KIMU'sColumn

抱腹絶倒
ノンフィクションコラム

JohnnyGuitar
KimKimの
「おしょう伝説」
Vol.22



『実録・毛虫男』


「う〜ッ、ゲホ!」

強烈に漂うアルコール臭。

ある晴れた朝の中之島公園。健全なる若者でごった返す中、一人の男がベンチに横たわり、むせ返るようにせき込んでいた。

…誰もがその場を避けて通っていたことは言うまでもない。


「行くで!吉田!」

なぜかその男に向かって突き進む2人組。

N○K教育テレビ大阪支部に勤めるベテランレポーター恵子。34歳と、入社2年目の若手ホープカメラマン吉田であった。

『若者文化事情'80』と題した特番の取材で中之島公園を訪れていた2人は、何を血迷ったか、この危険人物に近づいていったのである。


「う〜ッ、ゲホ!」

「吉田!カメラ回せ!」

「え!?浮浪者を撮るんですか?」

「ちがう!こいつ若いで…イケる!はよ回さんかい!」

恵子は強引に吉田にカメラを回させ、恐る恐るその男にマイクを近づけた。


「おはようございまーす。」

「・・・・・。」

「おはようございま…」

「うるっさ〜い!!」


男はいきなり起き上がり、殴りかからんばかりの勢いで恵子をにらみつけた。

しかし自分に向けられたマイクに気が付くと、急に態度が小さくなった。


「なっ、なっ、なんですのん、コレ??」

男は見たことないような大きなカーリーヘアをなびかせながら、おどおどと問いかけてきた。

「は、はい、あの〜、私どもはN○K教育テレビと申しまして…」

恵子が震えながらも番組の趣旨を説明すると、意外にも男はあっさりと取材を承諾した。


「ここで何をなさっているんですか?」

「えっと…昨日って言うか、今朝まで友達と飲んで、女のトコ行ったらカギかかってて…ほんで…アレ〜?ここどこですのん?」

「中之島公園です。」

「いっ、今何時?」

「午前8時半過ぎですが。」

「なぬ〜っ!」


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