2003年8月17日→8月23日鹿児島(枕崎)一人旅
 
 
(9) 枕崎の町をぶらぶら。
 
 
 
2003年8月21日(木)。目が覚めたのは朝7時前だったでしょうか。カーテンを開け、窓の外を見ると今日もまた見事な晴天。どこまでも広がる青い空。青い海…。今日もなんか、イイ日になりそう。
 
シャワーを浴びて服を着替え、まずは朝食。朝食は、宿一階の大広間で食べます。行ってみるとバイキング形式になっていました。とりあえずはパン中心に洋食系をチョイス。やっぱり朝は香ばしく焼けたパン。これに限ります…。と思って食べていたのですが、どうもしっくりこない。それもそのハズ。こんな和室の旅館に泊まってパンと言うのもやっぱり…ねぇ(笑) そこで、御飯をほんの少しにお味噌汁をもらって戴いたらこれが何だかとても美味しかった。やっぱり朝は和食に限ります(あれ?)
 
朝食を食べている時、結構たくさんの泊り客がいたことに驚きます。何しろ夕食が部屋食だったから、他の泊り客を見かける機会って無かったんですよね。結局、食後のコーヒーを何杯もおかわりして、のんびりと取るモーニング。雄大な海の景色を眺めながら飲むコーヒーは何とも贅沢な気分。
 
さて。腹ごしらえも済んだし、出発するとしましょうか。今日は夕方の列車で再び鹿児島へ戻るのですが、それまではゆっくりとこの枕崎の町を見学するとします。
 
荷物をまとめ、宿のフロントでチェックアウト。お金を払い、タクシーを呼んでもらいます。と、フロントのおばちゃん。「これ持っていきなさい。これもどうぞ。ハイこれも。よく冷えてるからね」と、お菓子に飴玉に、おまけに良く冷えた缶ジュースまでくれました。…泊まった宿で、こんな餞別もらったのなんて初めてです。思いがけない親切にビックリ。そしてこの日、これから枕崎の行く先々で、色々な人の親切に出会うことになるのでした。
 
さて、タクシーに乗ってまずは駅へ。とりあえず観光に出かける前に、荷物をどこかに預けたいですね。しかし枕崎の駅、あろうことかコインロッカーが壊れていて使えません(笑) と、昨日[証明書]を購入した駅の売店。そこで荷物を預かってくれる様です。
 
売店のおばあさんに頼んで荷物を預けます。一応料金100円がかかりますが、コインロッカーよりも安いです。そしておばあさんに枕崎の見どころなんかを色々尋ねます。すると、パンフレットを渡してくれて色々と教えてくれます。そして、最近では自転車を貸してくれるお店があるから、そこで自転車借りて色々回ってみるのがイイんじゃないかとのアドバイス。
 
さて、まずは[文化資料センター南溟館]と言うのに行こうと思います。枕崎の駅からもそんなに遠くは無い様子。おばあさんに行き方を尋ねます。するとおばあさん、わざわざ売店から出てきてくれます。普通の観光案内所なんかで尋ねても、「あちらに…」と指差しで教えてくれるかあるいは地図で説明するだけなのですが…ちょっと様子が違います。おばあさん、結局駅の外まで出てきてくれて、「あそこに青い屋根が見えるでしょ。あそこの道を上がってね…」と説明。そこまでしてくれなくても…でもおかげで、道がとても分かりやすかったです。方向音痴の僕でも迷わずに行くことが出来ました。感謝感謝。
 
さて、この[南溟館]。ちょっと高台を登ったところにあります。一帯がちょっとした公園の様になっていて見晴らし抜群。枕崎の町が一望に出来ます。
 

高台から見下ろす枕崎の町。
家々の向こうには海…。

文化資料センター南溟館。
木が効果的に使ってある建物です。
 
[南溟館]の中に入ってみます。入り口で靴を脱いでスリッパで上がる様になっています。建物は外観からして木が使ってあるのが分かりましたけど、中へ入ってみると床も壁も一面木造り。でも木造と言っても全然古臭い感じじゃない、とてもモダンでお洒落な建物です。これはちょっと意外…。
 
