Evanescence @ 渋谷AX



 2003年7月28日、超満員の渋谷AXにて。直前の週末に苗場でのフジ・ロックフェスティヴァルに出演するために来日したエヴァネッセンスが行った1回きりのクラブギグで、発売早々にソールドアウトになったもの。「ゴシック+へヴィロック+女性ヴォーカル」という組み合わせで2003年世界中のヒットチャートを荒らしまくっている彼ら、果たしてその実態は如何に?

 まあこの手の音楽に「バンド」としての実態を求めてもあんまりしょうがないと思うのだけれど、ヴォーカルのエイミーは張りのある声を終始聞かせてくれたし、他のメンバーたちもしっかりした技術を持っているようで、アルバムと寸分違わぬバックトラックを鳴らしていたのだった。だからライヴそのものは十分に成功と言えるのだろう。個人的には行儀のいいバックバンドの演奏が物足りなくて、もっとぶっ壊れるか、エイミーと張り合ってくれたら面白いなと思ったりしたのだけれど。個人的に一番ウケたのは開演前のBGMで、Europe や Bon Jovi、Scorpions など80年代メタルが立て続けにかかっていたのがカッコよかった。エヴァの音楽はある意味今日の「産業ロック」だと思うのだけれど、そのことを象徴するかのような選曲だった。ついでに言えば終演後に流された Radiohead "Everything In Its Right Place" も適切なBGMと思われた。

 多くのレビュワーが既に指摘しているとおり、エイミーは元気そのものだった。もっと陰鬱で動きの少ない、ステージ上に小山のようにそびえるゴシックロリータのような存在を勝手にイメージしていたのだが、実際には編み込みにした髪を振り乱しスカート・オン・パンツで所狭しと走り回る、ひどくアクティヴなパフォーマーだ。激しく身体を揺さぶり、くねらせ、腕を突き上げ、身体全体を使って歌を表現していた。個人的には少し違和感があったのだが、20歳そこそこの女の子ということを考えれば、裏アヴリル・ラヴィーンみたいな存在と割り切って観ることも可能だろう。暑い日だったこともあってエイミーも汗だくになりながら声を振り絞って歌っており、ペットボトルのミネラルウォーターを観客に撒き散らしたり、水を口に含んで吹き出したりしていた。ファンたちが争うようにその水に手を伸ばしていたのが印象的だった。

 1stアルバム "FALLEN" の曲を中心に、自主制作盤に収録されていた "Even In Death" やスマッシング・パンプキンズのカヴァー "Zero" なども織り交ぜてプレイ。もっとも、アルバム中でも気に入っていた "My Immortal" が聴かれなかったのは少し残念だった。コンセプトがはっきりした音楽だけに、楽曲のパターンが似通ってしまうのはある程度仕方ないのだろうか。1曲1曲はそれなりにしっかり作られているのだが、ライヴで通して聴かされると多少飽きてくる。そうしてみるとやはりシングルカットされた "Bring Me To Life" の出来の良さは際立っているのであって、ヴァースといいコーラスといい、"♪Wake me up!" の掛け声パートといい、実にうまく作られた楽曲だと言える。この掛け合いパートは元は存在せず、サントラに入れるにあたって手を加えられたと聞いて納得した。要するにこのバンドが長生きするために必要なのは適切なアレンジが出来る共作者/制作者だ。ゴスメタル+女性vo.の新奇性だけでは2枚目はもたない。早くも次作以降の展開が気になるライヴではあったが、何よりも「本年度最大の現象」として興味深く楽しめた。とにかく「今」観ておくことに意義のあるライヴだったといえる。

Evanescence Set List
1. Going Under
2. Haunted
3. Taking Over Me
4. Everybody's Fool
5. My Last Breath
6. Farther Away
7. Even In Death
8. Zero
9. Bring Me To Life
10. Tourniquet
11. Imaginary
12. Whisper

(October, 2003) Special thanks to おしょうさん

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