2008

友ヶ島要塞跡廃墟探検


<<まえおき>>
「主任〜今度の観光地のパンフレット、どうします〜?」
「う〜ん、長いこと立ち入り禁止区域だったから、蟲とか草木とかすごいよなぁ」
「でも開けた場所があるからキャンプ場にはなりますよね?」
「そうだなぁ…よし、じゃあウリは自然と戯れるハイキングとキャンプだな」
「そうっすねぇ」
「友が島、だから、『フレンドリーアイランド』って愛称でどうだ?」(実話)
「いいっすねぇそれエスプリっすねぇ」
「まあ〜〜〜あの軍事施設は、おまけ程度に紹介しとこう」

そして和歌山市観光課に 『フレンドリーアイランド』と名づけられた(実話)この島の、 観光産業を一手に担っているのは

実はあの軍事施設廃墟だったりする。


1


いつもの見慣れた街並みの裏路地から、素敵なカフェなんかを見つける「ノラねこ探検隊」。 しかし隊長の「本当の探検とはもっと命がけだ!命の崖っぷちでタマシイを燃やしたいんだよ!」発言に(勝手に誇張)、

今回の探検は 「旧陸軍施設廃墟:友が島要塞跡」に。

いきなりローからトップギアですか!?

今回の探検隊メンバーは総勢7名。 みな今回の探検で命を落とすことも省みない猛者ばかりだ (大嘘。ハイキングのノリ)

南海電車で向かうは和歌山の西端:加太港。 ここからこの島に向かう唯一の船があるというのだ。

手すりもない海沿いの細い桟橋を渡り (ホンマはちゃんとした安全な通路が別にあった) 真紅の橋のたもとの船着場へ。

「船頭さん、友が島へ渡らせてくれ」

我々がこう告げると、 奥でお茶を出そうとしていた老婆が、短い悲鳴をあげて湯飲みを落とした。
「あ、あんたたち、ま、まさかあの島に向かうつもりなの・・・」
「お前はだまってろ!・・・あんたたち、生きて帰れる保障はないんだぜ。それでも行くのか?」

しかし眦を決した我々の心は揺らがない。 「もとよりその覚悟です。あの島の、真実を知りたいのです!」


・・・なんてこともなく、「はい往復券2000円になりま〜す」

ぎゅうぎゅうに詰めれば120人乗れるという客船で上陸を目指すのであった・・・


2


着いた港では演歌が延々と放送されていて侘しさ急加速。 山伏さんの一向と桟橋ですれ違う。修行の場所としても有名らしい。

港から一路に第3砲台を目指す。 長い間、民間人立ち入り禁止区域だったためか、 草木が生い茂り昼間でも大きな影を作る。 山道を登り続けると、途中に突然開けた小高い丘。

海からの美しい景色を一望できるこの丘で、昼食をとる。

今回持参したのは ミリめし(ミリタリー食料。実際に陸上自衛隊に納品されているものと同一)なるもの。 なんと水を150ccほど入れて20分ほどほっておくと、ホカホカのご飯ができるって代物だ。 選んだのは「マーボー丼」。 中には耐熱ビニールとパックのご飯・パックの具材、そして発熱材。

20分待つとしゅーしゅー煙を吹きながら完成。みんなで試食。 味は、思っていたよりは美味しいかな。厳しい訓練の後ならさぞかし美味いと思う。 景色を堪能しつつ、チョコとかお菓子を堪能しつつ、ひと時のまったり時間終了。

さて再び行軍。ガラリと雰囲気の変わった場所に到着する。 頑強なレンガ造りの回廊が、長きに亘り苔や蔦や草木に覆われ まるで映画:天空の城ラピュタの一場面を感じさせる。

ここが第3榴弾砲台跡。 不安からなのか高揚からなのか、拠所の解らない胸騒ぎを感じつつ回廊に踏み込むと、


地下につづくトンネル発見


「い・・・行くの・・・?」「探検ですから」「ひーーーー!」


3


第三砲台地下弾薬庫に突入。 写真だとカメラのフラッシュのおかげで明るく見えるが、 実際は懐中電灯無しではとても歩けない真っ暗闇。

こういうところだと、どんな小さな発見でも大スクープに感じられる。

「天井に穴があいてる!」(砲弾を吊り上げるクレーン跡らしい)
「小さな小窓がある!」(湿気から防ぐためらしい)
「朽ちた靴が落ちてる!」(真剣怖い。ホラー映画の冒頭かよ)

とまあ、地下探検を堪能。 地上に戻り掩蔽部前回廊を歩く。 強固なレンガ作りの建造物が、長年の草木に覆われたあたり、 天空の城ラピュタを彷彿とさせて幻想的な光景でもある。

掩蔽部に入ろうとしたとき、入り口に衣服とカバンが。


何かいる!

