その6・ルージュの伝言
【TEXT TOP】 〜GoodMorning,Vietnam!
「彼女に手紙書くわよーん」
そういってハヤブサ氏は絵葉書を取り出した。しかも、ベトナムの風景がプリントされていることからも俺が知らぬ間に現地で買ったものであることは容易に想像できる。
「おお、それは喜ぶね」
となあなあの返事をして就寝しようと試みた。しかし、彼はそれを許さなかった!
「お前も一緒にかくの!!」
「お前も親に書け、バカ!」
こうなるともう俺に彼を止める術はない。何せ彼は空手部出身であり、さらにサモハン・キンポーに心酔している。怒らせないほうが得策だ。
かくして俺は渋々、彼のハニーへの手紙を手伝う破目になった。
彼はまず、この手紙のコンセプトを明らかにした。
「この手紙を読み終えた時に、「なーに言ってんだか!」といってもらいたい!」
どうやら夕張メロン酒のCMにインスパイアされたらしい。
−ホーチミンの革命の風が僕らに吹きつけ、道端で新聞抱えたプエルトリコの少年はダイムを数えています。
もはや完敗である。何を手伝えというのか!
「二人で過ごしたあの灼熱の夜を、僕は忘れられません。街の片隅で愛を語り合ったあの日・・・」
次の日の朝、この完成した手紙を発見したハヤブサは激怒した!!
「お前、何書いてんだ、バカ!」
しかし寝起きが悪いことで有名な俺も簡単にひくわけには行かない。
「悪いけどマジでおくるから!」
そういってきかない俺の毅然とした態度を前にハヤブサ氏は態度を翻し、今度は懇願するようにこういった。
「頼むよ。彼女の親、板前なんだよ。こんなのおくって読まれたら俺、刺されるよ・・・」
彼は彼女の実家が寿司屋であることをいきなりカミング・アウトし低血圧の俺を説得しようと試みた。こうなるとサモハン・キンポーも、もはや形無しである。
それ以来ハヤブサ氏はオカマ言葉を使うのをやめた。
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