IRISH PIPE by 原口 豊明

 今日はアイリッシュ・パイプという楽器について簡単な紹介をしてみたいと思います。
 まずは簡単な歴史から。アイリッシュ・パイプはアイルランドで改良され使用されているバグパイプです。みなさんがバグパイプという言葉から連想するのは、スカート(本当はキルトと呼ばれる民族衣装です)を身に付けた人達が、列をなして演奏しているモノでは無いでしょうか? このみなさんが連想されるバグパイプは、スコットランド高知で使用されているバグパイプで、ハイランド・パイプ又はスコティッシュ・パイプ、スコティッシュ・ワー・パイプと呼ばれているモノです。アイルランドでも。今から200年ほど前には現在の様なアイリッシュパイプは存在せず、スコットランドのバグパイプと非常によく似た、アイリッシュ・ワー・パイプと呼ばれるバグパイプが使用されていたのですが、スコットランド、アイルランドは当時、イングランドの支配下におかれていた為、元来、武器の一つであるバグパイプの演奏も両国では禁止されていました。そこで、アイルランドでは大きな音を持つ儀式、戦場での使用を目的とした屋外専用のバグパイプの使用が減り、代わって室内で演奏できる種類のバグパイプが使用されるようになりました。
 それでは、アイリッシュ・パイプと他のバグパイプとの違いについいて、あげてみます。室内で使用されるようになったアイリッシュ・パイプは、次にあげるような改良を受け、現在に至っています。大きく分けて構造的な部分と演奏法の2つの改良があげられます。
 構造的な面では、まず最初に、それまで口から空気をバッグに吹き込んでいたのを、脇の下に挟んだふいごを使用し、空気を送り込む様にしました。このようなふいご式のバグパイプはイングランド、スコットランドでは沢山の種類が在るので、いきなりアイリッシュ・パイプの原型が出現したのではなく、これらふいご式バグパイプから進化したと考えた方が自然かもしれません。日本でバグパイプと言えば、先ほどのハイランドパイプのイメージが強いため、ふいご式のバグパイプはあまり一般的には知られていないようです。
 ところで初期に使用されていたアイリッシュパイプは、現在の物よりもさらに低い音域で演奏されていたので、旋律を演奏するチャンター管のほかに一定の音を出すドローン管は、チャンター管の音域に合わせてかなり長い管になり、その為、これらドローン管は、ハイランドパイプのように上に向けてではなく、演奏者の膝の上に置かれて演奏されるようになりました。
 膝の上にドローンが置かれるようになると、レギュレータと呼ばれる、簡単なハーモニーを付加する3本の管がドローン管の上に追加され、こえrで、ほぼ現在のアイリッシュ・パイプの形となります。
 次に演奏法についてですが、室内で使用されるようになると、必然的に他の楽器と演奏するようになるのですが、そこで大きな問題にぶつかります。まずは、音域と音の切断に関してです。基本的に一部の例外を除いて、バグパイプの音域は狭く、だいたい1オクターブ位が標準的なのですが、これでは他の楽器(フィドル、蛇腹系、笛等)との演奏が難しくなります。
 さらにバグパイプは永続的に音を出しておきたい欲求から生まれた楽器の為、完全に音を止める構造も持っていません。このためハイランド・パイプでは気の遠くなるような厳密に整理された装飾音を、切りたい音と音の間に挿入し、音を切る演奏法を行います。アイリッシュ・パイプではこれら2つの問題、音域と音の切断に関し、次のような方法を用いて克服しました。みなさんが笛を吹くとき、少し強く吹くと(この様な動作をオーバーブローと呼びます)簡単に音が裏返りますが、バグパイプの場合いったん空気をバッグに溜めてから各バッグに接続されている管に送られる為、オーバーブローによってオクターブ上の音をだすことは可能です。(ただし一部のバグパイプでは、脇に抱えたバッグを強く押さえる事によって、2オクターブの音程をコントロールするパイプも存在しますが…)
 アイリッシュ・パイプの場合、2オクターブ目に存在する音を出す場合、一旦チャンター上の全ての指穴を指で塞ぎ、チャンター管の先端も、パイパーズエプロンと呼ばれる膝の上にひいた皮の上に押しつけた後、目的の音を出す運指を行うと同時にほんの少し脇に抱えたバッグを押すことにより、先ほどのオーバーブロー状態を作り出し、2オクターブにわたる音域を作り出すことが出来るようになっています。
 又、音の切断に関しても、アイリッシュ・ミュージック特有の各種装飾音を使用し切断する方法と、完全に音と音の間に無音状態を作りたい場合には、先ほどのようにいったん全ての指穴を塞いでから、目的とする運指に移行する方法を使い分けながら実現しています。
 実際の演奏時には、他に様々なテクニックを瞬時に組み合わせ演奏を行います。これらテクニックの組み合わせ方、音と音との無音状態の有無で、クローズスタイル、オープンスタイルと呼ばれる演奏法があるのですが、これら、より詳しい事については、又の機会にしたいと思います。
 以上本当に簡単でしたが、アイリッシュ・パイプの概要説明を終わりたいと思います。
関連リンク-->>Tokyo Uilleann Piper & Uilleann Pipes Page

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