そして展示室へ入ってみると更に意外な事実。この[南溟館]。「文化資料センター」と言う名前からして、郷土の歴史なんかを展示してある、ありがちな地方博物館なのかと思っていたのですが…。どうやらここは博物館では無く、美術館の様なのです。壁に飾られているのは、前衛的な絵画の数々。そして床にはこれまた抽象的なオブジェや銅像達…。それが木造の建物自体の美しさと合わさって、何とも素晴らしい世界を創り上げているのです。まさかこの枕崎と言う町まで来て、こんな素敵な美術館に出会えるだなんて…これは本当に嬉しい誤算でした。
 
枕崎では「風の芸術展トリエンナーレまくらざき」という芸術展を三年に一度開催し、国内外からの作品を募集している様なのですが、この日この[南溟館]で展示されていたのも、過去の「風の芸術展」受賞作品の数々でした。どの作品も個性的で、その世界にぐいぐいと引き込まれます。大きな美術館の企画展の、有名画家の個展なんかももちろんイイのですけど、こんな小さな美術館での、そこまで有名ではない人達の作品が色々観られるという展示もとても好きです。何と言うのか、むしろこちらの方がパワーを感じさえもします。色々な作風の作品が一度に観られるというのも魅力的ですしね。
 
結局、ゆっくりと観て回り、気に入ったのでポストカードに図録まで購入。やっぱり記念に買っておかないとね(笑) ちなみにこの[南溟館]。なんと入館料無料なのです。これだけ素晴らしい美術館がタダで観られるだなんて…。なんと太っ腹な町なのでしょうか枕崎。
 
さあ、今来た道を引き返して再び駅へ。売店のおばあさんが出迎えてくれました。「今までずっと観とったの? 絵とか好きなんだねぇ」 ちょっと驚いている様子。買って来た図録なんかを預けます。そしてさっき教えてもらったレンタサイクルのお店の場所を聞き、そこへ行って自転車を借りることにします。
 
駅から歩いてほんの2、3分。枕崎の市役所のすぐ近くにあった自転車屋。何の変哲も無い、昔ながらの自転車屋さん。そんな風情のお店ですが、ここで自転車を貸してくれるみたい…。店のおばさんに話をし、すると裏から一台持ってきてくれました。それを店のおじさんがちょっと整備して、さあ準備完了。
 
さっそく自転車に乗って走り出します。今日も太陽が照り付けていてとても暑いのですが、自転車で走っていると風が何とも心地いいのです。そして、自分の知らない町を自転車で走る。なんだかこれだけでとてもワクワクしてきます。
 
そして向かうのは[薩摩酒造文化資料館明治蔵][薩摩酒造]と言う、枕崎市で焼酎を造っている酒造会社の施設で、焼酎造りの工程を見学することが出来るのです。鹿児島に来て、すっかり焼酎の味を覚えてしまった僕。これは観ておかないワケには行きません。
 
自転車で走ること約10分。花渡川と言う川を超えたところに[明治蔵]はありました。
 

明治蔵。
中では焼酎造りが行われています。

「明治蔵見学記念」の看板。
平成15年8月21日。
 
早速中へと入ってみます。焼酎造りの道具や歴史に関する展示が色々とされています。そんな見学コースの裏側には本当の焼酎工場があって、杜氏さん達が忙しく動き回っている様です。色々と観て回って、最後のこーナーにあった、焼酎造りの工程を模型で現したジオラマが何だか良かった。人形一つ一つに愛嬌があってユーモラスで…。
 
