佐藤正人の“音楽セミナー”


第4回 「基礎練習part1」

1 基礎練習のための準備
  練習するために準備するもの
  基礎練習やサウンドづくりのポイント
  合奏の基本となるアンサンブルとソルフェージュの向上のための個々の目標
2 3Dを使用した基礎練習
  ロングトーン
  チューニング
  チューンナップ.ウォームアップ
  リップスラー
  アンブッシュアの練習
  属7のアルペジオ
  半音階の練習
  「U.調の練習」

1 基礎練習のための準備
練習するために準備するもの
  • ハーモニーディレクター等ピッチ可変のキーボード類
  • 音を拡張するためのアンプとスピーカー
    (できればアンプは打楽器の場所や後方に聞こえやすい位置にも準備したい。
    一台の場所はできるだけ高目の位置にセット)
  • メンバー全員で見ることができる大きさのメトロノーム等。


基礎練習やサウンドづくりのポイント
  • 呼吸法(ブレスコントロール)の指導
  • 響きのある音色(一定の音量と正しいピッチに支えられていること)
  • 音色づくりの練習(ロングトーン等)
  • ハーモニー感やバランス感覚を育成するためのトレーニング
  • リップスラーやインターバルの練習等、アンブシュアの柔軟性(フレキシビリティを作る練習)
  • 各楽器の異なる調整を統一するスケールやアルペジオの練習
  • アーティキュレーションを統一するための練習
  • リズムの処理、アインザッツ、音の長さ、音型を統一する練習
  • フレージングの研究〜コラール等による総合練習〜
  • スタイルやアゴーギクの勉強⇒適切な速度やダイナミクスの設定、音型の処理他


合奏の基本となるアンサンブルとソルフェージュの向上のための個々の目標
  • 楽器の正しい奏法と知識を身に付けること。
  • イヤー・トレーニング⇒ピッチを聴き分け、音程感、和声感を修得すること
  • 視唱(奏)力を向上させること。
  • テンポ感(テンポキープを含む)、リズム感、拍子感を修得すること。
  • アタックやリリース等適切な奏法を身につけること
  • フレージング、アティキュレーションについて理解し演奏できること。
  • 基本的な呼吸法(ブレスコントロール)をマスターすること
    ⇒ブレスと音のスピード、距離感(ロウソクや風車等でイメージを持つ)
  • ダイナミクスのコントロール
2 3Dを使用した基礎練習
ロングトーン
ロングトーン注意事項
  • ブレスはしっかりできていますか、息の支えはどうですか
  • 音程は、正しくとれていますか、音程の感覚はどうですか
  • 姿勢は良いですか、アンブッシュアは安定していますか
  • 音量は、一定に保たれていますか
  • 発音は美しいですか、ていねいにタンギングしていますか
  • 音の処理は適切ですか、音に余韻がありますか
  • 息の出し方(圧力・スピード)は良いですか
  • 音色は美しいですか(響きがあるか)
チューニング⇒「良いイントネーションは正しい振動から」
●個々のチューニング
BassCl →Fg →B.Sax →Tuba →C・B →Eup →Trb
→Hr →(Trp) →T,Sax →A,Sax →Cl →EsCl
→Ob →Fl →Picc →Trp (セッティングによって変えても良い)
※ チューニングは個々に合わせますが、できれば1つの音だけでなく、 様々な音程や楽器の特性を考慮したパターンを作ってトレーニングも兼ねて行います。

●セクションのチューニング
(BassCl Fg、B.Sax)→(B.Trb,Tuba,C・B)→(Enp、Trb、Hr)
→(Sax、A.Cl)→(Trp)→(Cl、EsCl)→(Ob、Fl,Picc)等
低音域(BassCl、Fg、B.Sax、B.Trb、Tuba、C・B)
中音域(Eup、Trb、Hr、T.Sax)
高音域(A.Sax、Acl、Trp、A.Sax、Cl)
最低音域(EsCl、Ob、Fl、Picc) 低音から重ねて

