枯淡(せぴあ) 白昼夢美空リフレイン海の記憶命の花恋唄習性月うさぎ枯淡(せぴあ)P.S.




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 白昼夢


しかめっ面のまま眠りに逃げ込む
夢は夜にだけ見るもんじゃない筈さ
疲れ果てて 迷い込んだ夢の荒野で
一滴の水を求めてまたさまようのか

日めくりのように 千切られ丸められた
紙屑の昨日は つながる何もない
時をかけて 育てた筈のつばさも
世慣れるまま暮らしに埋もれていくのか

   夢はふんばっている 流される日々の底で
   夢はふんばっている 明日こそ気付いてくれと

途切れ途切れの合間で間に合う
あぶく銭で買える幸せも
時にはいいね 胸踊ることなら
流す汗を一生注ぎ込めるものなら

汚れっぱなしの擦り切れた靴だけが
遠い昔の夢を抱いて眠ってる
恐れもなく 飛び込んでいった旅で
焼き付いたものは見通しの利く暮らしなんかじゃない

    何も出来ずに 走り抜けただけなのに
    何故かいとおしい 不器用な時代から

   夢はふんばっている 真っ昼間の陽の下でも
   夢はふんばっている 足取り支えてる
   夢はふんばっている 流される日々の底で
   夢はふんばっている 明日こそ気付いてくれと


















 美空


     君が失くした空を唄うよ
     失くしたことさえ気付かない風に乗せて
     君が忘れた空を唄うよ
     忘れたことさえ気付かない日々の中へ
        揺らいで消えていくのは
        泣き腫らした瞳に染まった   
        夕焼け見上げ佇んだ
        悲しい思い出ばかりじゃない

