2021年から2024年までの名PVA
As It Was / Harry Styles (2022)
イングランドのポップグループOne Directionのメンバーで、Redditch出身のシンガーソングライターHarry Stylesの2022年に全米1位、全英1位を記録した大ヒットナンバー。PVはウクライナ出身のTanu Muino監督によるもので、撮影2日目に監督の母国でロシアのウクライナ侵攻が起きています。ミュージッククリップはダンサーのMathilde Linとともに恋人との心の揺れを映像的に表すもので、回転台での二人のやりとりが印象に残ります。 アメリカはペンシルバニア州West Reading出身のシンガーソングライターTaylor Swiftの2022年末に全米1位、全英1位を記録した大ヒットナンバー。PV監督はTaylor Swift自身。自分はアンチヒーローと自虐的な歌詞を歌うこの曲のPVにはおとなしいTaylorと真逆のTaylor、さらに不思議の国のアリスに出るような巨大なTaylorの3つの分身が登場します。終盤にはTaylorが亡くなった後に架空の息子と娘が葬式でTaylorの名声をどう利用するかで口論となり、その様子を3人のTaylorが見ているという自分と自分の未来を俯瞰する不思議な感じのものになっています。 ニューヨーク出身のラッパーCardi Bの2022年に全米13位を記録したナンバー。Lado Kvataniya監督によるPVはニューヨークを見下ろすビルの頂点にCardi Bが立ち、高層ビルの通信塔の先端から歩いて降りるという独特の映像に始まり、力強いラッピンにまけないCGを使った迫力ある映像が流れます。 テキサス州San Antonio出身のラッパーMegan Thee Stallionの2022年に全米62位を記録したナンバー。Colin TileyによるPVはモノクロームの映像で、低いビートに導かれるダンサブルなラップに合わさって、洗練されたダンスがパフォーマンスされます。彫刻をイメージしたものや、さりげないバックのCGとの組み合わせがお洒落です。 イングランドはBathで結成されたロックバンドTears For Fearsは80年代に特に活躍していましたが、2022年に『The Tipping Point』が全英2位、全米8位を記録して復活を印象づけました。そのアルバムからのトラック「Break The Man」はデビュー時の「Pale Shelter」を思わせるスリリングなトラック。WeWereMonkeysによるPVはコンピューターの世界に無限の人間が同じような動きをするもので、足下の床がひっくり返ったり、無限の階段を上っていく様はかつてのSF映画で描いていた現代社会への風刺を想像させます。 大阪出身でニューヨークで活動するJojiの2022年に全米8位、全英12位を記録したナンバー。「私たちの一面」というタイトルで、穏やかなピアノの調べによる哀愁あるメロディに合わさる曲のPVには匿名の主人公によるレースカーでの様子や悪ふざけのようなシーンが家庭用の録画機で撮影されたもので、リアルに人間のイヤな部分を映し出していて独特の味わいがありました。監督はDan Streit。 イングランドはロンドンで結成されたロックバンドBlack Midiの3枚目のアルバム『Hellfire』は全米139位、全英で22位と大ヒットではなかったですが、そのPVはいずれも名作で印象的でした。タイトルトラックの「Welcome To Hell」は「Slow」のアニメーション作家Gustaf Holtenasによるもので、異世界におけるいびつな愛の形を描きながら、最後にはエヴァンゲリオンのような展開になって、「Slow」のキャラクターに繋がっていきます。 同じくBlack Midiの『Hellfire』からNoel Paul監督によるPVはボクシング会場による試合にその関係者と思われる娘が相手を銃殺するという内容ですが、恐らくボクシングの映像は一人の人間が殺人を犯す時の心の映像で、フィルターをかけたようにぼやけているあたりは夢の中のような幻想的な感じになっています。
同じくBlack Midiの『Hellfire』からMaxim Kelly監督によるPVは南北戦争時代のようなモノクロームの世界です。白人の兵が黒人の男に毒のような何かを入れた食事を渡すシーンはおどろおどろしい闇を感じさせます。音楽と映像が一体となったショートフィルムは完成度が高いものとなっています。 イングランドはWlmslowで結成されたロックバンドThe 1975の2022年に全英29位を記録したナンバー。マットヒーリーとFKA Twiggsとの関係にインスピレーションを受けた曲は80年代の明るいポップサウンドになっています。モノクロームの映像は無声映画時代のバスターキートン作品に影響を受けたもので、ヒーリーはピエロの役を演じて女性とのやりとりを描きます。監督はHealyとSamuel BradleyとPatricia Villirillo。 |