●EWIで「伊東Lyricon」をシミュレート! |
■はじめに
1.Lyricon音色って・・・?
「Lyricon音色」・・・いわずと知れた「あの音」です。とは言ってもハバが広いのですが、伊東さんがよく使っていた「あの音」と言えばイメージできるでしょうか。
ただ、「Lyriconの音」という言葉はちょっと考えると不思議な表現です。プロが使っているLyriconは大抵が「Lyricon Driver」なのですから、音源は外部音源として接続されており「Lyriconの音」というのは存在しません。
では使用した音源の音色のことでしょうか。
しかし「音源」と一口に言っても「OVERHEIM 2VOICE」、「OVERHEIM SEM」、「PROPHET 5」、「MINI
MOOG」、「Roland System100M」、はたまた「Takecon-1」・・・色々な音源を色々な演奏者が吹いてますよね。また、色んな演奏の中でキーボーディストがこれらの音源を使って弾いてますが、「Lyriconの音」ではないですよね。また、音源が同じでも使用する波形が違えば当然違う音色になります。
でも「Lyriconの音色」は確かに存在するんですね。
「じゃあ『Lyriconの音』って一体何?」ということになりますが、色々な方の話を聞いたところあるひとつの音のイメージが浮かんできました。日本では耳慣れたというのもあるのでしょうが、それはどうやら、
Lyricon+OVERHEIM 2VOICE(ノコギリ波)
の音みたいです。もっと直球で言ってしまえば「いとしのうなじ」の音色。つまりは冒頭にある伊東さんの「あの音」です。
よって、ここでは「伊東Lyricon」をシミュレートするのを第一に考えていきたいと思います。
■いよいよシミュレート!
2−1.概 要
まずLyriconのシミュレートするために必要なものは順に以下の通り。
1.奏法
2.エフェクター(ディレイ2台、リバーブ、エンハンサ又はエキサイタ)
3.それなりの音色
「1.Lyricon音色って・・・?」で不可解だった謎は、実は奏法がカギを握っています。というより、Lyriconは奏法で音色を作る楽器だと思って下さって結構です。
例えば当時の伊東氏と同じ音源(OVERHEIM 2VOICE)を使い、当時と同じ音色設定にしても、コントロールする楽器がキーボードや一般的な吹き方のEWIではこのニュアンスは出ません。
よって、Lyriconをシミュレートする際はとにかく練習して、Lyricon独特のクセ(ニュアンス)を掴むことが重要課題となります。お手本となるCDと一緒に鳴らしてシンクロするまで吹きまくる等、相当の努力が必要になると思います。
とりあえず、練習するのにお勧めの曲を挙げてみます。
これらの曲はLyriconの表現力が色濃く出たものですので、「2−4.奏法のコツ」と共にぜひ参考にしてみて下さい。
2−1.元となる音色を作ろう
とまぁ、Lyriconのシミュレートで一番必要なのは「奏法」なのですが、とは言ってもまずは音色があった方がイメージつかみやすいですので元となる音色を作っていきたいと思います。
音色の分析は以下のとおり。
・・・ご覧の通り以外と単純な音色です。この分析を元に作った音色は以下の通り。使用する機種をクリックするとパラメータシートが出ます(新規ウィンドゥが開きます)。
見れば分かるように、そのものズバリの数値は書きません。書いてもスティックの感度誤差(コレが結構大きい)やアナログ音源ならではの物理的な誤差があるし、演奏者のブレスコントロールの仕方やブレスつまみの設定(特にBREATH VCF)でいくらでも変わりますので。背景が赤い部分はよ〜く自分の耳で確かめながら設定しましょう。
2−3.エフェクターの設定
次は音色そのものを決定づけるのに重要なファクターであるエフェクトです。特に「エンハンサ」「ディレィが2つ」というのが「伊東Lyricon」のシミュレートのキモとなります。
エフェクター類を全く持っていないが、ココを見て買う気になった・・・という方(笑)は、マルチエフェクター1台、安い(ギター用のコンパクトとか)ディレィ1台・・・をお勧めします。曲によってエフェクトを買える場合、スイッチを踏めば1つのディレィだけが消えてくれるのは便利ですし。まぁ、金に余裕のある方は「マルチ2台」とかでもいいんですけどね。(^_^;
同じくエンハンサもギター用でいいので一台用意します。エンハンサ(エキサイターとも言う)の設定はあくまで軽く。かかっているかいないか微妙な位が丁度いいです。あまりパキパキするようだとネバリのある音が消えますので。
さて、そのかけ方ですが、「エンハンサ→ディレィ→ディレィ→リバーブ」の順になります。
