今回の記録は案内者の小幡 喜一氏から当日の案内パンフレットをHTMLでいただきました。写真や図を含めてそのすべてを記載いたします。
今回は,「日本地質学揺籃の地」といわれる長瀞の上流地域,栗谷瀬橋からの虎岩までの荒川沿いにみられる三波川帯の結晶片岩類・蛇紋岩などを観察します.また,県立自然史博物館前で開催中の企画展「美しい鉱物の世界U」・常設展も見学します.
長瀞の結晶片岩類は,地下およそ30kmの深いところで形成された低温高圧型の広域変成岩です.結晶片岩類は,高圧状態のもとで岩石中の鉱物が,雲母のような鉱物につくり替えられたために,薄くはがれやすい「片理」といわれる性質が特徴です.
結晶片岩類は,色合いによって黒色片岩と緑色片岩に分けられ,前者はおもに泥質岩,後者は苦鉄質火山岩・火山砕屑岩が変成されてできたものです.また,ふくまれる鉱物の種類によって,黒雲母片岩・スチルプノメレン片岩・赤鉄片岩・緑泥片岩・緑簾片岩などと細かく分けられます.
明治時代には日本列島の基盤をつくる先カンブリア時代の岩石と考えられていたこともありました.その後,造山期の広域変成作用によって"秩父古生層"が姿を変えたもので,当時知られていた石灰岩中の化石の年代から,ペルム紀末に形成されたと考えられるようになりました.
ところが,1938年に藤本治義博士が結晶片岩中から白亜紀の放散虫を発見され,三波川帯の変成年代がいつなのかわからなくなりました.
1980年代になると「秩父古生層」中からジュラ紀の放散虫が発見され,「秩父地向斜」の考え方は破棄されて,プレートテクトニクスの考え方に基づいて,沈み込み帯における付加体であると解釈されるようになりました.そして,現在では三波川帯が形成された年代はジュラ紀から白亜紀,あるいはもっと新しく,第三紀にまで及ぶのではないかとも考えられています.