[sasakiの日記] より              2002/05/13 記

 One on One
   
 このジャケットの場所は確か講談社の社屋だったと思う。古い建物でカメラマンのタムジンが前からロケハンをして決めていたものだった。
 僕はいつもジャケットの写某撮影が嫌いで、何をどうしていいかわからず、ほとんど途方に暮れていて、その、途方の暮れ方を写真に収めるというのを旨としていたような気がする。カメラマンとすればなかなか気合いの入らない相手だったと思う。
 終わった後六本木の定食屋に連れていってもらった。
 何たって六本木だ。

 最初の「ほーぼー」は目黒にあるヤマハの事務所の2階。
 どっちにしてもロケ地にはあまり熟が入っていなかったと思われる。

 この2枚目を作ったときはまだ札幌と東京を行ったり来たりしていた時期で、もうすっかり有頂天だった頃だ。
 宿は渋谷の東武ホテルという所で公園通りを登ったところにあり、当時東京では一番ヒップな所だった。半月は東京、残りを札幌、全体的に見ると東京の方が多くなり始めていた頃で、休みの日は窓から一日中通りを歩く人を眺めていた。暗い。
 どうだ、僕は東京で一番流行っている所を根城に仕事をしてるんだぜ?暗い。
 もう百パーセント、天然の田舎もんで、陶然としていた。暗い。2点。
 この間友達とたまたまこの頃の話をしていたら、「あの頃のお前って結構感じ悪かったな?
 突っ張ってるって訳じゃないんだけど、妙に自信満々で。まあ、仕様がなかったと今だからぼんやりとわかるけど、どっちにしてもろくなもんじゃなかった。」、
 そう、多分ろくなモンじやなかったかもしれない。
 でもねえ、楽しくないと言うよりはムッチャクチャ楽しかったと言えた方がヨカッタと思う。なんたってサーファーにまでなってたんだから。

 このアルバムの頃からソロのコンサートもボチボチ始められるようになり、友達が言ったようにほんのりと自信みたいなものも沸き始め、幾分調子ぶっこき野郎へと変身を始めていく。
 バッキングメンバーもそろそろピアノ、八千代、パーカッション、アンディ檜山。ウッドベース伝法、の停電バンドが結成される。たぶん。
 停電バンドの名の由来は、電気楽器を使わないバンドなのでたとえ会館やコンサートホールが停電になっても真っ暗な舞台からはピアノ、ベース、パーカッション、そして唄が聞こえて来るという夢のような希望を託して付けた名前だった。が、一度も停電にあったことはなかったので真っ暗闇のなか、演奏が実現することはなかった。

 「一人コンサート」、ジッポのライター音を録るのにエンジニアーが凝りまくっていた。サルーンの雰囲気を出すために僕らはコップやティーカップを持ちスタジオ中練り歩いた。BGMの「君は風」までスタジオミュージシャンまで雇って作った。そこまでやるか?

 「だんだん」、この時期ケニー=ランキンやスティーヴン=ヴィショップ、アート=ガーファンクルが僕らの間ではよく聞かれていて、特にスティーヴン=ヴィショップの「ケアレス」は大のお気に入りで、あの雰囲気を意識してオケを作った。

 「セプテンバー・バレンタイン」、おり有るたびに言ったことだけど、最初のこの曲との出会いは悲惨なものだった。どうしてこの唄をディレクターは僕に唄わせようとするんだろう?って。僕にはこの歌詞がどうしても自分の体に入らなかった。ディレクターが僕の知らないところでオケを作っていて、用事があるといってスタジオに呼ばれ、一度聞かされ、練習用のカセットを貰い、次の日にレコーディングが待っていて、テイクワン一発でOKが出され、良いも悪いもなくこのアルバムに入った。
 後にも先にもテイクワン一発OKを唄入れでもらったことなどない。
 でもその後、聞いてみると本当にテイクワン一発の唄だった。僕は本当にこのときは人の唄を上手く歌っていた。
 もしかしたら僕はシンガーか?

 「心から」、本当に心から唄って肺が破れてしまった魂の唄だ。多くを語ればこの欄では語り尽くせないからまた今度にする。せつない恋の歌進行形。ワォッ!

 「便りにかえて」、今日、思いがけないところで久しぶりの人の名前を聞いた。久しぶりの素みたいな人で、この歌の主人公だ。もうすっかり悠々自適の暮らしを送っていて僕のことを心配していたという。この通り僕は元気に暮らしていますから安心してください。今度その豪邸でも見せてもらいにいきますので体だけは大事に健康に暮らしていてください。

 「尽きぬ想い」、大正時代のような詩が書きたいと思ったのがこの歌を作った動機で、そこはかとない気分は出たと思う。僕はこの歌詞は好きだ。誰が何と言っても好きだ。以上!
 
 
 
 
One on One
一人コンサート だんだん 鬱り気 セプテンバー・バレンタイン 心から 雨の日の想い出 夢でも 恋でも 望みでも 便りにかえて アンニュイ 尽きぬ想い
Discography