気の利いた恋の台詞の一言も見当たらずに
ぎこちない二つの影が 歯痒さと小道をいく
木漏れ日に手をかざし 目を細めて見上げた空

うらぶれた海岸通り 長雨を引きずって
押し黙った二つの影が 遠い波間に沈んでいく
曇り空引き裂いて 差し込んだ陽の光

千鳥足で坂を上れば 過去を見下ろすベンチがある
温もり抱いた二つの影が いつまでも寄り添ってる
笑いかける月おぼろに見え隠れ お道化た空

   明日は雨 でも心は 君だけを見つめてた



















リフレイン


耳元でささやく言葉より確かな
心の伝え方を知らない 君が信じなくても
お決まりのフレーズに 疑いを持ちはじめた
君は他にどんな心を望んでるんだろう

   移りゆくすべてが 君を連れ去る前に

僕の流れの中で君を 強く抱いていよう

顔色うかがったり 一人で落ち込んだり
そんな繰り返しに疲れた時 君に出会った
言葉に託すよ どんなに熱い胸も
君に届かなければそれは 意味のない事だから

   見つめあうだけで 分かりあう恋までは

多分一生しゃべりとおしても きっと及ばない

     無防備にさらけ出した 今を透き通らせて
     突き詰めた一言が やっぱり同じ繰り返しでも


















海の記憶


深く吸い込んだ潮風が 
体に取り込んだ海にさざ波を立てる
深い眠りに忘れられた
体の奥に潜む恐竜を目覚めさせ

    海の夜から太陽の陸へ
    気が遠くなる程の時間費やして
    這い上がってきた意味を辿るんだ

打ち寄せる波に運ばれて 
思いや憧れが上陸した浜辺に
郷愁の故忘れ 影法師
行き先に迷い波を振り向き佇む

    押し込まれ塗り潰されても
    決して消え去る事はない
    いつか呼び覚まされる記憶

波の揺りかごとひきかえに 
陸に目覚め そして手に入れたものは
ほんのひとときのやるせなさに
投げ出してしまう程ちっぽけなものなのか

海から上がったその足で  
君は街に帰るのか
街の向こうの 海の向こうの 陸の向こうの
何処へ行こうか




















 命の花


守る事はない おせっかいだね
もっと自分を信じておやり
君が思うより 夢はしたたかさ
投げてもこの身に寄り添ってくるさ

    涙の形に砕け散った 青い足跡が
    時を重ねて踏み出した 一歩に続いてる

  むき出しの命の花が 輝き始めるように
  囲わないでそのまま 風に晒し続ける

余りに近くて ぼやけてたものが
隠し絵みたいに浮かび上がる
あわただしい日々と二重写しに
ひっそりと気高く花は咲いてた

    合わせ鏡に続いてく 時のまやかしに
    変わらぬ未来を移しては 立ち止まってしまうのか

  むき出しの命の花が 夢に薫るように
  飾らないでそのまま 熱く刻み続ける

      雨に打たれて しおれた日にも
      くさらず蕾を膨らませよう



















恋唄


月に操られた木偶のように 震える肩を抱いた
他愛のない言葉達が ほんの少し行き場を失くした
  
   分かち合う喜びや 夢が明日を食っていく影で
   独り占めした涙に 熱い思いだけが空回りしてた

     恋に触れた胸はまっしぐらに
     笑顔のもとへ駈けて行くだろう
     やがて開かれた胸に精一杯の  
     笑顔と知って駆けつけるだろう
 
空の高みに瞬くものを 手に入れたのは幻か
見つめ合う瞳の奥の 見果てぬ君のように

   悲しみをすり替える 薄っぺらな道化師の優しさでも
   寄る辺なき明日に 壊れた夜に君を置き去りにしない

     恋に落ちた胸は甘い夢で
     笑顔の回りを取り囲むだろう
     いつか底知れぬ闇に捕まっても
     笑顔を守る盾となるだろう

















習性


三叉路にさしかかる 右か左か過去か
振り返ることは何も 気に病むことじゃない
それでも疾しさに 目をつぶって踏み出した
背中を押す人はいても 手を引く人はいない

居心地がいい胸の 季節を確かめる
何気ない一言を 深読み始める
はしゃぐひとコマを膨らまし 応えてくれる筈もなく
後ろ手でノブを回し 後退り始める

    生きる程に罷り出る貧しさが
    真心を遠ざけていく
    愛に夢中になる胸に 愛で応えられぬまま
    馴染み始めた安らぎに暇乞いをする

臆病が染み付いた 生き方を笑えまい
開き直ろうと何度も飛び跳ねたことも

    生きる程に罷り出る貧しさが
    真心を遠ざけていく
    疑うことで何を 守ろうというのか
    赤裸々な自分さえ分からぬままに



















 月うさぎ


月うさぎ跳ねる夜は きみを連れ出して
いにしえの浪漫集う 空を見上げる

   夢を鍛え 目を凝らせば
   遠いあこがれが踊り出す

     今を小さな夜に閉じ込めたまま
     夢見る力が萎えてしまわぬように

       明日にも届かぬ言葉に命を‥

月うさぎ跳ねる夜に きみを浮かべ遊ばせる
闇に迷わぬよう 夢にはぐれぬよう




















枯淡(せぴあ)


       君の痛みに流れた月日を払い除け
       穏やかな寝顔そのままに目覚めさせてあげよう
       胸の奥に書き捨てた無邪気な未来図が
       息を吹き返し君を導いてくれるよう

淡く柔らかく枯れるまま きみの眠りのほとりに
鳥のさえずる枝を張り 雨音を和らげる

   まつげにとまった 虹を震わせて
   微睡む君に笑みを吹き込んで

     夢現丸ごと抱きしめよう

命合わせた二人には 時の憂いもいとおしく
思い出と降り積もり 埋み火を温める

   同じ夢を見てた 旅の徒然
   しっかり手を繋ぎながらはぐれぬよう

     軽やかにセピアに溶けて行け

        時を渡る風は 幼い夢を孕み
        夕凪の街で 君に宿るだろう



















P.S.


君を眠りの夜に帰して 
月で炙り出した心を辿る
尻切れ蜻蛉の言葉に続く
笑顔で飲み込んだ切なさの故を
 
   いつか見慣れた 花飾りのように
   時折に揺れた 喜びの輪郭を

     大切な何ひとつ切り出せぬまま
     綴り終えた朝に P.S.