「あーやだなー寒いなー」「クリスマスイブだっていうのに〜」なんて頭の中でぶつくさ言いながら、薄暗いゴミ置き場の扉をあけた。当時、俺は窓ガラス清掃のバイトをしていた。その日は8階建のビルの窓ガラスを一人で掃除する、といういわゆる一人現場だった。
屋上には水道が無く、1階のゴミ置き場で水をくんでから仕事が始まるのだ。そのゴミ置き場はコンクリートの壁にしみついてるのか、冬でも臭う。ゴミの日まで、そこにキープしているからなのだろう。そこのビルの社員でさえ鼻をつまんでゴミを捨てにくる。
そのゴミ置き場は、そこのビルで日勤清掃をしているおばちゃんの控え室でもある。屋上で着替えをすませ、ゴミ置き場の扉を開け、電気をつけた。
すると、どこからか、
♪ジングルベ〜ル♪ジングルベ〜ルのメロディーが流れてきた。
「え?」俺は一瞬耳を疑った。なぜか何度もまばたきをしながら辺りを見回した。
すると、ここを控え室として使っているおばちゃんの、私物が置いてある小さい棚に、ハガキよりもひとまわり大きい電報のような物が立て掛けてあった。そのジングルベルのメロディーは、どうやらその電報から流れているようだった。
しかも、光に反応するようだった。
しかめてた眉と目が、やわらかくほころぶのを感じながら俺は、電気を何度もつけたり消したりした。臭いも寒さも包み込んでしまう、そのジングルベルを聴きながら何度も...この臭いゴミ置き場にだって、クリスマスはやって来るんだよーって。おばちゃんの声とやさしさとほんのちょっとの寂しさを感じた。
おばちゃん粋だね〜ありがとう!乾杯〜!って、仕事しなくちゃ、、、
とってもあったかい日でした。
某カレー屋さんでカレーを食べていると、後からお婆さんが入ってきて、席に着いた。
やはりこういった店(安い、早い、うまいの三拍子そろった様な店)はなれていないらしく、メニューに指を立ててとまどいぎみでおなかと相談中って感じです。まだ、大して忙しい時間帯ではないのに、昼の戦争にそなえてか、やや目尻をつり上げている様子の若い女性店員が、せかすようにお婆さんの前に立っている。お婆さん「あの...このコロッケカレーください」
店 員 「辛さが中辛、辛口、マイルドがございますが」
お婆さん「...まろやかに」
店 員 「マイルドですね。ありがとうございます」あ〜まろやか。なんだかいいな。
まろやかな日でした。