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Tokyo, 2007. 12. 20
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Mutsumi Mae
translation by Ikuko Ohno

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ゴシップの存在を始めて知ったのは、2003年にリリースされたアルバム『MOVEMENT』から。イースタンユースの赤坂ブリッツでのライヴで開演前にガンガンかかっていて、あとで吉野さんに教えてもらったのだ。そしたら2006年に入っていきなりNMEが「ニューレイヴ」のくくりで大プッシュを開始して、みるみるイギリスで大人気となったのでビックリしてしまった。コロムビアの重役に収まったリック・ルービンの引きでソニーからのメジャー・デビューも決まった2007年12月には待望の初来日公演が行なわれたが、これはその際にギター/ベースのブレイスとドラムスのハンナを相手に行なったインタビュー。べスのキャラばかりに注目が集まる状況に少なからず不満を覚えていたので、あえて他の2人と話をしてみたかった。実際、べスに同性愛やヌードの話ばっかり質問してるような記事よりも、そうとう興味深い内容にできたと自負してます。

「社会から疎外されたアウトサイダーたちとコネクションを感じたいと思ってる。ベスに世間の関心が向けられることで、彼女に自己を投影できる人はたくさんいると思う。私たちのライヴ・パフォーマンスではそういうことが重要なの。全ての人たちを巻き込んで、誰もが同等なんだって感じられるようなライヴがやりたいのよ」

昨日は、大阪のタイムボム・レコードに行ったそうですね。

Brace:ああ、僕は昨日、そこでレコードを1000ドル分ぐらい買ったよ(笑)。

あまりに長い間ブレイスが店に留まっているので、ハンナの方は呆れて途中で出ていったって話も聞きましたよ。

Hannah:そう、あれだけ熱中できるなんて羨ましいわ(笑)。

Brace:3時間はいたかな?

どんなものを買ったかを、ちょっと教えてくれませんか。

Brace:ノーウェイヴとかノイズものだね。ボアダムズのファースト、あとはスミスの12インチ……。

Hannah:主にアメリカで見つけにくいものよね。

Brace:ジャパニーズ・ハードコア、ノイズ、ノーウェイヴ。そういうやつ。

いつ頃からそういうものに興味を持つようになったんですか?

Brace:昔からノイズとかマイナーな音楽を追っかけるのが好きだったんだ。

Hannah:音楽オタクなのよ(笑)。

Brace:そう、ボアダムズなんかはずっと前からフェイバリット・バンドのひとつだったし、ハナタラシ、OOIOOとかも大好きで、7インチ盤を集めたりしたんだ。Ecstatic Peace! Records、Hanson Recordsのテープ、Sun Ra、灰野敬二、メルトバナナ……そういうのが好きなんだよね。日本のアヴァンギャルド・ミュージックって、アメリカとどこか違うんだよ。パンクの受け入れられ方というか……日本の方が音楽的な反逆の度合いがアグレッシヴなのかもしれない。何故か分からないけどさ。僕には日本におけるハードコアの解釈の方が面白いんだ。技術的にも上だし、より速いし、音響的にもアグレッシヴだと思う。僕の聴いた限りではね。グレートだよ。

最初にそういう音楽に興味を持って聴くようになったきっかけは何だったんでしょう。

Brace:最初は友達に教えてもらって、テープで持ってたんだ。アメリカでは本当に手に入りにくいんだよね。そういうものはリスナーの数が限られるからさ。ハイスクールの頃は、そういうテープやレコードを入手するために、あちこち手紙を書きまくってたよ。SKiN GRAFTや、K、Kill Rock Starsとかがディストリビュートしてたから、通販で買ったり。とにかくアヴァンギャルド・ミュージックが好きで、古いアヴァンギャルドから今のジャパニーズ・ハードコアまで、幅広く集めることに情熱を注いでるんだ(笑)。

なるほど。では、そうなる前にそもそも音楽に興味を持った時は、どんな音楽に親しんでいたんでしょうか?

Brace:僕はアーカンソー州の農家で育ったもんだから、本当に何もなかったんだよ。カントリー・ミュージックか、せいぜいエルヴィス・プレスリーぐらいしかなかったね。他のものを探す手段がなくて、初めてパンクを聴いたのは、いとこからパンクのカセットをもらった時だったんだ。ジャームスとかブラック・フラッグ、ソニック・ユースが入ってて、その1本のテープが僕の人生を変えちゃったんだよ。ジャームスを初めて聴いた時は怖くて震え上がったな。スゲーと思った。

ハンナの場合は?

