全17話(昭和50年6月6日〜9月27日)

当時とうとう時効を迎える事になった戦後最大の強盗事件、通称「三億円事件」を
モチーフにしたテレビドラマ。

演出は「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」の久世光彦、脚本は「太陽を盗んだ男」
「青春の殺人者」の監督&「濡れた荒野を走れ」のシナリオの長谷川和彦。
キャストは三億円犯人に沢田研二、脇を固める久世ドラマ常連の藤達也、
荒木一郎等豪華メンツ勢揃い。だが、未だかって一度も再放送されたことがない
伝説中の伝説のドラマである。

これを見てジュリーの真似した人間は数知れずで(筆者も例外でない)
最低筆者の知ってるところではし***とか東**さん(本人談)とか結構周りにおり、
当時ジュリーがファンッションリーダーであった70年代という時代が実に思い出す度
懐かしくてしょうがないのだが……(また余談ではあるがジュリーにならってショーケンも
当時のファッションリーダーであり悪魔のようなあいつの真似をしてたようなお調子者は
傷だらけの天使の修ちゃんの真似をしてた…大体しゃべり方が水谷豊のマネとかメンビギの服を
中学校で私服として着るとか、高校になったら前略おふくろ様のモノローグのシャベリを
真似たりとか……、そういう意味では……ジュリー、ショーケン、優作ってのは…分りやすい
70年代の三大シンボルであったという気がする今日この頃です……ってお前が真似してどうする!

……の脚本表記にこだわるのは倉本聡。あの分かる人しか分からない傑作映画
「ブルークリスマス」の脚本家!!!!!!!!!
敗北という文字には何故「北」という文字が入ってるかを追求した偉人である。
(北の国からとか……東芝日曜劇場でよくやってました。だが当然「悪魔のようなあいつ」には無関係)

キャスト紹介

可門 良(沢田研二)

「クラブ日蝕」の専属シンガーでコールボーイ(ようするに売春夫)。
前職は荒木一郎のバイク修理屋&尾崎紀代彦のバンドボーイ。

そんでもって三億円事件の犯人。

野々村修二(藤達也)
「クラブ日蝕」のオーナーで元警察のエリート刑事。今では横浜の裏の顔役。
沢田とはモ−ホ−関係にあるような設定であり、やってる事はかなりエキセントリックで
「時間ですよ」とかでみせたシブい演技にストレンジな味を追加したキャラになっている。
サントラ(廃盤!)で聞ける修二のテーマ(モーホーのテーマ)は結構泣ける。
野良猫ロックからこの頃のこのキャラに変わってからはレコードも出した
(ジャケデザイン横尾忠則!)がどれもドがつくド演歌であった…
白戸警部(若山富三郎)

三億円事件を追い続ける刑事。汚い事もOKのダイナミック派。
メキシカンハットをかぶって現れる等お茶目な面もある。

八村八郎(荒木一郎)

当時東映のスケ番映画とかその手の映画に出まくっていたシンガーソングライター
不良性感度は強いのだがいかんせんダメ人間というキャラが爆発。
元レーサーでバイク屋の主人。

マージャンは弱い。

山川静枝(篠ヒロコ)

看護婦。沢田に惚れてる。実生活でも70年代は悲惨で(自殺未遂等)
80年代に改名(ひろ子)してからはツキが戻って今では伊集院静の嫁。

すべての回に登場するが衣装は白衣か裸しかないという極端な設定。
最後も当時の実生活のように悲惨であったのは
言うまでも無い。

八村ふみよ(安田道代)

荒木の妻。沢田にレイプされて子供を身ごもるが最後は悲惨な運命に…
どんどん人間が壊れていく様を怪演した。

後にメンビギ大楠社長夫人となり大楠道代と改名。

これも70年代の因縁だろうか……?謎だ…。

日夏恵い子(那智わたる)

元藤達也の嫁で高級パン助。フィアットを乗り回してるが
豆腐屋の二階に下宿中。本人は元宝塚。

ノノ(谷口世津→関根世津子)
無職知恵遅れの少女。廃漁船に住んでいる。脱ぎを要求されたからか途中で役者がいきなり
交代。そういえば昔はこういう若い娘さんが庭先でタライに入って裸で行水してたもので
あったが(夏の風物詩)最近はめっきり見なくなりましたねえ…そういう人がいなくなったわけではなくちょっとおかしい人は普通に増加中と思うが……
(21世紀の精神異常者!!!)
いずみ(三木聖子)

沢田の妹。事故で足が不自由。血のつながりはない。

「三枚の写真」「まちぶせ」が代表曲のアイドル。
ただし70年代限定。

類似アイドルに栗田ひろみがあります。

ばあさん(浦辺粂子)

どこまでが地でどこまでが演技かわからないキャラが爆発。
やってることは「いただきます」と全然変わらない…

香川(デイブ平尾)
藤達也のパシり&バーテン。お調子者&軽いキャラだが本人はコワい人。
元ゴールデンカップス。
劇中歌(みんなで歌う曲)「ママリンゴの唄」が良かったのでうちでカバーしようか
と思ったが準備不足の為挫折。次はやります。
傷だらけの天使では修が亨を夢の島にドラム缶につめて捨てた時に流れた名曲「一人」
の歌もこの人。(ミュージックファイル盤では井上尭之バージョンにチェンジ)
オカマやくざ(伊東四郎)