さて、見学を終えるとそこは売店。そして試飲コーナー。試飲コーナーでは売店で買える製品のほとんどが試飲出来る様になっています。もちろん僕も試飲。さあどれを…。と、「ここでしか買えない」と書かれた商品に目が留まります。[手造り明治蔵]と言う名前のこの焼酎。昔ながらの製法で造っている焼酎で、芋の種類によって五種類があるのです。黄金千貫・べにはやと・べにあずま・べにさつま・むらさきいも…。その全てを飲んでみます。…なるほど。芋の種類によって全く味が異なるのです。これは面白い。そして思っていたよりも飲みやすい。僕は芋焼酎というのは臭くて飲み難いものだと思っていたのですが、意外にクセが無くて飲みやすいのです。
 
う〜ん…どれにしようか…。散々悩んで何杯も試飲。でも飲み較べているうちにアルコールで舌がマヒ(笑) 結局、[黄金千貫]で造られた[手造り明治蔵]を購入。何でも、焼酎用の芋としては最もポピュラーな種類なんだそう。そしてこの[手造り明治蔵]、通常の瓶入りと特性の壺に入ったものとあります。当然壺入りを購入。これなら飲み終わった後も記念品として飾れますしね。そして当然これも宅配便で送ります。
 
この[明治蔵]。ちなみにここも見学無料でした。素晴らしい町です枕崎(笑)
 
さあ、再び自転車を走らせます。次に向かうのは[火之神公園]。あの枕崎のシンボル、[立神岩]に最も近いスポットです。海沿いの道へと出て、海岸線を見ながら走ります。潮風がとても気持ちイイ!! 止まると途端に汗がどっと吹き出るのだけれど、でも自転車を走らせている間は本当に気持ちがイイのです。
 
海辺のサイクリング。本当に、本当に気持ちがイイ…。景色は最高。[立神岩]も徐々に近づいてきます。汗だくになりながら、でも気持ちが良くてつい顔が笑顔になってしまう僕。いい大人が、一人ニヤニヤしながら自転車を猛スピードで走らせている姿は結構気味が悪かったと思います(笑)
 
[火之神公園]は結構遠く、[明治蔵]から更に自転車で15分くらいかかったでしょうか。ついた頃にはもう汗ぐっしょり。体クタクタ。…よくよく考えてみると、自転車で走り回るだなんてこの歳になってからする旅行の楽しみ方じゃない気もします。学生のうちとかにやっとくべき…。
 
この[火之神公園]内には、[平和祈念展望台]があります。戦争の慰霊碑と平和の女神像が立つこの展望台、僕も上まで上り、そして祈りを捧げました。一昨日の、知覧の[特攻平和会館]のことを思い出します。どうもこの鹿児島旅行、「平和」ということについて考えさせられる機会が色々と多い様です。そして、この展望台から海を眺め、一枚だけ写真を撮りました。平和への希望を込めて…。
 

海辺のサイクリング。
立神岩が近づいてきます。

平和記念展望台より沖合いを写す。
[HOPE FOR PEACE]
 
[平和記念展望台]を降ります。と、別の場所からまた、更に上の方へと上れる様。せっかくなので上ってみます。上の方へ出れば、さぞ素晴らしい展望が開けているに違いありません。…期待に胸をはずませながら山道を歩きます。途中から道は細くなり、ほとんど獣道…。
 
行けども行けども、なかなか頂上へは着けません。もう引き返そうかな…。そう思った矢先に、突然足元にヘビが!! びっくり…。そしてもう退散することに(笑) 別にヘビは苦手では無いですが、でもまあ普通のヘビならばいいのですが、万が一毒ヘビがいたら大変ですし…。それにこれだけ周りがうっそうとしていると他にも何か変な生き物が出てくるかもしれません。クマでも出たらそれこそ一大事!! …て、薩摩半島にはきっとクマなんていませんが。
 
結局、頂上までは行けませんでしたけど、でも途中何箇所か展望の開ける場所があって、そこからは絶景が望めたのでまあ満足。でももしかして、頂上まで行けば[立神岩]が間近に見えたのかなぁ…。
 

