Paul McCartney & Wings
/ Band On The Run <1973>

おすすめ度★★★★☆


リードギタリストとドラマーを失ったWingsは、結局PaulとLinda、そしてDenny Laineの3人となってしまったが、それでもニューアルバムのレコーディングに取り掛かる。

そしてレコーディング場所に選んだのが、ラゴス.....Paulにとっては「アフリカ〜特徴的なリズム」っといった連想があったのだろう。時代的には元CreamのGinger BakeのGinger Baker Air Force何かが活躍していたからそこらへの横目使いかも知れない。

一般にマイペースでラヴソングばかり作ってるように見られるPaulだが、貪欲に流行を追いかけるここらのシタタカな部分も彼の大きな魅力だ。

実際スタジオはこの時期、ラゴスに移住していたというGinger Backerのスタジオを借り切って行われている。ここらはWings以前にGingerと仕事を共にしていたDennyのコネかも知れない。

サウンド的には最も懸念されたであろうドラマーの不在も、Paulによる「味気ないドラム」が見事にカヴァー。ココではアフリカのリズミカルな空気に助けられながら、不思議と溶け込んだようなリズムが刻まれている。

それどころか特に目立ったパーカッション奏者の起用も無いのに、何故か全体にアフリカの開放的な雰囲気がジワジワと伝わってくるから不思議だ。

バンド的においても、慣れない環境でのレコーディングにおいてもある意味追い込まれていたWingsの緊張感が伝わって来る名盤で、あれだけ張り合っていたJohn Lennonまでもが賛辞を贈ったというWings最高傑作です。

あ、久々に聴いてると25周年記念の2枚組リミックスCDが欲しくなってきたな....まだあるか?

 

〜特にお気に入りな曲達〜
(っていっぱいあってすんません^^;)

まずはこれ以上ドラマチックなオープニングナンバーは無いと言っても過言ではないBand On The Runで幕開けである。

前半の妙に重たいリッケンベースの音色に象徴される重苦しい展開を一気に払拭する、開放感いっぱいのアコギの響きには何度鳥肌を立てただろう......さらに追い討ちをかけるかの様な爽やかなスライドギターも気持ちを高潮させる。

PaulのRock組曲センスが爆発した永遠のナンバーだ。ちなみに前半と後半によるヴォーカルの使い分けも見事の一言しか出て来ないっス。

アルバム中最も真っ正面からパーカッションをフューチャーしているBluebirdは、Paulの抑えたヴォーカルと間奏のサックスの響きがとてもロマンチック。レコーディングスタジオの空気まで伝えるかの様なアレンジが光る。

シンプルな楽器構成でドンドン進んで行くMrs. Vandebiltも何だか好きなナンバー。前曲の美しさを意識的にぶち壊すかの様な汗臭さが何ともPaulらしい。ベースの音が太いです。

そして不器用なキーボードと重たいリズム隊がスワンピーな魅力を放つLet Me Roll Itも間違いなくアルバムのハイライトの一つ。発売当初はJohnへの和解ソングと言われたという歌詞もとても良心的。

また間奏の部分は明らかにカットされており、オリジナルはもっと長かったんだろうなぁっと想像力をかきたてられる。聴いてみたいな、それ。

Mamuniaはロマンチックな歌詞とサビでメロディアスになるベースラインがとても素敵なナンバー。隠し味的に使われているパーカッションや重厚でありながらしつこくないコーラスも魅力的だ。

そして間髪入れずに始まるNo Wordsは、イントロのPaul&Dennyによる歌い出しだけでこの曲の良さが保証されるような名曲。ストリングも配し、静かに盛り上がって行く展開力は素晴らしいの一言。Paulによるリードギターも印象的だ。

Picasso's Last Wordsは俳優のダスティ・ホフマン夫妻の前で即行で作り上げたというナンバー。その為かDenny Laineがリードヴォーカルを取っている。相変わらず彼のフォーキーなヴォーカルはとても魅力的だ。

サビでの妙なドラムや、JetやMrs. Vandebitのメロディが再び登場したりとアルバムも最後に差し掛かった所で様々な遊び心が出てきてる。特にそのJetパートからそのまま元の曲になだれ込む展開はとても美しい。

後半はどんどんエスカレートして行くこの展開力は、スタジオでの可能性をフルに生かして小品を名トラックに仕上げるPaulのセンスならではの場面。エレピやストリング、そして酔っ払いの声も爽快だな。

Nineteen Hundred And Eighty Fiveは全体をリードするピアノプレイとPaulの野太いヴォーカルが魅力だ。ハードなエンディングギターの後のタイトルナンバーの切れ端が何ともPaulらしい。

僕は基本的にどんなアルバムにも一貫したものを求めてしまうキライがあるが、この曲のセンスが原点かも知れない。Paulめ、お前のせいだったのか.....

さて、ココでも強烈なボーナストラックが収められている。まずはHelen Wheels。ココでの録音からの唯一のシングルカットで、プロモーションフィルムも安っぽくて曲調に合っていた。^^;

しかしアメリカではキャピトルからの要求でアルバムに収録される事になっている。ポップなR&Rナンバーだ。楽しい。

Country Dreamerは見事なカントリーナンバー。とても真似出来ない歌い回しとスライドギター、そしてノンビリした歌詞がとても心地良い。


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1 . Band On The Run
2 . Jet
3 . Bluebird
4 . Mrs. Vandebilt
5 . Let Me Roll It
6 . Mamunia
7 . No Words
8 . Picasso's Last Words
(Drink To Me)
9 . Nineteen Hundred        
                  And Eighty Five

〜Bonus Tracks〜
10 . Helen Wheels
11 . Country Dreamer

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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逆行に強いPaul
この窮地にこの名盤!
素晴らしい!!

(1999.12.12 再更新)

 

 

 

 

 

 

順路はこちら(工事中)
Venus & Mars へ!

 

 

 

 

 

 

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