寧に解説しましょう。この文章の「へそ」はどこでしょうか? ・・・”gehört dazu”が「へそ」であることを発見したら、50%成功です。ヨーロッパ語は文章の中心となる「動詞」を中心軸にして同心円状に文章が構成されています。

  gehören (eng. belong) ~のものである、~の一員である、~が必要である


 この動詞は、

”Dieses Auto gehört ihm." (「この自動車は彼のものだ。」)

と通常は「所属」を表しますが、「必要」の意味もあります。ここの文章は、

”Viel Geschick gehört dazu , das zu machen.” (「それをするには優れた手腕が必要である。」)


が単に長くなったものと考えられます。

 したがってこの文章の本体は、

 ” die Vergegenständlichung des menschlichen Wesens gehört dazu, um etwas zu inf.  (「~するためには、人間的本質の対象化が必要である。」)

となります。

付録

(1) マルクスのインターネット文献について
(2) 言語コードについて  

見上潤  미카미 준  Mikami Jun  Миками Джюн

filosofia
Институт Философии и Языкознания(Токио,
Япония)
Миками Джюн

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ФИДОСОФСКИЕ ТЕТРАДИ
2005/02/10 


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