『夢、夢のあと』 のあと。

大好きなジャーニーのヒット曲やアルバム名をご紹介するために、プチストーリィを作ってみました。
シーンはジャーニーがサントラを制作したある映画に出かけた2人、エロティックなシーンで気まずい思いをして映画館から出てきたところ。(この文章はフィクションです。着想のもとになった体験をされた某氏には、この場を借りてお礼申し上げます。)
(February, 2001)


『夢、夢のあと(1)』 のあと。


うつむきながら映画館を出てきた二人は、無言だった。
脳裏にチラつく映画のあのシーンは、降り注ぐ日光の下ではあまりに場違いで、どこかに脱出(2)してしまいたい気分にさせる。
「あのさ、」
何かしゃべらなきゃという強迫観念に駆られて(3)口を開いた彼に対し、彼女は冷たく言い放つ。
「やめて。私もう帰る。」
つなごうとした手を振りほどく彼女。淑女のように毅然と歩み去る(4)その後ろ姿を見つめながら、彼はただそこに立ちつくすばかりだった。きっと、女の子っていうのは我慢できないもの(5)なのだろう。

数日後、彼の部屋の電話が鳴った。
「もしもし?」
答えがない。
「もしもし?」
「…私たち、別れたほうがいいと思うの。」
電話口で彼女はそれだけつぶやいた。
「ちょっと待って。説明させてくれ」
「もう遅すぎる(6)
「じゃあ、フラれたってことか…」
「そうじゃなくて… 別々の道を行くってこと。それぞれの世界で(7)。」

結局同じことだ(8)。ぐるぐる目が回る。まるで大空で大きな車輪が回転しているみたいに(9)
どこまでも落ちていったあと(10)で、彼はやっとつぶやいた。
「もう決めちゃってるんなら、お気に召すまま(11)にすればいい」
「…あなたはそれでいいの?」
「僕のことなら、君なしでも大丈夫。代わりが見つかるさ(12)。それまでラジオでも聴いて気を紛らわせるよ。ラジオで育った(13)ようなものだしね。僕は女性を愛する時(14)にとるべき行動が分かってなかったし、気の利いた愛のメッセージも伝えられなかった(15)。」
彼は淡々と答え、そして一息ついてから付け加えた。
「でも、戻ってくる気になったらいつでも(16)おいで。両手を広げて(17)待っているから。」

静かに受話器を置き、彼は窓から街の灯り(18)を眺めた。ひとつ、またひとつと灯りが消えて行く。確かに映画の選択は杜撰な(19)ものだったかもしれない。若者たちだけが(20)犯す過ちだったかもしれない。あんなに素晴らしい愛が、どうしてこんなにも傷つけ合ってしまうのか。永遠のミステリーだ(21)

大丈夫だと言ってはみたものの、これから悲しみや寂しさが連鎖反応(22)を起こし始めるだろう。そしてそれでも彼は、孤独に問いかけ(23)ながら、彼女が帰ってくると信じることをやめない(24)だろう。
明日になれば、今夜のことは過去になってしまう。過去になってしまえば、思い出は無限(25)の彼方に消え去ってしまうだろう。もう少しだけそばにいて(26)ほしかった。今夜が永遠に続いてくれればいいのに…(27) 

…いや、と彼は考え直す。
パーティは終わった(28)んだ。新たな時への誓い(29)を胸に、未来を見つめよう(30)
振り返っても一点の後悔もない。許すことは忘れること。自分を大事にしよう(31)。これが新しい出発(32)なのだから…


<解説編>


(1) Dream After Dream (ALBUM)
   日本独自企画サントラ。海外ではちょっとしたコレクターズアイテム。

(2) Escape (ALBUM、全米1位)
   いわずと知れた大ベストセラーアルバム。非シングル曲も極めて高レベル、通しで聴きたい1枚。

(3) Captured (ALBUM、全米9位)
   これはややこじつけっぽいですね(^^;)。いいライヴです。中野サンプラザ音源も収録。

(4) Walks Like A Lady (全米32位)
   ヒットの度合いでは貴婦人もエジプト人に到底かなわない。

(5) Girl Can't Help It (全米17位)
   女性差別のヒットとして有名(ウソ)。他に Alice Cooper "Only Women Bleed" など。

