The Kinks / Muswell Hillbillies <1971>

おすすめ度★★★★☆


度々レコード会社と意見の食い違いを見せていたRay Davisが、70年代を迎えて心機一転RCAに移籍したファーストアルバム。

60年代後期の様な強烈なコンセプト性は無いものの、イギリスの古き良き安酒場で鳴り響くかの様な一貫した音作りと文句無しの楽曲により本作を名作とする声は高まっている。

アルバムタイトルも実際にDavis兄弟が生まれ育った住宅街の名前が用いられ、その素晴らしいジャケットと共にMuswellの空気を僕の部屋まで届けてくれる宅急便CD。

内容の方はアメリカのカントリーやオールドタイムジャズといった伝統の音楽に、もはやKinksの独壇場とも言えるイギリス的味わいをブレンドしたモノ。

新鮮に響きながらも何処か懐かしい....そんな表現がピタリと来るアコースティックな味わいがアルバム全体を包み込む。

同世代のミュージシャンがアメリカの伝統音楽に魅せられて、我先にとそのルーツを吸収していた時代。その頃にRay Davisは自らのルーツをじっくりと、マイペースに見つめ直していたのである。それもまた、素晴らしいですね。

 

〜特にお気に入りな曲達〜
(ってほとんど全部だったりして...^^;)

アルバムは20th Century Manでじっくりとスタートする。アコースティックなブルースロックナンバーだが、後半はスライドギターや強烈なキーボードも入ってジリジリとMasewellな世界に引き込まれる。20世紀と言う時代に生きた自分を嘆く、彼独特の歌い回しも光っています。

物凄い邦題が付いてしまっているAcute Schizophrenia Paranoia Bluesは、ジャズテイストに乗って展開されるRayの世界にドップリである。ピアノとホーンを中心としたサウンドが何とも素晴らしい。

Holidayは我々労働者のテーマソングだ。何てノンビリした歌なんでしょうか。何て僕らの心境を反映した曲調なんでしょうか...そう、今日は休日なんです....偉大な曲だなぁ。

Skin And Boneは、何ともコミカルなポップソング。初期のKinksを想わすタイトな曲調に心が和みます。ここらの味わいを忘れてないのも彼らの強みです。

Alcoholは悲し気に響くホーンやアコーディオン等、Rayのアレンジが光りまくっている名曲。完全なジャズアレンジの中で、イントロから中心に立つアコギの存在がKinksらしさを漂わす。

役人への不満を歌ったComplicated Lifeも名曲だ。語り調の歌い回しからDaveのギターまで、詩の内容に起因したサウンドが微笑ましい。特にココでのDaveのギターは大好きですね。

実際のDavis一家のおばあちゃんの事を歌ったというHave A Cuppa Teaは偉大なるお茶讃歌。こんな曲にはカントリーテイストを吸収したDaveのギターがまた絶妙です。こんな曲を堂々とやってのけるのが彼らの偉大さですかねぇ。

Oklahoma U.S.Aは、今にも壊れそうな家に住む女性の夢を歌ったナンバー。華麗なピアノと優しく響くアコギの味わい、そして孤独を感じさせるアコーディオンと、どれもが美しく響いてます。

タイトルナンバーのMuswell Hillbilliesは、何と言ってもキラキラと輝いているかの様なDaveのギターでキマリでしょう!故郷への哀愁をこれほど爽やかに、これほど誇り高く歌ったRay Davisに尊敬の意を表しますね。


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1 . 20th Century Man
2 . Acute Schizophrenia  
                   Paranoia Blues
3 . Holiday
4 . Skin And Bone
5 . Alcohol
6 . Complicated Life
7 . Here Come The People In Grey
8 . Have A Cuppa Tea
9 . Holloway Jail
10 . Oklahoma U.S.A.
11 . Uncle Son
12 . Muswell Hillbillies 

 

 

 

 

 

 

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70年代のKinks!
それも最高さ。

(2000.1.10 再更新)

 

 

 

 

 

〜ちょっと禁断のブート話〜
Kinks / Kinks On Holiday

72年にロンドンレインボーシアターで行われたLiveの模様を収めたブート。

相変わらず有名曲を客に強引に歌わせようとするRayのパフォーマンスは
鼻にかかるが、次作で収録されたLiveパートのサウンドがタイト過ぎて
好きになれなかった僕の、70's KinksのLiveサウンドの印象を一変させた作品。

上記紹介作からの貴重なLiveバージョンを始め、
ピアノやホーン隊を従えたサウンドは見事のひとことで
特に女声コーラスも加えたWaterloo SunsetoやVillage Green〜の美しさは涙モノだ。

また60's作品も聴かれ、You Really Got MeやTill The End Of The Dayはもちろん
Dedicated Follower Of Fashionなんかもナイスなアレンジで収録。
さらにこの時期になってもGood Golly Miss Mollyを熱唱してる弟君も可愛い。

なお、後半にはBBCに残されたスタジオライヴ(?)音源も収録。
なんかの映像ブートと同じ音源らしいけど、こちらも貴重だ。

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