~第二十二章 オリジナル~
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「関係あるんだ。俺は方舟。カンナが書いたみたいに二人を運ぶ。せいたろうとカンナを運ぶんだ。俺は二人を支えたい。それが方舟の役目なんだよ。人生の役割なんてある訳ないと思ってた。俺、運命なんて無いって思ってた。ずっと。工場なんか継ぎたくないって毎日思ってた、毎日。でも、そんな時、せいたろうが俺を救ってくれた。そうだ、俺は方舟なんだって分かった。ずっと認めたくなかっただけで、思ってたんだ。そしてカンナに出会った。あの時、あの風が吹いた時、思った。
あれは方舟が降りた時の風。その風がカンナを教えてくれた。そして揃ったんだ。ついに。二人を騙したのは悪いと思ってる、ごめん。でも、俺が書くわけに行かないんだ。二人の世界感で唄にしないと駄目なんだ。
だから、言う、ようやく言える。俺がメロディー作っていいかな。作りたいんだ。この二つの歌詞を唄にしたい。俺が作りたいんだ。」
「いつきが作る?!」
「そう、俺が作る。いいだろ?」
カンナと僕が顔を見合わせる。いつきは今にも走り出そうとしているランナーみたいな顔で僕らを見ていた。まただ。またいつきが走り出した。