とりたてのキビしいオカマしゃべりの長髪ヤクザ。現在見られる
シブさはまったくなく「見ごろ食べごろ笑いごろ」のベンジャミン伊東の
キャラではないかと思われる。

久世ドラマ常連(ムー)ではあるがここではまったくその印象はない。

右川&左川(高田光泰&岸部修三)
まだ当時は井上バンドのベーシストであった岸部が初めて役者に挑戦。しかも笑いを取る役。
白の上下に黒シャツ。紅白のボーダーの靴下にロンドンブーツに関西弁。個人的にはカッコいいんだがなあ…
日本のブッカーT&MG'S こと井上尭之ウオーターバンド在籍中のベースプレイの歌うような
フレーズはやっぱりいいです。最近ウタものを評するのによく使われる「歌っているような
プレイ」って表現はこれに比べれば全然ダメですよ全然。
名曲「花・太陽・雨」の作詩家でもあるのにこのキャラはなあ…
どっちかいうと最近の「新・仁義なき戦い」(布袋&トヨエツの方)の
ヘタレ組長のキャラだな… タコ八郎のヤクザの子分キャラのルーツでもある。
矢頭たけし(尾崎紀代彦)

元ロック歌手。今はおちぶれてヤクザ系キャバレーのナツメロショー要員。
こいつもマージャンが弱い

王(細川俊之)

裏家業専門の中国人。キャラ的には「さそり701号怨み節」の児玉警部。
陰湿で残虐でヤな性格。
しかも表面的スタイルはもっとビンボー臭さにみち溢れている。
当時すべて怪しい人はすべて中国人といわれていたが
(映画だと金子信雄とか小林昭二とか…)
それをステレオタイプで表した怪演が何ともGOOOOOO!

マキ(長谷直美)

でこれが細川の妹役で暴走族。若い!かわいい!!!!
年いってどんどんダメになっていった気が…
許せて「大追跡」「俺たちは天使だ」までかなあ…

もうその他もろもろの「濃い」(最近この言葉を簡単に使う節があってこういう言い方をする
人は安易に信用できないのだが、これは本当に濃すぎる)メンツによる背徳と愛と閉塞感と怒りに
みちみち溢れたスタジオ(え!?)ドラマが「悪魔のようなあいつ」である。

伝説の久世スタジオドラマ

久世光彦といえばスタジオドラマであるのはいうまでもない。全部そうなのだから。

「時間ですよ 昭和元年」のあの店先とか路地の感じの美術は筆者の世代の人間には一種の
既視感を覚えるものである。
(思い出すのは路地裏で樹木希林が若者に「もしもしお兄さん、ここで立ち小便してはダメですよ」
と声をかけると振り向いたらグラムロックスタイルのムッシュが大写しになり突然ロック演奏が始まり
盛り上がりをみせて突如坂上二郎が乱入するというわけがわからんスタイルを炸裂させてた印象が強い…
時代設定は昭和初期なのに……)

長谷川はスタジオドラマでやることは最後まで難色をしめしていたが、
久世は「ロケでやると画面を押さえるのが難しい」との理由でスタジオでやりとおした。
最後に脚本で「夢の島」とかけばロケをやるだろうと思ったが、
そのラストシーンまでセットでやった久世には心底ビビったらしい。

(但し、強奪のシーンのみロケ。撮影は「濡れた荒野を走れ」の日活撮影チーム。シャープかつ素晴らしい
映画になっている。スタッフは三石千尋のスタントマンチーム。
そう、ノストラダムスの大予言でバイクのダイビングをやった人たちである。)

ロケやればそれなりの物も出来たろうにあえてスタジオでやった変な空間が
なんか新鮮でもあり、その新鮮かつストレンジな味こそが伝説の久世スタジオドラマなのだ。

原作は漫画

もともとは原作は阿久悠で作画は同棲時代の上村一夫。
でも4回で本編に追い付かれて結局オリジナルドラマになってしまったと長谷川和彦が言っていた。

結果的にジュリー主演の久世ドラマになってしまい、漫画とは最後は別物になってしまっていたのは
言うまでもないが、リアルタイムで見てたジュリーに思い入れの強い同世代の
筆者とかにすればそれでよかったのかもしれない…

閉塞観を感じる世間に向かって反乱を起こし、挑戦し、挑発するものの
その目的と動機は不明瞭で撃つべき対象がもはや限定できないまま迷走する現代の若者。
思いきりジャンプすればこの閉塞的状況から逃れられるのではないかと試行錯誤しもがく若者。
その世界観は映画「青春の殺人者」「太陽を盗んだ男」に受け継がれる…

そんな心意気は、20数年も経ってDVD発売になって再びハマり直して
今回のサードアルバムの基本コンセプトにして
しまった筆者にも引き継がれたのであった………

蛇足だが新七人の刑事にもそれは見られる。(そこにも沢田が「一人ぼっちのビートルズ」「悲しきチェイサー」
で登場。「悲しきチェイサー」では役柄はまんま傷だらけの天使で、コンビを組むのが何と内田裕也!

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