(6) Too Late (全米70位)
   いかにもヒットしそうにないタイトル(笑)。
   Carole King "It's Too Late" や Julian Lennon "Too Late For Goodbyes"、さらには Richard Marx の "Too Late To Say Goodbye" といったヒット曲群の前では残念ながらあまりにも弱い。


(7) Separate Ways (Worlds Apart) (全米8位)
   コンパクトなシングルエディット音源が好きなんだけど、アルバムテイクしか持ってません…
   「産業ロック」の完成型。逆にそこが大嫌いな方々もいらっしゃるかもしれません。


(8) Just The Same Way (全米58位)
   ほかの曲と同じようによい。

(9) Wheel In The Sky (全米57位)
   ライヴでは結構盛り上がるようです。今聴くとちょっと泥臭い感じが魅力か。

(10) After The Fall (全米23位)
   子供の頃は、「秋の後」? …てことは冬の歌かなと思ってました(^^;)。

(11) Any Way You Want It (全米23位)
   「お気に召すまま」 。実にいい邦題だと思います。コーラス前の掛け合いも盛り上がる。

(12) I'll Be Alright Without You (全米14位)
   コーラスの歌詞からいただきました。
    "I'll be alright without you / there'll be someone else / I keep tellin' myself"


(13) Raised On Radio (ALBUM、全米4位)
   メンバー間では賛否両論ある作品。シングル曲に限っていうと悪くないと思うのですが…

(14) When You Love A Woman (全米12位)
   "TRIAL BY FIRE" からのバラード。次の "Message of Love" とセットで捉える必要がある。

(15) Message Of Love / Send Her My Love (全米23位)
   前者は(14)のカップリングで、誰もが "Separate Ways" を想起する展開。後者はひたすら切ない名曲。

(16) Anytime (全米83位)
   マッコーリー・シェンカー・グループ(69位)の方がカッコいい。

(17) Open Arms (全米2位)
   マライアのカヴァーもこの際許そう。スティーヴとデュエットしてもいいんだよ。

(18) Lights (全米68位、後にライヴヴァージョンが72位)
   ほのぼのと、故郷を想う。

(19) Suzanne (全米17位)
 
  これにこじつけるとは、実に無理のあるずさんな企画というほかない。

(20) Only The Young (全米9位)
   やっつけ仕事のようにも聞こえるが、Scandal f/Patty Smyth ヴァージョンを聴くと、ニールのソロの素晴らしさがよーくわかる。

(21) Who's Crying Now (全米4位)
   哀愁系としては最強の完成度を誇る。終盤のギターソロの泣きはただものではない。
   有名な歌い出しの歌詞からいただきました。
   "It's been a mystery and still they try to see / Why somethin' good can hurt so bad"


(22) Chain Reaction (アルバムカット)
   "FRONTIERS" 収録だが、妙に印象に残るハードなテイク。

(23) Ask The Lonely (サントラ)
   無理やりつなげたような展開の強引さについ引き込まれる。

(24) Don't Stop Believin' (全米9位)
   アンセム系。中盤以降の盛り上がりぶりは感動的。まさにほとばしるギターソロ。

(25) Infinity (ALBUM)、全米85位
 
  研磨されきっていない原石のようです。

(26) Stay Awhile (全米55位、Good Morning Girl からのメドレー)
   "Departure" 収録。"Captured" にも入っていますね。

(27) Why Can't This Night Go On Forever (全米60位)
 
  否定疑問文で理由を問うタイトルがかっこいいという説もある。

(28) The Party's Over (Hopelessly In Love) (全米34位)
   Semisonic "Closing Time" が出るまではパーティお開きソングの定番だった。

(29) Faithfully (全米12位)
   ツアー中に、留守番中の妻宛てに書いた手紙のような構成。ジョナサン・ケインらしさがよく表れた壮大なバラード。

(30) Look Into The Future (ALBUM、全米100位)
   正直言って、初期の音は全然違うので気をつけましょう。(それはそれでよい)

(31) Be Good To Yourself (全米9位)
   これも幾分やっつけ系に聞こえなくもないが、バンドの勢いはさすが。歌詞の一部ごといただきました。

(32) Departure (ALBUM、全米8位)
   みずみずしいです。


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