「一瞬の夏」沢木耕太郎
カシアス内藤を見ている「私」が述べる、夢への活動がこの本の内容であると思う。20歳の時に問うようタイトルマッチに無惨にも敗れてしまったカシアス内藤をどうにかしてもう一度戦わせたいという自分の夢をカシアス内藤に重ねてみてしまっているのである。皆の期待が内藤に集まり、どこかに逃げることのできなくなってしまった内藤の思いがありありと現れている気がする。黒人と日本人のハーフということもあり、どこか居場所を無くしている内藤にとってカシアスと名を付けられたのは皮肉であったろう。(カシアス・クレイとはアメリカで有名だった黒人ボクサーの名前であり、またの名をモハメッド・アリと呼んだ。)
Posted: 水 - 5月 25, 2005 at 10:44 午後