金管楽器の発音におけるベルヌーイ効果

ここでは、金管楽器の発音におけるベルヌーイ効果(Bernoulli effect)について述べたいと思います。
「触らぬ神に祟りなし」ということで、できれば触れずにすませたかったのですが、そうもいっていられないようです。

ベルヌーイ効果(Bernoulli effect)

ベルヌーイ効果とは何か、を式を使わずに誤解を与えることなく説明するのはかなり大変なようです。
  「水や空気などの流体が流れると、近くにある物はそちらに引きつけられる」
といった説明が多いと思いますが、この表現は間違いとまでは言えないと思いますが、かなり誤解をまねく表現だとは思います。 ベルヌーイ効果とは、単に、「流体が流れると、(その流線上で)静圧が低下する」ことです。 「静圧」が下がった結果、負圧(大気圧との差)によって物が引きつけられることになります。

やっぱり、うまく説明できてない気がするので、気になる方は流体力学の教科書を読まれるか、 あるいは、最近話題になった「飛行機がなぜ飛ぶか」議論しているページ (こことか、 もう少し詳しく知りたい場合はここなど) を、読まれるとよいと思います。 ずっとまともな説明があります。


金管楽器の発音におけるベルヌーイ効果

これまで説明したバジングの発音の説明には、ベルヌーイ効果は全く登場していませんでした。
前掲のバルブの種類の説明の図で、(b)と(c)が、 金管奏者の唇に相当すると言いましたが、 これらのバルブの振動原理にはベルヌーイ効果は、必要ありません。 とくに、(c)の(+,+)型バルブが、ベルヌーイ効果の影響で振動していると誤解されやすいですが、 (+,−)型も(+,+)型も、ともに、口内の圧力によって、バルブが開くという仕組みに違いはありません。 (+,−)型と(+,+)型の違いは、単に、バルブが開く方向が、流れ方向であるか、流れに対して鉛直方向であるか、 ということです。 言いかれば、バルブの開閉と「空気が流れていること」は無関係です。 (+,−)型も(+,+)型もともに、 単に、入り口側の圧力が上がれば開き、圧力が下がれば閉じる、というだけです。

したがって、もし、唇に抵抗(速度に比例する抵抗 dumper)がないなれば、バルブを振動させるのに、息は必要ないことになります。 最初の一瞬だけ、唇をちょっと動かせば、あとは、「唇の弾性」と「口腔内空間の空気バネ」を復元力として、 息を止めても、勝手に振動し続けるわけです。
しかし、実際には、唇は、かなり大きな抵抗(dumper成分)を持つので、せっかく始まった振動は、 外からエネルギーを供給し続けない限り、すぐに、減衰して止まってしまいます。 つまり、今まで述べたモデルでは、「息を出し続ける」のは、 唇の抵抗によって失われてしまう分の振動のエネルギーを「補給するため」ということです。

一方、ベルヌーイ効果は、「空気が流れると、物を引き寄せる」ということなので、 「息が流れ続けること」は、単にエネルギーを補給するという補助的な意味ではなく、 本質的に重要な意味を持ちます。
(「空気が流れると、物を引き寄せる」とは、「空気が止まってるときには、何も起きない」ということです!)

...以下、執筆中...
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last update : 2004/2/27

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