Various Artists


12 SOULFUL NIGHTS OF CHRISTMAS Part 1


1996 So So Def/Columbia
1. Christmas Without You - Xscape
2. Little Drummer Girl - Alicia Keys
3. Because of His Love - Brian McKnight
4. Not Really Christmas - Trina Broussard
5. In Love at Christmas - K-Ci and Jojo of Jodeci
6. The Christmas Song - Tamia
7. Christmas Without My Girl - Gerald Levert
8. Christmas Only Once a Year - Chaka Khan
9. My Younger Days - Trey Lorenz
10. Christmas Lullaby - Faith
11. Every Day Should Be Christmas - NeeNa Lee
12. This Christmas - Jagged Edge



 クリスマスアルバムは星の数ほどありますが、キリストの誕生を祝うものであるならばやはり教会→ゴスペルに向かうのが基本。もっとも、そこまで本格的に掘り下げなくても、ソウルフルなヴォーカルによるクリスマスソングを楽しむことは十分に可能。例えばこのアルバムで。

 96年暮れに何となく購入して以来、年末になると毎年僕の部屋で流れている1枚。参加アーティストをご覧いただければお分かりのとおり、若手からベテランまで素晴らしい声がずらりと並んでいます。特に一部のマニアにとっては、2001年に大ブレイクしたアリシア・キーズの初期音源を収録したコンピレーションとしても貴重。翌97年7月に発売された "MEN IN BLACK" のサントラにアリシアが1曲提供していることはよく知られていますが、その半年以上も前に So So Def レーベルで歌声を披露していたことは、今となっては消したい過去かもしれません。こんなに早くからあちこちでリリースしておきながら、2002年に何食わぬ顔してグラミー新人賞もらっちゃうってのはどうなのよ。みたいな。そもそも、So So Def がクリスマスアルバムを出せたこと自体が驚き。本作のエグゼクティヴ・プロデューサーはもちろんジャーメイン・デュプリですが、時の人として一世を風靡した90年代後半の勢いを感じさせるディスクです。その証拠に、「Part 1」と銘打たれたこの作品、自分の知る限り「Part 2」は発表されていません。(数年後にジャケットを変えて2曲追加し、「Part 1」を削除・改題したアルバムが出ています。) 

 ここまで落としておいて何ですが、内容はなかなか興味深い。
 オープニングはデュプリの子飼い、Xscape。ブライアン・マクナイト作曲・制作・全楽器演奏の、離れていった恋人のことを想うオリジナル曲です。シンプルなトラックの上で、4人の南部娘がリードを回しながら綺麗にまとめます。続く2曲目が問題のアリシア・キーズ。あの有名な "Little Drummer Boy" の女の子ヴァージョンなのですが、これがオリジナルから100万光年くらい彼方にぶっ飛んだ、まったく斬新なアレンジで聴かせてくれます。ピアノ(残念ながらアリシアではない)をメインにゆったりとしたジャジーなトラック。悲しげなメロディをソウルフルに歌い上げるアリシアには本当にびっくり。ロドニー・ジャーキンスの抑制の効いたプロデュースも大正解、これだけを聴くために入手してもいいくらい。

 3曲目はブライアン・マクナイト本人が登場、これもオリジナル曲。彼の優しい声にぴったりの暖かいメロディに乗せて、神への愛を歌います。本当にいい曲書きますねー。続いては Trina Broussard。Trina とトレイ・ロレンツらの共作になるオリジナルです。このアルバムの特徴は、有名なクリスマスキャロルを安易に歌わせるのではなく、できるだけオリジナルのクリスマスソングを持ち寄らせたところでしょう。これもジャジーでいい曲だし、それ以上に Trina の声が素晴らしい。ちょっとかすれ気味ながら、パワフルで伸びがあって、綺麗にビブラートがかかってます。この子のフルレンスアルバムはどうやらお蔵入りになったようですが、なんてもったいないことを。5曲目、K-Ci & Jojo の登場です。まだこの頃は "of Jodeci" ってクレジットされてたんですね。2人と Rory Bennett によるオリジナル曲ですが、ヴォーカルについてはいつもの K-Ci & Jojo 節で特に変わったところはありません。ってことはファンは満足間違いなしだね。

 後半の聴きどころはまず、6曲目のタミアちゃん "The Christmas Song"。クインシー・ジョーンズの "You Put A Move On My Heart" 以降その動向が注目されていた彼女、ここでは有名なあの曲を静かに、ストレートに歌い上げます。もう、声が可愛いのなんのって。98年にフルレンスが出たときにはトラックがうるさすぎて興ざめだったなあ。8曲目のチャカ・カーンはベテラン健在の安定した節回しですが、意外にも良かったのは9曲目のトレイ・ロレンツくん。ジャズ・トランペッター、フレディ・ハバードの "Red Clay" をサンプリングした異様にカッコいいベースラインの上で歌うトレイのヴォーカルは、数年後にアッシャーが完成するスタイルそのものです。売れるか売れないかなんて本当に時の運なんだなあと痛感。だってこれ十分にカッコいいよ。10曲目のフェイス・エヴァンスは So So Def というアウェイのフィールドが災いしたか、独特のクールかつ妖艶な雰囲気を醸し出すところまでいけなかった模様。美しいピアノとシンセ・ストリングスの上で彼女がララバイを歌ってくれるのですから、もちろん要求水準は軽くクリア。11曲目の NeeNa Lee って子も他のところで名前を見かけた記憶がないのだけれど、どうなったんだろう。艶やかでよく伸びる、綺麗なヴォーカルを聴かせる彼女も、ぜひアルバム1枚通してじっくり向かい合ってみたい逸材です。

 そんなわけで、お馴染みの曲が少ないのが玉にキズですが、レベルの高いオリジナル曲を1曲1曲しっかりと歌い込んだ点はかなり評価できます。タイトルどおり、「ソウルフルな夜」に浸りきってみてはいかが?

お気に入りベスト3
1. The Christmas Song - Tamia
2. Little Drummer Girl - Alicia Keys
3. Not Really Christmas - Trina Broussard

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