2003年8月17日→8月23日鹿児島(枕崎)一人旅
 
 
(1) 出発の刻。
 
 
 
去年の秋に決行した、北海道への鉄道一人旅。それがあまりにも思い出深いものとなったので、今年も同じ様な旅をしたいな。そう思ったのが、今回の旅行のキッカケでした。さて、旅に出るはいいけれど、目的地をどこにしようか…。と、ふと思いついたのが、鹿児島県の枕崎。そこに何があるかと言えば、[日本最南端の終着駅](正しくは[本土最南端])があるのです。去年、稚内へと辿り着いたことで、日本最北端の終着駅への鉄道での到達を果たしました。ならば今年は…鉄道乗り継ぎでの最南端への旅路!! もうこれしかありませんッ!!
 
2003年8月17日。この日は朝から雨でした。どうも今年の夏は気候がおかしい様で、いつまでたっても暑くならないし、雨ばかり。せっかく今日から旅行なのに…かなり気分が萎えますが、かと言ってせっかく計画した旅行。まさかやめるワケにもいきません。宿とかも全部予約済みだし…。それに、新聞の天気予報を見る限りでは、鹿児島の方は明日から晴れそうです。気を取り直して、さあ出発。
 
今回の旅行、最終目標は勿論、最南端の終着駅[枕崎駅]を訪ねるということなのですが、それ以外にも色々な目的があって、その中の一つが色々な車両に乗っての鉄道旅を楽しむと言うもの。そして、九州への行きの旅路のメインとなるのが、新大阪から出発する西鹿児島行きのブルートレイン[なは]。快適な旅の初夜を過ごすべく、ちゃんとソロ個室も押えてあります(笑) ちなみに余談ですが、去年の北海道旅行で[北斗星]のチケット入手に苦労したことを考慮して、今回の[なは]はあらかじめ旅行会社で事前予約してたところ、やけにあっさりと取れてしまいました。どうも九州方面の寝台列車はさほど人気が無い様で…。
 
さて。新大阪からは[なは]に乗るからいいのですが、名古屋から新大阪までをどうやって旅するか。最初はごくオーソドックスに、東海道線の普通・快速乗り継ぎで行くことを考えていました。だけどそれじゃああまりに芸が無い!! と、ふと思いついたのが、名古屋→米原は特急[しらさぎ]を利用すると言うこと。[しらさぎ]は基本的にはもう、全車が新型車両に置き換えられています。一度乗ってみたいと思っていたところだったのでこれはちょうどイイ機会。更に更に、時刻表を見ていてふと、京都→新大阪間には色々な特急が走っていることに気付きます。そこで、この区間は鳥取方面へ向かう特急[スーパーはくと]を利用することに決定。旅行一週間前になって、この二つのチケットを追加購入します(笑)
 
さあ、話がちょっと前後してしまいましたけど、いよいよ出発です。見慣れた名古屋駅のホームに入線してきた、683系の[しらさぎ]11号。先頭車は貫通型と非貫通型。両方の顔立ちがありますが、どちらもなかなかに個性があって凛々しいです。そして、白いボディが美しい。まさに[しらさぎ]の名にふさわしいです。これに較べると、昔の485系のはどこが一体[しらさぎ]なんだか。
 

ホームに入ってくる[しらさぎ]683系。
こちらは貫通型先頭車。

こちらが非貫通型先頭車。
う〜ん、シャープ。
 
早速車内へと乗り込んでみます。ドアからデッキ部分へと入ります。ダウンライトで凝った創り。やや落とした感じの照明が何ともムーディ。そしてデッキから客室へ。サーモンピンクのリクライニングシートがずらりと並び、天井には間接照明。この照明も、デッキからの雰囲気を崩さない様に、決して照度を上げ過ぎることなく、落ち着いた車内を演出しています。そして、荷物棚には各座席毎に読書灯が付いています。天井の間接照明だけだと、ややもすると暗くなってしまうのを、この読書灯で補えると言うワケです。
 
リクライニングシートに腰を下ろすと、座り心地はかなり上々。左右の間隔もかなり広いですし、前後のシートピッチにもしっかりゆとりがあって、十分に足を伸ばしてくつろげます。腰を下ろして客室内を見回し、ふとあることに気付きました。何と言うか、客室の雰囲気がどこと無く、近鉄のアーバンライナーに似ている様な気がします。シートや壁面等、内装のカラーリングはまるで異なる雰囲気なのですが、どっしりした座席。天井の間接照明。広々とした車内。ビジネスユースをも意識した落ち着きの空間。そんなのが共通のイメージを思い起こさせるのです。
 
さて、定刻通り、[しらさぎ]11号は16:05に名古屋を出発。ここから東海道線を米原まで走ります。東海道線の名古屋→岐阜間なんて、僕は買い物なんかでよく利用する区間だけど、でもいつも乗ってる快速じゃなくて、特急車両に乗って走り抜けるのは何とも新鮮な感じがします。
 