チューンナップ.ウォームアップ(パート譜6p)
  • ブレスを揃え、ロングトーンと同様、支えられた真っすぐな息で吹くこと。
  • 低音や前のグループ、まわりを聴いて吹くこと。(バランス)
  • ていねいに発音し、出す音をイメージして(頭で歌って)吹くこと。
  • キーボード等に合わせて、歌って音を取ってから(すぐに)吹いてみる。
  • 金管はマウスピースだけで(木管は声でも楽器でも可)吹いてみる。
  • 呼吸や奏法の確認のために立って演奏する。(特に歌う・吹くの繰り返しは効果的)
※ この練習でテンポをキープするために、響き線を外したSDに♪を、BDやCymに4分音符をたたかせ、 ハーモニーの根音にティンパニーを加えると打楽器も参加できて良い

※ トレーニングの方法
自分がそれぞれの小節で第何音を受け持っているか確認する。
  • 主音(根音)は土台なので、まず、しっかり吹く
  • 第5音は主音を聴いて同等のバランスで吹く(5度の響き)
  • 第3音は両方を聴いてやわらかく間にとけこむように(やや低めに)吹くことを意識。
ハーモニーディレクター等純正調の出せるキーボードを使用してどれくらいの感覚か確認。 その場合も、「歌う」「演奏する」を繰り返すことは大変効果的。 さらに、お互いを聴くことと自分のパートの役割を確認するために分散和音でも練習。

第1音 第5音 第3音(7音)をテンポ(♪=120)四分音譜⇒60程度で2拍遅れで重ねます。 これも実際に「歌う」「吹く」を繰り返します。 倍音が聴こえるぐらい音に集中できるとかなり良い響きとバランスが得られた状態だと言えます。 (この練習でテンポをキープするために、響き線を外したSDに♪を、BDやCymに4分音符を弱くたたかせることと、 ハーモニーの根音にティンパニーを加えると打楽器も参加できて良い)

最後にもう一度最初のユニゾンから続けて演奏します。

ハーモニー練習の注意事項
  • 1音、5音、3音のバランスと音程を自分のパートの役割を考えて吹く
  • 低音の響きに重ねる。お互いの音を良く聴く。倍音も聴く
  • 同じ音のユニゾンがうならないように吹く
  • テンポを感じて吹く
  • 入り方をていねいに、ロングトーンの息で(一音一音タンギング)吹く
リップスラー(7p→譜例)
音域的には「3番」からはじめると良いです。3番のシラブルは
  • (TA―O―A―E―Hich―E―A)というイメージで高い音域は狭く、低音になると口の中は広くなります。
  • 最後の小節を半音下げて演奏し、(1番と6番は2小節)
  • さらに最後の小節から逆に上向型で1小節づつ(1・6番は2小節づつ)戻ってくる
    (結果として、ポジション 0-2-1-12-23-13-123-123-13-23-12-1-2-0の順になる)
等の工夫をすると良い。
また、こうすれば、金管のパターンは4拍子にはまれば、どのようなリップスラーのパターンでも応用できるので (一緒に演奏できる)他の様々なリップスラーの形も取り入れてください。

アンブッシュアの練習(パート譜8p)
この課題は木管楽器のアンブシュアの柔軟性をトレーニングするものです。 やや初歩の段階では難しい課題なので、最初はゆっくりと一音一音確認できる速度から練習をはじめてください。 練習で注意する点は
  • 息の支えとアンブッシュアを一定にすること
  • 下がっていく音階を意識して、レガートで演奏すること
    ※1〜3番は、下降する旋律を意識して、流れを大切に
    ※4〜6番は、上向する旋律を意識して
  • 音程が離れて難しくなっても急がないこと(一定の速さで)
  • アウフタクトをていねいに吹くこと(音程も注意)
  • 音域による音色のむらが無いように
  • 金管のハーモニーはていねいに発音。立ち上がりそろえること(テヌートで演奏)
があげられます。くれぐれも「アンブッシュアこわし」にならないよう注意しましょう。 初心者は、音階の音だけを吹かせても良いと思います。

属7のアルペジオ(アーティキュレイションと音型の練習も兼ねて)
● 一回目は楽譜どおりに演奏します。木管は4つの音にるスラーがかかっているので、 初めの8分音符はていねいに発音します。また、金管はハーモニーを十分響かせます。
● 二回目は木管のアーティキュレイションと金管の音型やリズムを変化させます。 一回目と二回目が「同じ速さ」「同じ音量」で演奏できるように (テヌートが遅くなったり、スタッカートが急いだり、音が小さくなったりしないよう に)金管ものばしている全音符のとき、テンポを感じていることが大切です。

