『月の雫と猫の夢』

 月を見る夢
 まどろみの淵
 降り注ぐ光の粒
 流れに乗せて
 人魚の身体
 光を弾く
 静かに流れる時を
 ただ月が照らした
 月を見る日々
 人魚の瞳
 星の砂がさらさらと
 指から零れ
 風は吹き抜け
 月夜の森で
 胸元で輝くのは
 月を宿した水

 人魚の幻影残し
 朝は来るわ、永久に、永久に
 潮騒に消えた明日を
 月はキミに見せる

 月を見る夢
 眠りは醒めず
 潮の流れに漂う一輪の花
 月明かり浴び
 雫が落ちる
 一時の夢の果てを
 月だけが見ていた





『人魚の幻影』

 艶やかに海原を舞う、
 人魚達の歌声
 波音に乗せて優しく
 寄せては返すように

 繰り返し旋律を生み
 ぶつかり合い消えてく
 静かな世界で絶えず
 紡がれる物語

 清き巫女の祈り
 ゆらり星の導辿り
 泳ぐ人魚の影
 美しく照らし続ける

 古の言葉を紡ぐ
 人魚達の歌声
 波音に乗せて激しく
 神楽舞う青き炎

 水泡の旋律は
 古き神の調べとなり
 光弾く水面
 遠く遠く彼の島まで

 人魚達は歌う
 蜃気楼の遥か彼方
 空と海に溶けた
 物語は幻へと





『月光浴』

 青い海を見つめ
 星達の声聴いた
 貝殻の光
 さざ波の子守唄
 島を渡る風と楽園の最後の日
 猫達は眠る
 明日の日を夢見て

 神の島でキミと二人
 森の中
 白い火を身に散りばめた
 人魚に抱かれて眠る

 大地焦がす炎
 鳴り響く鈴の音
 やがて訪れる静寂に波の音
 深い海の底へ降り注ぐ月明かり
 波間に消え行く
 楽園のその日々

 神の島でキミと二人
 森の中
 白い火を身に散りばめた
 人魚に抱かれて眠る





『ねこなのよ』

 耳をピコピコ
 ねこ、ねこなのよ
 毛並みなめらか
 ねこ、ねこなのよ
 空の果てで呼ぶ声と
 ひなたぼっこよ
 ねこ、ねこなのよ

 しっぽゆらゆら
 ねこ、ねこなのよ
 毛玉吐き出し
 ねこ、ねこなのよ
 神の炎眺め過ごす
 キミの夢見る
 ねこ、ねこなのよ

 鈴をころころ
 ねこ、ねこなのよ
 撫でて欲しいの
 ねこ、ねこなのよ
 永久の森で今もなお
 明日の夢見る
 ねこ、ねこなのよ





『貝の夢』

 海風がくすぐる
 赤い頬、笑う声
 濡れた足のままで
 お喋りしてようよ

 見上げれば夕空
 帰り道、笑う声
 冷えた手のひらには
 キミがくれた貝殻

 すぐに壊れてしまいそうな
 儚さが愛しくて
 こんな日々がずっと続けば
 いいと願った

 森の出口に咲く
 赤い花、髪に挿し
 海へ続く道を
 降りていく軽やかに

 何も怖くなんてなかった
 どんな暗い夜でも
 ここには私の守るべき
 ものがあるから

 すぐに壊れてしまいそうな
 儚さが愛しいよ
 こんな日々がずっと続くと
 信じていたの





『火の巫女の追憶』

 散れよ桜の花、星の祈りにて
 森の声を宿し、水辺に降り立て

 燃えよ草原の火よ、空の遠くにて
 神が降り立つ時、命捧げよう

 夜明けの空仰ぎ、其の火に焼かれて
 身を焦がして雛と白い月を撫で