この683系。走行音もとても静か。走り出す時も、VVVF車特有のウィーンと言うモーター音なんかもほとんど聞こえてきません。本当に落ち着きの空間を演出することに成功していると思います。ただ、それだけにこの日、同じ車両に親子連れが乗ってきてたのが残念でした…。五月蝿いんだよガキ!!(笑)
 
しかしこの[しらさぎ]。よほど人気のある列車なのか、かなりの乗車率です。僕の乗っていた禁煙の指定席車も、名古屋を出た時点で既に70%ほどの乗車率はあったのではないでしょうか? 自由席に至ってはほぼ満席。立ち客も出ていたかもしれません。これだけ需要のある列車なら、今回の新車投入は大正解だと言えるでしょう。て言うかもっと早くやっとくべき。
 

[しらさぎ]車内。間接照明が素敵。

米原駅を発つ[しらさぎ]。
彼はこれより、北陸路へと入って行きます。
 
列車は一宮・岐阜と市街地を抜け、そしてやがて緑の中へ。17:03、米原に到着しました。ここで[しらさぎ]とはお別れです。一時間ばかりじゃなく、もっと乗っていたい。そう思わせる車両でした。いつかこの電車で、北陸旅行を計画するとしましょう。
 
ここからは京都まで、快速電車で出るとします。20分ほどホームで待ち、17:24の新快速に乗車。この電車には米原から、かなりの乗車(東海道線名古屋口からの乗り換え客)でほぼ満員となっての出発。僕は運良く座れました(笑) しかしこの京阪方面への新快速。何度か乗ったことありますが、空いてた記憶があまりありません…いつ乗ってもそれなりに混雑しています。普通電車を選べばガラガラなんですけどね…。
 
途中、ボックス席の向かいに座ってたカップルが、それまで仲良さそうだったのに突然ちょっと険悪なムードになったりして、それがいい退屈しのぎとなりました。て、僕も性格悪いですね(笑)
 
18:15。京都に到着。この新快速にそのまま乗っていても勿論、新大阪に辿り着けるのですが、僕はここで下車。ここで鳥取行きの特急[スーパーはくと]に乗り換えます。
 
僕の乗る[スーパーはくと]11号は京都を18:53の発車。まだ時間があるので、駅に入線する色々な車両でも眺めてヒマ潰しをします。紀勢方面へ向かう、特急[オーシャンアロー]がカッコ良かった。
 

オーシャンアロー用283系。
こちらは貫通型先頭車。

そしてこっちが非貫通型先頭車。
イルカみたいな顔立ち。
 
待つこと約30分と少し、僕の乗る、特急[スーパーはくと]11号もホームにやって来ました。こちらもこちらでなかなかシャープな面構え。青い車体。流線型のボディ。どことなくサメを思わせます。
 
ちなみにこの[スーパーはくと]用のHOT7000系と言う車両。JRの車両ではありません。智頭急行と言う、第三セクターの会社が保有している車両だそうです。また、電車ではなく気動車です。
 

[スーパーはくと]HOT7000系。
カッコいいです。

[スーパーはくと]車内。
間接照明で、落ち着いて簡素な客室。
 
車内へと入ってみます。デッキは意外にも…と言うか何と言うか…ちょっと古めかしい感じ(苦笑) まあ清潔感は漂っているものの、まるで一昔前の、国鉄時代の車両の様な、そんな印象を受けました。思うに、最近の車両はみんなダウンライトの照明やら何やらで、凝った雰囲気をデッキ部分にも創ってますが、この車両にはそれが無いですね。蛍光灯の照明に、飾り気の無い肌色の壁面…。まあ所詮はデッキですし、この辺は割り切りと言ってしまってもイイのかもしれませんけど…。でもやはり特急車両なんですし、もう少し凝ってもイイんじゃないかな。そう思ってしまいます。
 
客室内は、天井一面に広がる間接照明。そしてブルー系の綺麗な色のリクライニングシートがずらっと並んでいます。デッキと違って(笑)、こちらはきちんと特急車両ムードに溢れています。間接照明とは言っても、683系のそれとは異なり、直接照明も併用しているので明るさも充分。室内の壁面部分に、デッキ同様の肌色を採用しているせいで、新しさの中にレトロ感がある様な、ある種不思議なムードも醸し出してはいますが(笑)、それでもこれなら特急車として十二分なレベルの雰囲気造りは出来ていると思います。
 
そしてこの車両、特筆すべきは各車両の連結面側の壁面に付けられた大型モニター。なんとこの画面に、運転室から見た景色が映し出される様なのです。このHOT7000系、先頭車の運転席直後の席からならば、ダイレクトに前面展望を楽しめる様にはなっていますが、なるほどこのモニターで、先頭車以外の乗客にも前面展望を楽しんで貰おうという心使いなのでしょう。
 
さて、定刻18:53に京都を出発した[スーパーはくと]11号。…ちょっと音がうるさいかもしれませんねこの車両。床下から、エンジン音がモロに響いてきます(笑) 去年北海道で乗った[スーパー北斗][スーパー宗谷]は同じ気動車であってもこんなことは無かったけどなぁ。
 