半音階の練習
アーティキュレーションを応用して練習すると効果的です。 また、1〜12までを割り振って金管・木管を交互に、上級生と下級生、1人ずつ、列ごとなど工夫してください。 ちなみに、12番の次に1番を続けると何回も繰り返すことが可能です。 打楽器パートは鍵盤以外の楽譜は、スコアに書かれているリズムを演奏させます。 (SD・BDにはパート譜がありません)スタートをグループで変えてハーモニーにし、8ビートで練習すると面白いです。

「U.調の練習」
1番、2番
1番はその調のスケール、2番は1番に対するハーモニーです。
「音の長さ(テヌート)」「ブレスの位置と吸い方(4拍の裏で素早く!)」 「ていねいな発音」「2番のハーモニーの時、1番のスケールを意識して」 等の注意すべき点を指示し、特定のパートに、1番をもう一度吹かせて、1番2番を合わ せて演奏します。
1番を使っての応用練習として「Vリズムの練習」(30ページ以降)の 各1番のA〜のリズムをあてはめて練習するようにも指示されています。 2番は1番のスケールを吹くパートとの組み合わせが自由です(低音以外) また、その日に取り上げる曲の調性を選んで「調の練習」をすると効果的です。 常に、確認事項を意識してて、基礎を徹底させることも大切です。 目標や注意事項は、生徒の指示でも十分練習できます。 ロングトーン注意事項を全員が持つのも良いかもしれません。
  • ブレスをしっかり取る。ブレスの位置と吸い方(4拍の裏で素早く!)も注意
  • テンポを感じながら吹く。(演奏する)
  • 構え方を意識する。アンブッシュアも安定させる。
  • 音量は、一定に保つ。音出しから音を切るまで一定にする。(支える)
  • 発音をていねいに(タンギング)する。
  • 音の処理も意識する。音の余韻や響きも聴く。
  • 息の出し方(圧力・スピード)のイメージを持つ(遠くに)
  • 音色も美しく
  • 低音やまわりを聴いて吹くこと。
  • ていねいに発音し、出す音をイメージして(頭で歌って)吹くこと
  • 音の長さ(テヌートで)を揃える
応用練習
バンドを2つのグループに分けて、お互いに交互に練習します。 これによって、自然に聴き合い、イントネーションや、奏法を揃えることができます。 木管と金管、セクションごと、隣同士、上級生と下級生等の組み合わせの他にリズムや音型も工夫して練習してください。 このとき「リズムの練習」(30ページ以降)のA〜Jのリズムをあてはめて練習するように指示すると効果的です。 低音が1番を吹く時は、他の人は低音を2拍(4拍でも可)聴いて、後からハーモニーを低音の上に乗せると良いです

3番「スケールとアルベジオ」
できれば1回目をスラーにして、1回目と繰り返してアーティキュレーションを変えた時が 「同じ音量」「同じ速度」になるように注意します。 (テヌートが遅くなったり、スタッカートが急いだり、音が小さくなったりしないように)
「どのように吹くか」をなるべく具体的に(タイムリーに)指示することが大事です。 また、「スラー」「スタッカート」「テヌート」等アーティキュレーションのバリエーションも 図でかいておくと良いと思います。(掲示するとそれを見て練習できる)

7番「コラール」
コラールによる練習は、フレーズのまとまりや歌い方、ブレス、フェルマータやアゴーギク(速度の変化)、 ユニゾン、ハーモニー、各声部のバランス、音量、そして指揮を見ること等、表現に関する総合的なトレーニングがねらいです。
指揮に集中させ、表情もできるだけつけるようにしてください。 奏者も自分のパートを歌えるくらいになるといいですね。 フェルマータの響きは6番を練習するときに確認しておきましょう。
コラールの練習で確認すべき点は、
  • 歌の曲であることの意識(実際に歌ってみると良い)
  • できるだけていねいに(テヌート)発音し、十分音を保って演奏すること
  • フェルマータの前は指揮を見ること(当然次ぎの入りも)〜ややリタルダンドする
  • ハーモニーの感じ方(音程の取り方)
  • ブレスの位置とフレージング
  • フレーズの処理(音の切り方)
  • 主旋律を聴くこと(バランス)
  • 音符が転ばないように、フレーズの最後は特にていねいに

この他にも、音楽的な要求はたくさん出てくると思いますが、言葉による指導以外にも、 指揮によって奏者に伝えることも、このコラールで勉強しましょう。

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