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その7・ジオンの亡霊 【TEXT TOP】
〜GoodMorning,Vietnam!

ベトナム軍・地下トンネル。
それは忌まわしき戦争の爪跡。

俺達は恐怖とともにそこにいた。

傍らには銃剣をかまえた、老兵の姿。

その横では観光客と思わしきアメリカ人夫婦が震えている。

俺達は捕われた日本兵。

神よ、何故こんなことに?

それは数時間前に遡る・・・

ホーチミン滞在4日目。

この日オプションでついてくるセーフティーなツアーもそこがつき、俺たちは現地の安ツアーに申し込みをしてしまっていた。

そのツアー会社の名前はシンカフェ。

まるで喫茶店のような名前が俺たちの不安をかきたてる。
しかし背に腹は代えられぬ。
いまや観光名所となった地下トンネル、そして数々の寺院を巡って、昼食つきで8ドルというのは異常な安さだ。

ツアー参加者の集合時間は朝7時ジャスト。
誠実さが売りの我々日本人は6時50分にはこの寂れたカフェに到着することに成功した。

カフェの前には既に、見るからに旧式のオンボロバスが止められていた。

それはちばあきおの名作「キャプテン」において近藤の父親が運転していたマイクロ・バスと同タイプであることは明白であり
十分なメンテナンスがなされていないことは疑う余地もなかった。

されども今日は8ドルの冒険日。
俺たちの不満をぶつけるところなど、ない。

かくしてバスは走り出した。

ここで本日のツアーガイドである老ベトナム人が登場した。

この老人は奇妙な威厳を誇っており、それは思い返すとギレン・ザビに通じるものがあった。

そして彼は世界言語たる英語を駆使したガイドによりバスの中にうごめく多国籍観光客のハートをがっちりつかみ、やがてバスは地下トンネルにたどり着いた。

そこでギレンはあるフィルムを取り出した。

映し出されたのは何とベトナム戦争の惨劇。

そのフィルムには音声がなく、彼の説明とともに進行されていった。

ところが

開始当初は冷静に、かつ朗らかに職務を遂行していたギレン。
しかしフィルムが中盤に差し掛かった辺りから彼に顕著な変化が見られるようになってきた。

彼は顔を赤らめ、強く握りこまれた拳が小刻みに震えだす。

ついに彼はこう言い放った!

「リチャードニクソン!ファックオッフ!ファーーーーックオフ!!」

そしてこのエキサイトしきった老ベトナム人の傍らで、ある米国人夫妻が震え出した!

この時俺たちは全てを悟った。

この男は何とベトナム戦争の生き残りであったのだ!!

そしてフィルムを見ているうちにリチャード・ニクソンへの怒り、そして鬼畜米兵への憎しみが再び沸き起こってしまっていたのだ!

かくして戦争的な雰囲気を形成しつつフィルムは終了した。

気がつくと大佐の手には杖が握り締められている。それはまるで銃剣のようだ。
そして、その銃剣を前方に指し示し、大佐はこう号令した。

「GO AHEAD!!!!!(前進)」

そして俺たちはまるで訓練された歩兵のごとく、地下トンネルまで行進していったのである・・・・

 


アントニオ猪木とエンセン井上(右)                  いじわるダンジョン (SaGa2)
        

続く

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