ライブ・レポ

《jazz》板橋文夫トリオ

日時:9月1日(日)午後7時開演
場所:福島県相馬市中村字田町54−3
ジャズ喫茶「エンドレス」
出演:板橋文夫トリオ
板橋文夫(p)井野信義(b)小山彰太(ds)


 板橋文夫氏を見るのは初めてだった。こんなに音楽にエネルギーをぶち込む人を初めて見ました。正直、驚いた。
1stステージで手から“流血”シテマシタ。
7時を回った頃、店内には約60人のお客。店は満員。Drunの小山氏以外は相馬でのステージは初めて。小山氏は山下洋輔トリオ以来、約20年ぶりの相馬のステージとなった。
一曲目はなんと「相馬の夜」...氏曰く「即興でやります」という曲でした。エキゾチックムードが漂うピアノの旋律にBとDrが重なっていく。途中、リズム調を変化させて彩りを加えていく。鎧甲冑に見を固めた武士が馬を駆り、野馬追いよろしく駆けていく姿が見えたとか見えないとか。
2曲目以降は板橋ワールド!奇声を発しながら狂ったようにピアノを弾きまくる、叩きまくる。ピアノの上にセットされたゴング(30cmくらい)とタンバリンのような民族楽器を叩く。見逃せないのがピアノの上に鍵盤ハーモニカ。いわゆる「ピアニカ」を置き、左手ピアノ右手ピアニカで彩りを加えていく。
また、合わせシンバルの小さいの(中国でお祭りの時に使うような)をなんとピアノの弦の上に置き、ジャラジャラ云わせながらの演奏もあった。
しかしスゴイのは後ろの2人もで、Bの井野氏は弓使いが抜群に巧く、弓弾きで図太いサウンドを出し板橋氏を支える。Drの小山氏はバンドのサウンドに奥行きを作るような音色の使い方。
板橋氏がSoloを取るとBとDrで支えながらも板橋氏の持てる力を存分に引き出そうと2人同じに攻撃を開始するので、Soloを取るたびに板橋氏が爆発するといった様子。このときはじめて山下洋輔の言う「ジャズはプロレスと一緒」という言葉を理解した。
そんな演奏で板橋氏は手のひらを切った様だった。
30分の休憩中に鍵盤に付いた血が拭かれた。
2ndステージは「タンゴ99」から(だと思う)始まった。タンゴのリズムを形成しながらも、どんどん氏の世界に入っていく。曲の終わりまでに次々とめまぐるしくリズムが変化する。サンバ、キューバン、8ビート、4ビートswing、2ビート。これだけのリズムをごちゃごちゃに詰めこんでも、スッとエンディングに入り、タンゴのリズム。
板橋氏がアフリカツアーの際に作った(のではないか)と思われる2曲を演奏。途中、観客に「ジャンボ!」の掛け声を入れさせたり、手を叩かせたり、「アーアーアー、アーアー!」という(見た人しかわからないだろうけど)掛け声を観客に叫ばせたり。とにかく氏のエネルギーに観客も応えたような一体感があった。圧巻だ。
普通、こういったジャズのライブではアンコールが掛かりそれに応える、といったことが当たり前の様に行われているが、この日アンコールは無かった。板橋氏がステージ中に持てるエネルギーをすべて出しきってステージを降りたのは誰の目にも明らかで、「ごめんなさい、アンコールは出来ないそうです」の声を聞いて、来ていた人は残念だと思った、と同時に当然のような、十分エネルギーを貰ったような、なにか不思議な感じになったのではないでしょうか。この店で色んな方が演奏したなかでのベストパフォーマンスだったという声もあった。
こんな小さな店で(失礼!)このライブを見れて贅沢の極みだと誰もが思ったことでしょう。


Da文:onemiss:Drum


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