糸巻き(ペグ)関係いろいろ

ここでの内容は個人的な感想であり、

効果や効能を示すものでありません。


チューニング

チューニングは、ペグを巻き上げ方向で音合わせをし、巻き下げ方向での音合わせはよくないという話を 耳にすることがある。

目的の音より高かった場合は、一端ペグを緩めて目的の音より下げ、それから目的の音に巻き上げて音を合わす のが、よいやり方という内容。

 

なぜこのやり方がよいのか、具体的なことは分からないが、私もチューニングには必ずこのやり方をしている。

 

※ここでのチューニングは、デジタルチューニングメーターを使って、オクターブ・ハーモニックスでのチューニング。

 

以下、推測である。

 

弦を張った状態で糸巻きを回すと、ナットと弦 との間で摩擦が生じている。ヘッドがネックに対して傾いているため、ナットには弦を押し付ける方向に大きな力が加わり、これが糸の巻上げ、巻き下げする時の摩擦として働く。

 

ある程度張られた弦を巻き上げると、まずは糸巻きとナットの間の弦が引っ張られ、ナットで生じている静摩擦の限界を超えると、弦のナットとの接触点は糸巻き側に移動し、従ってナットとブリッジ間の弦が引っ張られる。

 

この移動時も摩擦は発生しているが、これは動摩擦であり、

静摩擦>動摩擦

という関係がある。

 

移動時に瞬時に糸巻きを止めた場合、大雑把には

(糸巻き・ナット間の弦の張力)=(動摩擦力)+(ナット・ブリッジ間の弦の張力)

であり、一方、糸巻きを巻き始めて、ナット上の弦が動き出す直前では、

(糸巻き・ナット間の弦の張力)=(静摩擦力)+(ナット・ブリッジ間の弦の張力)

となり、巻き上げ時の(糸巻き・ナット間)と(ナット・ブリッジ間)との張力の差は、最大で静摩擦力、最小で動摩擦力の差となっている。

 

巻き下げの場合には、摩擦は反対方向に作用する。

移動時に瞬時に糸巻きを止めた場合、大雑把には

(糸巻き・ナット間の弦の張力)+(動摩擦力)=(ナット・ブリッジ間の弦の張力)

であり、一方、糸巻きを緩め始めて、ナット上の弦が動き出す直前では、

(糸巻き・ナット間の弦の張力)+(静摩擦力)=(ナット・ブリッジ間の弦の張力)

となる。

 

つまり巻き下げでは、糸巻き・ナット間の張力は、ナット・ブリッジ間の張力よりも小さい。チョーキングとか強いピッキングでナット・ブリッジ間の張力が更に引っ張られる時、その上増しの張力が静摩擦力より大きい場合は、ナット上の弦の接点はブリッジ側に移動し、従って音程が下がることになる。

 

巻き上げてのチューニングの場合は、動摩擦相当の大きさの静摩擦力が反対方向に働いているので、この摩擦力と、逆方向の静摩擦力の合計での上増しの張力が働かなければ、ナット上の弦の接触点は移動しえない。

さらには、ナット・ブリッジ側の弦の張力の方が大きいので、この張力差をも上回らなければ、接触点は移動しない。

 

巻き下げの時と比べて、巻上げた時の方が、音程を安定にしている余裕が大きいことになる。

 

 

また、巻き下げでチューニングを合わした時は、巻き弦の場合、フレットを押弦しての音がほんの少しシャープ気味に出ているように思う。音程が同じであれば、ナット・ブリッジ間の張力は同じはずなので、巻き下げであろうが巻き上げであろうが、フレットの音程は変わらないはず なのだが。

 

可能性として考えられそうなのは、ネットでの摩擦力の向きの問題。

巻上げで調弦した場合は、ナットでの弦の静摩擦力は、ナット・ブリッジ間の弦が緩む方向に働いている。

巻き下げの場合は、その逆で、ナット・ブリッジ間の弦の張りを大きくする向きに働いている。

 

調弦が慣れた弦であれば、通常のピッキングと押し弦ではナット上の弦の接触点が移動することはないが、ナット上での巻き弦の巻き線にかかる力が異なるので、

 

 

弦の張替え

弦の張替えでは、音が悪くなった弦を1本ずつ取り替えるのが正しいとする意見がネットで多く見かけられる。例え6弦全てを交換するにしても、1本はずしては 新しい弦を取りつけて調弦する、を6弦ひとつずつに行い、6本を同時に取り外すということはしないというやり方。

 

ネックへの負担を考えるなら、全弦を外した状態と、調弦した状態では、張力が大きく違うので、1本ずつというのが正しいのかもしれない。 ただ、その場合には、指板をクリーニングすることはできない。