さて、しばらくすると車内改札。と、ここでちょっとした事件が。
 
車掌さんが来たので僕が切符を見せます。僕の切符は、[名古屋→枕崎]の乗車券と、[京都→新大阪]の[スーパーはくと]特急券。と、その二枚を見て、何やら不審そうな車掌氏…。
 
そしておもむろに開口一番、「お客さんどこ行くの?」(かなり疑った口調で)
 
乗車券は[枕崎]、つまり九州方面の切符なのに、乗ってる列車は鳥取方面へ向かう特急列車。だからこの車掌氏は不審に思ってしまったのかもしれません。
 
で、僕。「枕崎までですけど…」 車掌氏「いやこの特急で…」 僕「え、新大阪まで…」
 
そこで車掌氏、もう一度切符を見て…「あ、申し訳ございませんでした」
 
まあそりゃ、こんな変な切符の買い方する僕も悪いんだけどさ。確かに、京都→新大阪だけの距離でわざわざ[スーパーはくと]に乗る人もおらんだろうし。
 
でも、客を真っ先に疑ってかかる前に、もっとよく切符を見れば済むことのハズ。
 
ちょっと気分が悪くなったので、ワザと突っ込む僕。「僕、何か悪いことしてますか?」
それに対し、ひたすら「申し訳ありません」と平謝りの車掌。
 
…だからさ、申し訳ないじゃないんだよ!! 上にも書いた様に、切符をしっかり見れば済むことのハズなんです。いや、そうでなければ、わざわざ車内で切符を「改札」する意味なんて何も無いハズ。本来自分の行うべき義務をしっかり果たせずに、その上で客を真っ先に疑ってしまうなんて、この車掌氏はあまりにプロ意識が無いのでは?そう思わずにいられませんでした。
 
先に乗った[しらさぎ]の車掌さんは、若いのだけれど凄く感じのイイ方で、せっかくJR西日本という会社に対していいイメージを抱いていたところだったのに…。この車掌氏のせいで台無しです。というかせっかくの旅気分すらも台無しです!! もう一度言いますが、客を不愉快にさせる様ではプロ失格なのです!!
 
 
と言うワケで、
 
2003年8月17日の、京都18:53発の特急[スーパーはくと]11号に乗務していた車掌。
 
アンタは逝ってもらって結構です。
 
 
 
さて、気を取り直して旅行再開です。[スーパーはくと]は、19:17に新大阪に到着しました。ここで約一時間の待ち時間。そしていよいよ本日のメインとなる、寝台特急[なは]に乗車です。 
 
ここで、まだ1時間以上の待ち時間があるので、買出しに出かけます。何しろこれから乗車予定の[なは]。西鹿児島までの長旅なのに供食設備(食堂車・売店など)が何もありません。車内販売も、翌朝分は行う様なのですが、今夜分のは本当に何も無し。従って、ここで食料などきちんと入手しておかないと、明日の朝まで軽い兵糧攻めにあうハメになります(笑)
 
改札を出て、階段を下った階が[メディオ新大阪]と言うちょっとしたショッピングセンター街になっています。お土産屋・お弁当屋…色々とあるみたいです。とりあえずは酒…やはりこれでしょう。何はなくともとりあえずは酒。これが無ければ旅は始まりません。と言うワケで、ぐるぐる回って見つけた一軒の酒屋に入ってみます。小さなお店ながらも結構色々と置いてあります。関西地方の地ビール・地酒・地ワイン…。日本酒にしようかワインにしようか散々迷った挙句、結局ワインを購入。[神戸ワイン]と言うワインの白。やや辛口のタイプみたいです。そしてワインのお供とくればやはりチーズ。チーズを二種類買いました。ブルーチーズとカマンベール。ここの酒屋、お酒のみならず、つまみもなかなか充実しています。ここでは更に缶ビールを二本購入。これからの長い夜。そりゃワインだけで足りるハズもありません(笑)
 
そして別のお店でお弁当を購入。更にドラッグストアにて、胃腸薬を買ってその場で飲みます。やっぱり、飲む前に飲む。これが肝心(笑)
 
さあ、一通り買い物も済ませました。ホームへと再び戻ります。まだ時間があるので、ホームにやってくる色々な車両を観て過ごす時間。[なは]の出るホームの向かい側には、北近畿タンゴ鉄道の[タンゴエクスプローラ]が止まってました。ゴールドの車体がなかなかスマートです。
 

タンゴエクスプローラ。
大阪と久里浜・丹後方面を結びます。

こちらは485系による[雷鳥]。
ボンネットが古めかしい…
 
尚もホームにて待ちます。辺りを見ると、大きな手荷物を持った人が結構います。皆さん、[なは]に乗って九州を目指す人達なのでしょう。思っていたよりは、[なは]の利用者もいる模様です。そして20:15を回った頃でしょうか。ホームに、今晩の宿となる寝台特急[なは]がやって来ました。今日はこれに乗って一夜を明かし、そしてそのまま、九州最南端の都市・鹿児島市を目指します!!
 

新大阪、17番ホームの電光掲示板。
「特急なは 20:22西鹿児島」の文字が。

闇夜の中、入線してきた[なは]。
 
 
 
 
 
→鹿児島一人旅その(2)へ続く。