火之神公園展望台からの景色その(1)

火之神公園展望台からの景色その(2)
うみ・そら…
 
景色を散々堪能した後、再び自転車に乗って枕崎の町へと戻ります。海岸沿いの道をサイクリング。と、来る時には気付かなかったのですが、この[火之神公園]入り口近くに海の側まで降りていける場所がありました。せっかくなので行ってみます。パッと景色が開けます。そして目前に広がる、[立神岩]の雄姿…。
 

立神岩がかなり近くに見えます。
凛々しいお姿。

別方向を眺めると、
そこには開聞岳の姿が…
 
さあ再びサイクリング。時計を見ると、もうお昼を回っています。枕崎の町まで戻ってお昼御飯にするとしましょう。途中、花渡川の近くまで来ると、[枕崎漁港]の看板が立っています。
 

立神岩を後ろに見つつ…
オレは自転車でひた走るのさ。

枕崎漁港。
 
そして先ほど焼酎工場を見学した、[明治蔵]までやって来ました。ここには、[花渡川ビアハウス]が併設されていて、薩摩酒造特製の、サツマイモで出来た地ビールを味わうことが出来ます。せっかくなのでここでお昼を取ることにします。
 
お店の中は広くて開放的な感じ。冷房がよく効いていて、体から汗がすーっと引いていくのが分かります。メニューを見ると、ランチがあります。サーモンのクリームソースがメインで、それに御飯とスープ、更に食後のコーヒーまで付いて何と600円前後と言う信じられない値段!! 迷わずこれを注文(笑) そして地ビール。これはサツマイモ地ビールの三種類飲み比べセットを頼みます。
 

花渡川ビアハウス。

ビアハウス、そして明治蔵敷地内のやぐら。
「さつま白波」とあります。
 
運ばれて来た料理と地ビール。ビールは、普通のビールみたく黄色の[サツマゴールド]、サツマイモの黒ビール[サツマブラック]。そして紫イモで出来た[サツマパープル]の三種類。とにかく、[サツマパープル]の鮮やかでいてちょっと怪しい雰囲気の漂う紫色が目を魅きます。
 
飲んでみると、ゴールドは普通のビールの、ブラックは黒ビールの味を基調にしながらも、やはりサツマイモ独特の風味…。何とも独特な味わい。パープルは更に独特。独特の酸味もあって、ビールっぽい?んだけど…でも??と言う、何とも形容のし難い味。と言っても勿論マズイわけじゃなくって、むしろ変わってるんだけど充分に美味しいのですが。地ビールの一つの形として、こんなのもアリでしょう。
 
カウンター席で、ビールを味わいつつ食事をしていると、ふとカウンター内に現れた中年紳士。このお店のオーナーさんなのでしょうか。結構位の高そうな感じの人です。と、そのおじさん、いきなり僕に「焼酎飲みます?」 え…?? あ然とする僕。おじさん、焼酎を入れた土瓶の様な入れ物と、薩摩切子のグラスを僕の前に置き、「飲んでよ飲んでよ。車じゃあないでしょ?」
 
…これには驚きました。まさか、こんな普通のレストランで、頼んでもいないのに焼酎を持ってきてくれるなんて…。勿論この分は全てタダ。つまりこのおじさんの、と言うかお店側のおごり、好意なワケです。嬉しいやら申し訳ないやらで、遠慮しがちに飲んでるとおじさん、「ホラ、グイッと」グラスに並々と注いできます。いや、あのまだ昼間なんですけど…まあ勿論嬉しいんですが(笑)
 
こうして、地ビールに、予想外の焼酎まで味わって、すっかりイイ気分での昼食タイムとなりました。時計を見るともう13時位。さあ、午後は坊津へと向かいます。
 
 
 
 
 
←鹿児島一人旅その(8)へ戻る。 →鹿児島一人旅その(10)へ続く。