全人類必聴! "POST" - Bjork


22 June 1995

 1995年の年間ベストアルバム候補がリリースされました。

 そう、Bjork のセカンド・ソロ作 "POST" です。とにかく聴いてみてください。正直言って参りました。我々が考えるところの「ポップ・ミュージック」の限界を軽々と飛び越え、かつて引かれていた境界線をまったく無意味なものにしてしまいます。無垢で純粋な彼女のヴォーカルはまさに天界の歌声。

 アルバム1曲目を飾る "Army of Me" のうねりまくるぶっといシンセベースのラインは、起き抜けに聴こうものなら1日中頭の中でリピートされちゃうし、2曲目の "Hyper-Ballad" のアレンジやプロダクションには本当に目からウロコが落ちます。これは大名曲! そして何と言っても、気合いの入りまくった"Wow, wow!" の叫び声にビックリすること請け合いのビッグバンド・ナンバー、"It's Oh So Quiet"。それから、壮大なストリングスセクションがスペースオペラ系のSF映画音楽を思わせる、"Isobel" の展開も聴き逃せません。あの Deodato が制作に絡んでいるのもポイントでしょう。アルバムラストの "Headphones" では Bjork が幼児語のようなバブバブを連発します。楽曲そのものの静かな雰囲気と相俟って、夜眠る前なんかに聴くと非常にいい感じ。ベッドが子宮になってしまうような、そんな感じすらします。

 全編を通しての印象は、『無敵の Bjork』、これに尽きます。Nellee Hooper を始めとするクラブミュージックのトップ・リミキサーたちが、寄ってたかってバックトラックをいじり回して完膚なきまでに蹂躙しようとも、その廃墟に差し込む一筋の希望の光の如き Bjork の歌声が流れて来たとたん、もうすっかりトランス状態になっちゃうくらい。



 「ベッドが子宮化する」、と評した理由はこうです。

 人間って、ひとりひとりどうしてこんなにも違うのか、というくらい千差万別です。個々人が、ありとあらゆる可能性を秘めている。その元を辿ると、それは母親の胎内、子宮というスペースから発生しているわけです。そこはあらゆる強さを内包し、すべてを包み込んでしまう場所。生まれた後にどんどんまみれていくであろう各種の偏見や差別に全く囚われていない、無垢な場所。Bjork のヴォーカルと音楽を聴いていると、本当にその無限の可能性、無敵ぶりが羊水の中で漂っているような、そしてスピーカー周辺の空間までそれに同化していくような、そんな不思議な感覚に陥ってしまうのです。

 何はともあれ、ベッドに寝転がって、何も考えずに "POST" を聴いていただければ、子宮化を全身で体験してもらえるのではないかと思います。Bjork 自身が子供を持つ母親であるという事実は、子宮音楽について考える場合非常に興味深いことかもしれませんね。



 さてさて、日本では限定 Bjork バッジ付きでリリースされたらしい "POST" ですが、UK盤は以下の3つのフォーマットで発売されています。

1. 通常のプラスティックケース盤
  まだあまり出回っていません。2.の形態が初回盤なので、それが売り切れてから主流になる模様。
2. 豪華デジパック盤
  中にブックレットと折り畳みミニポスターが付いている。
  ブックレットは1.の盤より写真その他が多い。ポスターの表情も最高!
3. 2.が透明のバッグに入ったセット
  これも限定盤。中身のデジパックは2.と差がないと思われる。やや高め。
  ちなみにカセットテープ盤もリリースされているが、これにも透明バッグヴァージョンが存在する。

 また、"Army of Me" のシングルCDは2種類がリリースされています。1枚は "You're Flirting Again" "Cover Me" 及びアルバム未収録の "Sweet Intuituion" をカップリング。もう1枚には Skunk Anansie の SKIN とのデュエットヴァージョンでの "Army of Me" が収録されています。Skunk Anansie はスキンヘッドの黒人女性ヴォーカリスト、SKIN 率いるロックバンド。今一番の注目株です。BBCの TOP OF THE POPS という番組でこのデュエットヴァージョンでのライヴ披露がありましたが、物凄い迫力でした。Skunk Anansie についてはまた別に触れる機会があると思います。


December 2001 追記

 この年の Bjork の活躍ぶりはすごかったですね。上のレビュウを読み返してみると、この後続々とシングルカットされる "Isobel""Hyper-Ballad""It's Oh So Quiet" といった特筆すべきトラックに、かなり早い時点で注目していた自分にちょっと驚きます。もちろんこの後も充実した活動を続けている彼女。映画 "DANCER IN THE DARK" での取り憑かれたような演技にはちょっと言葉を失いました…


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