Paul McCartney / McCartney <1970> |
オススメ度★★★★ |
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既に崩壊状態にあったと言われる1970年のBeatlesは、遂にPaulの「脱退宣言」を期にその活動中止状態を世界中に知らしめてしまう結果となった。 後期Beatlesの牽引役となり、最後までグループの可能性を信じ、愛し続けた男が自らの宣言でその終止符を打ってしまった事のショックは計り知れないものがあり「最も愛していた仕事」を失った彼は、スコットランドの農場に引きこもり、家族と傷心を癒す生活を送っていた。 一時は「物理学者になる事も考えた」らしいが、流石に無理だと思い直し(思うだけで大したモン)愛するLindaさんに見守られながら一人宅レコの正真正銘のソロアルバムの製作を開始したのである。 それが本作、元Beatles、Paul McCartneyの1stソロアルバムである。 アルバムはBeatles時代の完ぺき主義者Paulの見る影も無い程のシンプル極まりないサウンドに覆われ、その味気の無いドラミングも手伝って当時の彼のどこか落ち込んだ様な心境をそのまま刻み込んだ雰囲気が味わえる出来上がりとなっている。 しかしインスト曲が4曲も含まれていたり、シンプルなサウンドと言えば聞こえが良いが、正直骨組みだけのようなデモテープまがりの仕上がりに当時の評論家から酷評を受け、発売日もBeatlesの「Let It Be」にぶつけるなどイタらん事をしてしまったPaulはBealtesファンからも少なからず批判を受ける結果となった。 (但し、Paulの思惑は成功して興行的には、売れた) 当時はRingoにまで蹴られた本作の魅力は、逆に近年になって評価が上がりUnpluggedで自ら本作から3曲ものナンバーを取り上げてから90年代のLiveでも度々取り上げられるに至り、2002年の最新Liveでも4が引き語りコーナーで歌われている。 またRock通で名を馳せているキャメロンクロウとトムクルーズが組んだ「ザ・エージェント」では本作から6が何と取って置きのラヴシーンで使われ、その素晴らしい魅力を改めて知らしめる結果となった。 全体として決して名作とは思えない本作であるが、Paulファンにとっては彼の当時の苦しみ、痛み、そしてまだ標準も定まらない明日へのむやみな希望に溢れた大切な1枚だ。いつまでも離したくないですね。
〜特にお気に入りな曲達〜 アルバムは当時の彼の唯一の心の支えであったであろうLindaへの想いをそのまま歌にしたThe Lovely Lindaで幕を開ける。彼のソロとしてのスタートは正にこれしか考えられなかったのであろう。本を叩いているようなリズムも楽しい、宅レコの極み。 Elvis調のヴォーカルが男っぽさを匂わすThat Would Be Somethingも好きなナンバー。これ以上ないくらいにシンプルでカッチョ悪いドラムとPaulの「口ドラム」がダサく絡む辺り、本作の魅力を端的に現しているのではないのでしょうか??何となく癖になる魅力を持ってます。 Every Nightは近年のLiveでも取り上げられる本作のハイライトナンバーのひとつ。シンプルなコード進行からは想像できない程に感受性豊かに広がる世界が素晴らしい。アコギとモコモコしたベースライン、それからPaulのファルセットヴォーカルの絡みが本当に美しい出来上がりである。 90年代に入ってのUnpluggedで聴かせたアカペラパートも忘れられない個人的なPaulソロのベストナンバー。 んでドリフの場面変更でありませんが「はい、バック交換!」ってなノリの小品Hot As Sun / Glassesもお気に入りのインスト。79年のWings最終ツアーでも取り上げられた彼の名インスト。2曲立て続けに並ぶ取って置きの名曲4と6の間を保つ絶妙の位置取りも彼のセンスの極みですね。 そして続くJunkも何処までも美しい小品だ。歌詞とは対照的に寂しげに響くサウンド作りが心を打つ。どこかJazzっぽい音作りも密かに彼の懐の深さを知らしめる。名曲ですな。 Man We Was LonelyはPaulとLindaの初めてのデュオ曲で、密かにお気に入りだったが2001年に発売されたソロのベストにも自ら選曲していたのには少し驚いた。フニャフニャしたギターソロとまるで歌っているようなベースラインが印象的。PaulとLindaのヴォーカルも味わい深い。 B面に入ってちょっと慣れて来たのか、冒頭を飾るOo Youは初期Wingsにも通じるファンキーな味わいだ。シンプルな歌詞をファンキーに歌い上げるPaulのRockシンガーとしての面目躍如といったところか。当然のお気に入りナンバー。 アルバム中唯一、元Beatlesという肩書きが相応しいMaybe I'm AmazedはWings時代も通じて現在に至るまでもLiveの定番曲として君臨する名曲。パワフルなヴォーカルと途中から入るチャカチャカしたリズムギター、そしてスワンピーなギターソロまで、その凝った作りは素晴らしいのひと事だがこれだけシンプルな曲の並ぶアルバムの中でも違和感を放つ事無く並んでいる佇まいが溜まらない。 いつまでもこの曲を歌い続けるPaulであって欲しい。そう願うばかりです。今回の日本公演でも聴くことが出来て感動しました。
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1. The Lovely Linda
傷心のPaulを救ったのは ええのぉ..
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(2002.11.24更新)
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