FABRIZIO BOSSO
 on JAZZCRITIC VOL.65

Schema Sextetの<tp>ファブリーツィオ・ボッソのソロ・デヴュー作品。
FABRIZIO BOSSO / FAST FLIGHT
(I:RED/RR 123287.2)
Recorded 24&25 Nov.1999,Bari,Italy
Fabrizio Bosso(tp,flg)
Rosario Giuliani(as,ss)
Salvatore Bonafede(p)
Giuseppe Bassi(b)
Marcello Di Leonardo(ds)
1/Fast Flight
2/Womans's Glance
3/My Life Express
4/Gibraltal
5/Actor & Actress
6/Minor Mood
7/Too Young To Go Steady
8/Brother's Song
9/In Walked Bud
10/Family Blues
11/Fast Flight(take2)

6月に絶賛したSchema Sextetのトラッペッター、ファブリーツィオ・ボッソ
のソロ・デヴュー作品。

結論から申し上げると、そのテクニック至上主義には「お上手よね」と感心
させられるし、『こんなことも出来るんじゃあ』という自己の全スタイルを
開示する姿勢も才気煥発と表現すべきなのだろう。
コンポーザーとしても優れた資質を持っており、曲単位で聴くと思わず引き
込まれてしまう作品ばかりだ。

ハード・バップ好きには、躊躇なく推薦しているし、複数のCDショップの試
聴機に入れてもらったところマイナー・イタリアジャズの無名選手としては
結構な売上げを記録した。

しかし、客観的に聴くと全面的には肯定出来ない。ディスク全曲を聴き通す
と非常に散漫な印象を受けてしまうのだ。
期待していただけに評価が辛くなっているのかもしれないが、聴くたびに其
の印象が強くなる。

ソロ・デヴュー作故に「自己抑制が出来なかった」のかもしれない。
だが、そのためにプロデューサーがいるはずなのだ。

このディスクの録音は、"Schema Sextet/LOOK OUT"の1週間前に行われてい
る。 Schema Sextetからトロンボーンがオミットされ、ピアノとドラムが入
れ替わっているので音色に違いはあるものの、両ディスクを比較すると、そ
の差異が「プロデュサー」の能力にあることが透けて見えてくる。

それは、ニコラ・コンティという今日的な時代感覚を持ったプロデューサー
とアルベルト・アルベルチの遺産を継承出来ずにいるセルジオ・ベスチとい
う保守的な視点しか持ちえないプロデューサーとの能力差なのだ。

ニコラ・コンティがイタリア・ジャズの温故知新というコンセプトを明確に
してアーティストをコントロールしているのに対して、セルジオ・ベスチは
無原則にアーティストを信頼したとしか思えないほどの粗雑なプロデュース
に始終している。哀しむべきは、デモテープのような無秩序な作品でありな
がら、前述したように曲単位では非常に優れた作品が記録されており、ファ
ブリーツィオ・ボッソの豊かな才能を思うと残念でならない。

この作品がジャズ・ジャーナリズムから低い評価を受けるとしたら、それは
セルジオ・ベスチの問題だろう。

<MEMO>
ファースト・プレスの入荷は2ヶ月近く前だったのですが、どうして、こん
なに紹介するのが遅れたかというと、ディスク・ユニオンの過剰な(通販対
策用)オーダーによって、全国のショップに満遍なく行き渡らなかったから
なのです。
こうした問題は、ひとりディスク・ユニオンを責める問題ではなく、全国の
輸入盤ショップ・ジャズ担当者の嗅覚の低下及び勉強不足にも問題があるの
ですが、それは、また別のお話です。
とにかく、今週セカンド・プレスがやっと入荷しましたので、遅ればせなが
らご紹介させていただきます。
音質的にもADD-24 BIT RESOLUTIONによって以前のようなRED盤にはないクオ
リティです。
<9/Nov./2000>

<MEMO・2>
さらに聴き込むとモンク作品の<9>におけるノン・アレンジ、<4>の初出であ
るタレンタインの"sugar"との解釈対比等を考えると、「首を傾げて360°」
的世界に突入する。こういうのは、プレイヤー以外の人は気にならないのか
もしれない。
<30/Nov./2000>

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