具体的には、
エンハンサ ちょっとだけ正相側、FREQもMIXもほんのちょっぴり |
ディレィ1 フィードバック1回のショートディレイ(原音よりちょい薄め) |
ディレィ2 2〜3回位フィードバックのあるロングディレイを薄く |
リバーブ 短く深いプレートリバーブ |
です。
マルチエフェクター1台にディレイ1台を持っている方は
●エンハンサ単体 |
エンハンサ ちょっとだけ正相側、FREQもMIXもほんのちょっぴり |
●ディレイ単体 |
ディレィ1 フィードバック1回のショートディレイ(原音よりちょい薄め) |
●マルチエフェクター |
ディレィ2 2〜3回位フィードバックのあるロングディレイを薄く ↓ リバーブ 短く深いプレートリバーブ |
となります。
各エフェクター機種毎の設定方法までは追い切れないので、各自マニュアル片手に頑張って設定して下さい。
また、今までディレィやリバーブをミキサーでSEND/RETURNして使っており、エンハンサ使うのは初めて・・・という方は、エンハンサを接続する位置に気を付けましょう。
加工系エフェクタであるエンハンサを使用する際は通常SEND/RETURNさせません。つまり、「音源→エンハンサ→ミキサー(SEND/RETURNでディレイ&リバーブ)」という接続をしないと不自然な音が出ますので御注意を。
なにはともあれ、これで随分と「伊東Lyricon」に似てきたと思います。
まぁ、この辺トム・スコットのLyriconみたいな音色がよければ「プレートリバーブだけ」とか、ソニー・ロリンズのLyriconがいいという奇特な方は「エフェクトなし」・・・とかでもいいんだけど(笑)。
2−4.奏法のコツ
次に奏法。これが一番やっかい。説明もやっかい(笑)。
EWIの場合はWXに比べ、厄介度は数段上です。そもそも「リードで行うベンド」を手で行なおうってんですから、若干の無理・無茶は気合いと根性で練習しましょう(笑)。
具体的にはフレーズの始まりや終りに効果的に付けてみて下さい(中にはフレーズ途中に入れる場合もありますが)。
EWIの場合はかなりベンド操作が忙しくなりますが、ポイントさえ抑えてしまえば後はそんなに苦にならないと思います。まぁ、そこに行き着くまでが「苦」なんですが(苦笑)。
また、ロングトーン時にはヴィブラートの変わりにベンドプレートを薄くさわって音を揺らす等も効果的です。この際、普段よりベンドの幅(深さ)を浅めに設定したり、ベンドプレートにテープを貼る等の機械的なセッティングを施した方が良いと思われます(※)。
後はビブラート。アゴと腹(息の大小)で「アエアエアエ」ってな感じに。せっかくBREATH VCFを設定しているのですから腹(息の大小)も存分に使い音をウネらせましょう。
特にEWV2000、EWI3000mを使っている方はSOUCE1、SOUCE2でBREATH VCFをズラして設定しているため、息圧で音色変化させるとウネリが出て感じ出ますよ。
ちなみにビブラートセンサー(EWI)のつまみは普段より若干高めに設定したほうが、Lyricon独特の「不安定感」を演出できます。特に登りフレーズの後のロングトーン時には音の振動を大きくすると効果的。
■最後に...
何度も言いますが、本来「Lyriconの音」ってないんですよね。でも、「Lyriconの音」って言うと、この「鋸歯」の伊東さんの音色を想像してしまうから不思議なモンです。
なにはともあれ、奏法さえきちんとすればEWIでもLyriconのシミュレートは絶対できるので頑張ってみて下さい(ベンドの関係でWX+3020mなんかの方が楽って言えば楽なんだけどね)。
(※)
「Lyriconのシミュレート」に限らず、コントロールをより良くするため、ベンドプレートにはセロテープを貼ることをお勧めします。ベンドプレートの感度がニブくなり「じわっ」とベンドが効くようになりますので。
テープを貼るというのは「感度をニブくする」のが目的ですので、人によっては二重に貼ったり、斜めに貼ったり、ビニールテープにしてみたり・・・と、様々なやり方があると思います。勿論「テープなんかいらないぜ」という方もいらっしゃるでしょうし。
色々試して自分にあったセッティングをぜひ見つけてみて下さい。
また、テープを貼って感度をニブくした際は、ベンドの幅を普段より深め(1音〜1音半位)に設定すると便利です。
ちなみに筆者(EWI1000)のベンドセッティングは
プレート上:なし
プレート下:スコッチテープ2重貼り
ベンド幅:1音
となっております。
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