Hannah:私はラジオのオールディーズを聴いて育ったの。チャック・ベリーとかそういうヤツね。でも最初にのめりこんだのはグランジよ。12歳ぐらいの時、ニルヴァーナ、パール・ジャム、ソニック・ユースを知って。その中でもソニック・ユースをきっかけに、もっと変わったものが好きになっていったのね。ソニック・ユースとニルヴァーナは、自分たちの好きなマイナー・バンドについてよく話してたから、そこで初めて聞いたような名前のバンドをチェックするようになって。ハギー・ベアやビキニ・キルとかのライオット・ガール関連に、その他いろんなパンクを聴いてたわ。それからハードコア・パンクにハマったの。私の場合はアメリカン・ハードコアだけどね。

ドラムを始めたのはいつですか?

Hannah:グランジの頃よ。12歳ぐらいで、ニルヴァーナとかアリス・イン・チェインズとかを聴きながらね。

Brace:12歳で始めてたのか、ドラム。

Hannah:うん。7年生の頃。

Brace:へえ。それはスゲーな。

では、ドラムはグランジがきっかけだったんですね。

Hannah:そう。その後どんどん変なものに惹かれていくんだけどね。

わかりました。それで、ゴシップってプレイヤーが2人だけじゃないですか、基本的にリズム隊+ベスのヴォーカルで楽曲を成立させてるような感じですよね。「それでいいんだ」という判断は、どのようにしてなされたのでしょう? もう一人ギタリストかベーシストを入れたいと思うようなことはないのでしょうか。

Brace:そうだな、それは多分……オリンピアに引っ越した頃、スーサイドが大好きだったんだけど、彼らはオルガンとシンガーの2ピースだったよね。個人的に、そういうミニマリズムな音楽が好きで、例えばアルヴァ・ノート、テリー・ライリーとかのアプローチは、ひとつのトーン、ひとつのサウンドに意識を集中させることだったわけでさ。

Hannah:あまり色んなことをやらない音楽よね。

Brace:そうそう。一度にいろんなことをやり過ぎる音楽は、焦点がブレるというか。僕は音楽を始めた当初から、Dチューニングされたギターとドラムだけでやってるんだ。ベスの声はパワフルだしね。ベスのパワフルな声とパフォーマンスを生かすには、他に何も必要ないって判断したんだ。

Hannah:そうね。ミニマリスト的なバンド編成だと、一人一人のメンバーの重要性が増すと思う。より頑張らなければならないのよ。それだけスペースが空いてるわけだから。

Brace:うん、それぞれに精進せざるを得ないわけ。

Hannah:よりクリエイティヴにならないとね。

Brace:1曲ごとに工夫を凝らして弾かないと、全部同じに聴こえてしまう。レコードで聴こえる様々なサウンドも、全部1本のギターから作ってるんだ。パワーコードをひたすら弾いてるだけのギター・バンドとは違ってね。僕は通常のチューニングでプレイすることはなくて、毎回変えてる。サウンドを面白くするためにクリエイティヴになる必要があるから、お互いに試し合うような感じで楽しいよ。

2人だけでバックを全部やらなくちゃいけないということで、楽曲を作る時に何か意識することがあったりしますか?

Hannah:曲によってアプローチが違ってくるんだけど。

Brace:でも、結構オーガニックでシンプルな作り方をしてるよ。何らかのアイディアを元に膨らませていくだけだから。リフとかドラムビートが頭に浮かんできたら、そっからみんなでトライしてみて、残らないものもあれば、気に入って何度も戻って曲にしていけるものもあって。わりと魔法みたいに突如、曲が現れてくるんだよね。自然と出来てくる感じが気に入ってる。

Hannah:ベストなのは、本当に突然、出来上がってしまう曲ね。みんなでプレイし始めたら、ふと全てがハマる瞬間があって。何の苦労もなく出来てしまうことがあるのよ。

Brace:例えば、歌の一部が出来てる状態で、みんなで好き勝手にプレイしてて、それがうまくいけば曲が出来る。空白が正しく埋まっていくみたいにね。

Hannah:多くの場合、わりと何も考えずに作ってるの。勢いに任せて「オラッ!」って(笑)。

Brace:即興的にね。

Hannah:吐き出すように(笑)。

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