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無限懲罰房 第4話 【TEXT TOP】

下宿周りの土質は予想以上に硬く、一日で穴掘りを終わらせる事は出来なかった。
日を改めて用意したツルハシで土を砕かねばならなかった。幸いな事にと言うべきなのか、
私が穴掘りの作業をやっている最中は地響きは一切起こらなかった。

数十分ほど掘り続け穴が震源と思われる場所よりもかなり手前の位置で変化があった。
私がツルハシを大きく振り下ろした時、ガチンという音がしてツルハシが跳ね返された。
これまで砕いてきた硬い土とは明らかに違う音だ。
どうやら何かの金属に当たったようである。私は女将を呼んできた。そしてその金属の表面がよく見えるように、土を払って穴を横に広げてみた。
金属はかなりの大きさで、広げた穴はどんどん大きくなっていきやがて私の背丈を越え、10数分後その全貌があらわになった。

金属の正体は、両開きの大きな扉だった。

独特な風貌を呈しており、鎖と閂(かんぬき)によって頑丈に閉ざされている。
その作りからか、否今まで地面の中で埋まっていた事から察するに数百年前に作られたとも取れるかなり古い扉だったが、腐敗はそれほどしていなかった。
「遺跡なのかえ?」
私が言おうとした事を、横で見ていた女将が先に口にした。
確かにこんな場所に人知れず埋まっていた扉を見れば、遺跡という他考えられない。
しかし扉の作り、腐敗の状況などから考えても貴族や武士の時代のものとは明らかに違っていた。

事を察したのか、下宿の住民が何人か集まってきた。どの住民も驚いているのには変わりはなかったが、
恐怖で怯えたり物珍しそうに見たり文句を付けたりと、具体的な反応はさまざまだった。

ほどなくして見物に来た一人である虚弱体質の弾き語りの少年が、扉の隅に何かを見つけた。
鎖が絡みついた金属のプレートだ。土を払いのけるとプレートの表面には難しい楷書体で

「無限懲罰房」

と記されていた。

続く

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