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Tokyo, 2005.3.26
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Stanley George Bodman
translation by Ikuko Ono
photo by Michelle Ocampo

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元Faraquetのメンバーが新たに結成したMedicationsが、05年の3月に初来日を果たし、ツアーを行なった。確かな実力に裏打ちされた素晴らしいステージを未だ記憶に強くとどめている人もいるだろう。そして、以下のインタビューでも言及されている通り、同じタイミングで彼らのデビューEPの日本盤がCATUNEより発売されたことは、ディスコード所属のアーティストが初めて日本国内でのライセンス・リリースを実現した事例として話題となった。これまでディスコードは、その強固なインディペンデント精神に基づく運営方針により、海外ディストリビュートに関して極めて慎重な姿勢を示してきた印象が強かったからだ。今回のケースは、ディスコードの頑ななイメージを覆すとともに、新たな可能性を切り開く重要なステップと言えるだろう。何故なら、たとえ1枚限りのワンショット契約であっても、その時のリリース・アイテムを確保することで現地のレーベルとの提携関係が密に築ければ、様々な点からバンド来日のチャンスを大きく広げることになるからだ。05年秋にはイーヴンスとしてイアン・マッケイの来日が決定しているが、これを気にアメリカ最強のアンダーグラウンドが一気に日本との距離を縮めてくれるであろうことを期待している。

「僕らにとって重要なのは、人々がライヴを見に来てくれることなんだ。根本的にライヴ・バンドだからね 」

まずは、それぞれ最近のお気に入りなんかを挙げながら自己紹介をお願いします。

Andrew:アンドリュー・ベッカー。ドラムス担当。最近の一番のお気に入りはThe Rude Staircaseという新人バンドだな。

Devin:デヴィン・オカンポ。ギターとヴォーカル。僕のフェイバリット・バンドはミニットメン。

Chad:チャド・モルター。ベースとヴォーカル。最近はボブ・ディランをよく聴いてる。

ありがとうございました。さて、今日が最終公演ということになりましたが、これまで続けてきたジャパン・ツアーの感想を聞かせてください。

Devin:グレートの一言だね。一緒にプレイしたバンドも素晴らしかったし。

Chad:うん。アメリカを回るときは、あまり良いとは言えないバンドも混ざってるのが普通だけど、どのバンドもクオリティーが高かったのに驚いたよ。観客も素晴らしかった。期待以上のツアーだったね。

Devin:本当にビックリしたよ。素晴らしいショーの連続だった。カナダ以外の外国でプレイしたのは初めてでね。個人的にも特別な経験になったよ。

Chad:僕ら全員、初めての経験なんだよね。

日本の観客の反応はいかがでしたか? 外国から来ると、日本の客は静かだという感想を多く聞きますが。

Devin:いや、アメリカより盛り上がってた。

Andrew:場所によって反応が違うっていうのは、アメリカと同じだけどね。控えめだった町もあるし、確か大阪だったと思うけど、あそこはクレイジーだったよ。でも、ショウの後で直接オーディエンスと話をしたりしてみると、アメリカよりも熱心な感じでさ。バンドを真剣に受けとめてくれてる手応えは、日本の方があるね。

今回の来日はCatuneの招聘で実現したわけですが、メディケイションズは初めて日本でライセンス・リリースされたディスコードのバンドとして話題になっています。今回の件がどのようにして実現したのか、経緯を簡単に説明してください。

Devin:ほとんどチャドが交渉の窓口だったんだよな。

Chad:まずジャーナル・スパイ・エフォートのメンバーが僕に、ジャパン・ツアーに関して連絡してきたんだ。その後で彼がCatune代表のケンスケに話をつけてまとめていって、現実味があると分かった時点で、ディスコードに提案を持っていった。そこからは簡単だったよ。ディスコードは所属バンドを助けることに積極的だからね。割とすんなり行ったんだ。そんなに大げさなことじゃなかった。こっちでは大ごとみたいだけどね。

ディスコードが日本のレーベルにライセンスを許した例が今まで一度もなかったので、難しいイメージが出来上がってしまっていたんです。

Devin:過去の例では、彼らにとって好ましくない状況があったんじゃないかな。今回のは双方にとってフェアなものだったんだろうね。心から日本に行きたいとアピールしたら、それが受け入れられたんだ。

Chad:あと、今ディスコードで働いてるBrian Lowitが、Lovitt Recordsというレーベルを持っているんだけど、そことCatuneにライセンスの関係ができていたから、すでに実績があったということも大きかったよね。

Devin:賢明なやり方に思えたんだよ。他の経路を通さずに日本でリリースすることができるんだからね。とにかく日本でプレイできるなら、ってことで進めたんだ。

なるほどね。ディスコードの方針は変わりつつあると言ってよいのでしょうか?

