テレビのヒーローと音楽:昭和40年代前半

 40年代は百花繚乱,怪獣という驚異の敵を得て,ヒーローにとって黄金時代の幕開けとなった。では,その主題歌と音楽はどんな展開を見せたのか。
 アクション物,妖怪物,時代物,本格SF,

●番組タイトル・放送年度・原作/俳優

テレビ
スパイキャッチャーJ3 s40(1965)10月〜
都筑道夫/丹波哲郎,川津祐介
●マグマ大使 s41(1966)7月〜 手塚治虫/岡田真澄,江木俊夫,大平透
ウルトラマン s41(1966)7月〜 円谷プロ/黒部進,小林昭二,毒蝮三太夫,二瓶 正也,桜井浩子
●悪魔くん s41(1966)10月〜 水木しげる/金子光伸,吉田義夫(潮 健児)
●アタック拳 s41(1966)10月〜 川崎のぼる/高島英志郎,伊達正三郎
●仮面の忍者 赤影 s42(1967)4月〜 横山光輝/坂口裕三郎,金子吉延,牧 冬吉
キャプテンウルトラ s42(1967)4月〜 /(監修:都築道夫・光瀬龍)中田博久,城野ゆき,小林捻侍
●光速エスパー s42(1967)8月〜 /三ツ木清隆,細川俊夫,月岡千秋
ウルトラセブン s42(1967)10月〜 /森次浩司,菱見百合子,中山昭二
●怪獣王子 s42(1967)10月〜 /野村光徳,野村好徳,仙波和之,高森和子,山口 暁
●ジャイアントロボ s42(1967)10月〜 横山光輝/金子光伸,伊東昭夫,伊達正三郎,桑原友美
●マイティジャック s43(1968)4月〜 /二谷英明,久保菜穂子,二瓶正也
●怪奇大作戦 s43(1968)4月〜 /勝呂 誉,岸田 森,松山省二,小林昭二,小橋玲子
●バンパイヤ s43(1968)4月〜 手塚治虫/水谷 豊,山本義明,渡辺文雄
●河童の三平・妖怪大作戦 s43(1968)10月〜 水木しげる/金子吉延,牧冬吉,松井八知栄
●魔神バンダー s44(1969)1月〜 東連山/角本秀夫,平松慎吾,浅香春彦
●妖術武芸帖 s44(1969)3月〜 伊上 勝/佐々木功


●スパイキャッチャーJ3(東映) 音楽:菊池俊輔
主題歌「スパイキャッチャー」作詞:水木かおる/作曲:伊部晴美/歌:叶 修二
挿入歌
空飛ぶシボレー・コルベット・スティングレイ
 テレビ・映画音楽に興味のある人で「菊池俊輔」の名前を知らない人はモグリだ。彼ほど大量の劇伴音楽を作り続けている作曲家は他に類を見ない。時代劇をやっても社会派をやっても和風の匂いがない,職人と芸人の両面を持つヘヴィ級の器用人である。1970年代初頭から子供アニメ・特撮モノで「菊池節」と呼ばれるほどの個性を見せることになるのだが,大人向けのミステリー・アクション第1弾が河津祐介主演のこれ。後の「キイハンター」「アイフル大作戦」〜「Gメン75」へと続く。主題歌は仲間のギタリスト伊部晴美の作で,ヨーロピアン・スパイ・ミュージック風ロカビリーでカッコイイ。叶修二のはりあげ声が決まっている。
●ウルトラマン(円谷プロ,TBS) 音楽:宮内国郎
主題歌「ウルトラマンのうた」 作詞:東京一/作曲:宮内国郎/歌:みすず児童合唱団&コーロステルラ

 

それいけ!われらのヒーロー!!
 ♪「胸〜に,つけ〜てる,マークは流星…」日本人で,この歌い出しを知らない人を探すのは困難だろう。♪「光の国からぼくらのために…」ウルトラマン・シリーズの永遠のテーマは,人間が心に光を見出しつづけること。それまでのヒーロー像を根底から覆したかに見える神のような存在だが,実は一段高みに上ったのだと思いたい。様々なアイデア,よく練られたストーリー,スケールの大きいスペクタクルから,日常に潜む恐怖まで,宮内国郎の音楽はドラマに寄り添い,最大の効果を上げている。
●キャプテン・ウルトラ(東映・TBS) 音楽:冨田 勲
主題歌「キャプテンウルトラ 」作詞:長田紀生/作編曲:冨田 勲/歌:上高田少年合唱団,マイスタージンガー&ボーカルショップ
主題歌2「宇宙マーチ」作詞:長田紀生/作編曲:冨田 勲/ 歌 :マイスタージンガー.ボーカルショップ
 
つーきもかせいもはるかにこーえーてーええーー
 宇宙開拓時代を迎え,地球人を襲う未知の事件に,相棒のロボット・ハックとキケロ星人ジョーと共に,3機分離合体の愛機シュピーゲル号を駆り,敢然と立ち向かうキャプテンウルトラ。若手SF関係者を迎え「ウルトラマン」の後番組として東映が制作 した「本格宇宙活劇」である。その設定はあまりにも早すぎたのか,マグマ大使,ウルトラマンの次の巨大ヒーローを望んでいた子供たちにはそっぽを向かれてしまった。しかし宿敵バンデル星人や個性的な怪獣に,巨大化せず知恵と勇気で立ち向かうキャプテンの姿は,少数の宇宙SF少年の心に深く刻み込まれているだろう。富田勲はこの頃から宇宙や未来的なものと縁があるらしい。素晴らしいスケール感の主題歌は,それまでのマーチ,児童合唱,流行歌風の歌を何光年も超えていってしまっている。
●ウルトラ・セブン(円谷プロ,TBS) 音楽:冬木 透
主題歌「ウルトラセブンのうた」歌詞:東京一/作曲:冬木 透/歌:みすず児童合唱団&ジ・エコーズ
挿入歌「ウルトラ警備隊のうた」
アンヌ,ぼくはM78星雲から来た宇宙人なんだよ
 シンフォニック。重厚なオーケストレーションと軽快なボーカルハーモニー。楽器の音色やリズムを目立たせるアレンジが,宮内ウルトラマンの音楽と好対照をなす。ドラマの要所で引用されたクラシックの曲も効果的だった。番組開始当初は,まだウルトラ一族という設定がないもので,セブンは単なる銀河系辺境の観測員にすぎない。そんな彼が,自分の命を犠牲にして人を救った地球人に感動し,地球の守り手として働くことになるのだが,組織の不条理,異文化間の誤解,侵略と被侵略の逆転…等の世界の成り立ちに疑問を投げかける物語の中で,悩めるヒーロー像を初めて見せてくれた。その矛盾の上で少年達が感情移入できるほど,完成度の高い作品だったのだ。勇壮なテーマ,不安をかきたて,カタルシスに至る,後の円谷作品の中核をなす冬木音楽は,ここで完成している。
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作曲家・編曲家
菊池俊輔 宮内国郎 冬木 透 冨田 勲
作詞家
 
資料はTVDRAMA-DB.COMを参考にしています。http://www.tvdrama-db.com/