第十九章 〜 スタート 〜
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「なぁ、もう言ったの?バンドのこと。」
「うん、言ったよ。」
「そうなんだ、すげーじゃん!せいたろうが自分で言うなんてすげー!気持ちがあれだからかな?」
「や、やめろよ!なに言ってんだよ!」
「ははは、でも、ようやくだ。ようやくー!・・・長かったなぁ。でもようやく始まるんだ。世界ズがさ。」
「そうだね。・・・でも言っておくけど、僕、これからギター始めるんだよ?磯野さんだってこれからドラム始めるし。」
「分かってるよ。でも来年の文化祭で発表したいよなぁ。あれだ、将来、俺らの始まりは、あの文化祭でした!って言うんだぜ。」
「はは、そんなすごいことになればいいけど。」
「なるよ。絶対。しなきゃいけないんだ。」
いつきは横になってピストルズを口ずさんでいる。磯野さんは相変わらず隠すようにお弁当を食べている。僕は焼き魚を食べながら外を見る。方舟が小さな、大きな音で今日も鳴いている。これもリズムかもって思いながら手すりに寄りかかって僕は二人を見てた。
授業が終わると、僕らは始めての練習というか、世界ズの活動のため、音楽室へ向かった。