Devin:言えるのはディスコードがアーティストを大切にする、ってことだと思う。厳密なルールがあるわけじゃないけど、同じ志を持った、独立心に溢れる人達と仕事をするのを信条としてるんだ。Catuneと縁ができたのはとても良かったと思ってるよ。ふたつのレーベルは似てる気がする。素晴らしいバンドが所属してるし、いい感じのコミュニティーを作り出してる。そのネットワークの中に入れてもらうのは僕らにとっても良いことだよ。もしライセンスされてなかったら、日本に来れなかっただろうからね。

Chad:ケンスケに直接会って話をしてからは、さらにそう思う。彼が正しい動機でやってることが分かったからね。音楽を本当に愛していて、自らもバンドをやっていて。ディスコードに近い理想を思い描いてるね。

Devin:ディスコードというレーベルは、けっこうバンド自身に任せてる所があるんだよ。パターンに押し込めることはしないしね。他のレーベルだと、プレスだとか何とか、お決まりのやり方をさせられるけど。

Andrew:レーベルとバンドに有害なことでなければ自由にやらせてくれるんだよね。シンプルなことだよ。

Devin:とてもオープンだしね。どんなことにも意見を求められるし、バンドが「意味がない」と思うようなことは強制されないんだ。

じゃあ、今後もしかしたらバンドによっては、よりメジャーな雰囲気のレーベルであっても、ライセンスできる可能性はあると思いますか?

Devin:さあ……

Chad:それは僕らにはちょっと(笑)。

(笑)それでは、このバンドについての質問をしていきたいと思います。Medicationsは2003年に結成されたばかりですが、その前にデヴィンとチャドがいたFaraquetとは、メンツ的にそれほど変わらないようにも見えます。いったん解散して、こういう形で再出発することになった理由は何ですか?

Devin:DCに引っ越してきた時、僕はギター、チャドはベースを弾いていて、ドラマーを探してたんだ。でも、ドラマーを探してるバンドは他にもたくさんあって、なかなか見つからなかった。僕はドラムも叩けるんで、Smart Went Crazyというバンドではドラム担当だった。Faraquetでは自分達の曲を書いて、僕がヴォーカルだったから、Smart Went Crazyのギタリストにギターを弾いてもらって、チャドにドラムをやってみてもらうことにしたんだ。ある意味、応急処置的な解決策だったんだよね。そのせいだったのかどうなのか、うまくいかなくなって解散してしまった。で、Faraquetが解散してからこのバンドが結成されるまでの間、かなり多くのミュージシャンとプレイしてメンバー探しをしてたんだよ。特にドラマーは適任者が見つからなかった。Blue Tipにいたジェイクというベース・プレイヤーとしばらくやってて、彼が抜けた後は、チャドを呼び戻して、彼の本来の楽器であるベースを弾いてもらった。ふたつのバンドを比べて、自分にとって明らかに違うのは、歌のメロディーとヴォーカルの方が演奏より重要になっていることだね。Faraquetでは複雑な音楽を演奏するミュージシャンとしての技量の方が重要だったんだ。でも今は歌がいちばん大事で、ヴォーカルを主体に、その方向性に忠実に曲を組み立てていってる。

Chad:その通りだね。

デヴィンもチャドも今はギターやベースを弾いてますが、以前はドラムをやっていて、つまりこのバンドはメンバー全員がドラマーなわけですよね。そのことがメディケイションズのサウンドにも反映していると思いますか?

Devin:それは本当にあるんじゃないかな。ソングライティングのプロセスでも、アレンジをするにしても、リズムはとても重要な要素なんだ。その点では全員が一致してる。

Chad:うん、全員がドラムを叩くってことは、曲をドラマーの視点で見れるってことだからね。

Devin:アンディはドラム以外の楽器はやらないけど、僕が過去いっしょにプレイしてきたドラマーと比べるとすごく分かってるよ。ソングライティングのプロセスがどういうものか理解してるし、ドラムがどんな位置を占めるべきか心得てる。おかげで、3人の意思疎通がスムーズにいくんだ。多分、曲作りにいい影響を与えてると思うよ。ドラマーでもあるってことが、僕のギター・プレイに影響してることは確かだね。

具体的にはどういう風にして作ってるんでしょうか。作曲の基本的なプロセスを教えてください。

Chad:リフから始まることが多いね。ギターの場合も、ベースかドラムの場合もある。それを元にみんなで作り上げていく。自宅に戻って1人で作る部分は少ないんだ。

Devin:ジャムってるうちに出来てくるね。

Chad:ああ。基本的にいつもグループ作業。

Devin:だいたい出来てきたら、しばらく遠ざかって自分のヴォーカル部分を客観的に見直したり、他のメンバーの意見を採り入れながら、完成させていくんだ。でも最初はジャムから始まってるよ。

ジャムの段階で、例えば楽器の交換みたいなこともしたりするんでしょうか?

Devin:それはまだないね(笑)。今は自分達の楽器に限ってるよ。

Andrew:将来的にはありうるかも。自分の楽器に飽きてきたらとか。そろそろその時期かな(笑)。

それにしても、フレンチトーストもそうですが、どうしてDCのドラマーは、ただドラムを叩いているだけじゃなくて、他のことをやりたがるのでしょうか?

Andrew:飽きっぽいんじゃない?(笑)

Devin:新鮮さを失わないためにスイッチするんだよ、多分。

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