一部のメンバーに戦慄が走った! たいそう盛り上がっている。

いやいやそりゃそうでしょう、朝の船便で到着している人もいるでしょう。 と、その先客一行と遭遇、


・・・コスプレさん撮影中

カメラマンつきで。

なんかけっこう大掛かりな撮影器具(光を集めるボードとか)で来られていたようで。 好き勝手言ってすいません。集合写真とっていただいてすいません。


4


「ケッケッケッ〜この島は俺達がいただくぜぇ」
「そうはさせないわよ!鬼畜米兵!」
「な、何者だぁ!!」
「愛と正義の○○○○○!!(名前は適当に)くらいなさい!28連噴進砲!!(こりゃ海軍の武装だ)」
「ぐわぁぁぁぁ!!!(爆死)」
「島の平和は私達が守る!」
・・・と今にも言いだしそうなセーラー戦士のコスプレさんが撮影会をやっていた友ヶ島第三砲台を後にするのであった。

港の西側の山の第5砲台を通り、そこから海沿いに第2砲台を目指す。 ふと山道の林の中に目をやると野生のクジャク発見。青くてラメ入りテカテカ。 しかし声をあげると木のかげに隠れてしまった。写真には撮れなかったがなかなかの感動もの。 野生のリスも豊富。この時は見れなかったが、野生のシカも多々生息しているのだ。

ある意味動物園。

鬱蒼と茂った林で、肌寒いくらい。林の反対側に回ればクジャクが見えるかも、と裏側の少し開けた道を歩くと・・・

ここにも廃墟が。第5砲台予備弾薬庫。

多くの緑に覆われつつも「兵士のストイックさ」「戦争をするという狂気」を 尚も携えているようで、不思議な荘厳な雰囲気を醸し出している。

しばしこの林を満喫したあと一度港へ。そこから海沿いへ。 まずは日本でもかなり古い部類の灯台へ向かう。そこからの見晴らしはさぞかし・・・ と、人が大勢集まっている。どうも様子がおかしい。 ギラギラしているおっちゃん。イライラしてるおっちゃん。その異様なカメラのおっちゃんたち10人くらいの中に、黒いコートのお姉さん。

長年の猟奇愛好の直感で判る。「灯台の下のヌード撮影会だ!!!」

コスプレさんに続いてヌード・・・

ある意味動物園?


5


<<君にも行ける!友が島>>

Q:渡る方法?

A: 和歌山市の西、南海電車の加太港駅から船が出ているぞ! 一日数本しかない!帰りの船は16:30最終。 逃すと明日の朝まで野犬とバトルだ!(嘘。めちゃめちゃひとなつこい) 駅から道なりに西へ歩け!あえて真紅の橋を渡ると、 船着場までデンジャラスなルートになり盛り上がるぞ!(嘘。危険)

Q:特に必要なものは?

A: 廃墟への好奇心、あこがれ。まずこれ。 巨大クモ・カエル・バッタがワンサカいても動じない精神力。 アップダウンの激しい山道を長時間歩ける体力。 そして懐中電灯は廃墟を満喫するためには絶対だ! 軍服やゴシックコスプレで仲間を盛り上げるのも大事だ!(嘘) お札とか魔除けは、まあ、いらないはず。

Q:おすすめのスポットは?

島に着いたらいきなり左の山道を登り第三砲台を目指せ! すぐそばに見晴らしのいい展望台があるので腹ごしらえも。 第三砲台でいきなり地下探検!ここに時間をたっぷりさいてほしい。 その後は戻り際に山中のおごそかな第5砲台、 そこから海沿いに向かい、夏しか開いてない宿の前から、 現役の灯台や、見た目まんまラピュタの第2砲台へ。

Q:特産品やみやげ物は?

A: 無人島だ!みやげ物店なぞない! 無傷の生還をみやげとせよ!

  ※

最後は海沿いの第2砲台にて。見晴らしのいい海と廃墟の対比。 なんとも両者の質の違う雄大さに圧倒される。 最終の船便も近いので船着場へ。

これらの「大阪湾に浸入する軍艦を攻撃するため」という、 戦争という狂気から生まれた建造物たち、 そしてそれすら年月をかけて風化させて飲み込んでいく 自然の大きさ。 船を待つ波打ち際で潮風の中ぼんやりと感傷。

港町の夜は早いようで。 最後の船便を待って店を閉めれば最後の観光客を拾えようものなのに。 駅にまっしぐら。電車でうとうと。

後になんばで打ち上げ「月の庵」。フィーリングで入ったがなかなか。 豆腐料理がうまいの。探検らしい探検を祝う酒のうまいこと。 心地よい夜風と共に帰路につくのであった。


■return