Bob Dylan / Blood On The Tracks　<1975>

おすすめ度★★★★★

73年9月に行われたニューアルバムの為のレコーディングはわずか3日間で完成し、そのプロモーション用テープは各メディアから発売前に大絶賛を浴びる評判があがったものの何故かDylanは再レコーディングを敢行。

発売を2ヶ月を延ばしてまで行われた再レコーディングは、実に収録曲の半分を数える楽曲で行われており、ココではややロック寄りのサウンドが注入されたとの事である。

いずれにせよ完成されたアルバムから立ち込めるその味わいは最高で、山場となる場面こそ不足いるものの個々の楽曲の素晴らしさ、全体を通した後味の爽やかさは彼の多くのアルバムの中でも群を抜いている。

またアルバムを包み込むバックの押さえの効いた演奏も最高の境地。本作の楽曲の素晴らしさを引き立てる落ち着いた立たづまいは素晴らしいの一言だ。それに乗ったDylanのヴォーカルも絶好調。

60年代中期の時代を切り裂くようなギラギラしたオーラは望めないものの、ドッシリと腰を添えた懐の深い素晴らしきアメリカンロックが堪能できる永遠の名盤。いつまでも浸り続けていたいね。

〜特にお気に入りな曲達〜
（っていっぱいあってすんません＾＾；）

アルバムは名曲Tangled Up In Blueで軽快に幕をあける。優しく響くアコギのカッティングに押さえの効いたブラシのドラムが絡むR&Rスタイルのナンバー。

Dylanはこの曲を1枚の絵のようにしたかったと語っている。次々に折り重なるように展開されるアコースティックサウンドから確かにそのニュアンスが伝わってくる。アルバム全体の素晴らしさを予感させるオープニングだ。

男女の別れの瞬間を次々に切々と歌い上げるSimple Twist Of FateはDylanの声とハーモニカが悲し気に響く涙モノのナンバー。表情豊かなDylanのヴォーカルにしばしウットリである。ツボを抑えたメロウなベースラインも素晴らしい。

数ある彼の作品の中でも個人的なフェイバリットナンバーのひとつ。寂しい夜はこの曲を聴いて涙を流すのさ。

You're A Big Girl Nowも名曲。まるで歌っているかのように絡み合いながら感情を吐き出すアコギの悲し気な音色が何と言っても素晴らしい。そして溜まりかねたように響き出すハーモニカが入る瞬間は鳥肌モンですね。

くだらない噂話に流される人々への怒りを歌ったIdiot Windは、感情を表現したようなキーボードが縦横無尽に鳴り響くロックナンバー。荒々しく歌い上げるココでのDylanのヴォーカルにも注目である。

フォークタッチに展開するYou're Gonna Make Me Lonesome When You Goもナイスなナンバー。初期を思わす曲の展開にひとひねりを加えるメロディアスなベースラインが魅力だ。

Meet Me In The Morningはファズをかけた派手なスライドギターが注目のブルースナンバー。ココらの気の効いたサウンドコンポ-サー的な魅力は、現在も受け継がれている彼の素晴らしいセンスの象徴だ。カッチョ良いぞ！

ちょっと聖書を思わす内容だと言うShelter From The Stormは至高感の漂うフォークタッチのナンバー。繰り返し語りかけられるタイトルの詩が優しく響き続け、その詩の世界の風景とそれを見守るようなDylanの表情が目の前に広がる。

ラストを飾るBuckets Of Rainはブルースタッチのラブソング。浮き沈みを繰り返すアコギの響きと優しいDylanのヴォーカルが終始耳から離れない。歌いまわしも見事の一言で、3分半弱で終わってしまうが後味の爽やかさは最高だ。ん〜、堪能した。ええアルバムだね♪って感じ....

1 . Tangled Up In Blue
2 . Simple Twist Of Fate
3 . You're A Big Girl Now
4 . Idiot Wind
5 . You're Gonna Make Me     
         Lonesome When You Go
6 . Meet Me In The Morning
7 . Lily, Rosemary And   
           The Jack Of Hearts
8 . If You See Her, Say Hello
9 . Shelter From The Storm
10 . Buckets Of Rain

再びキャリアの頂点に
立とうとするDylan

ココからの積極的な活動ぶりは
現在も続いている