【読書録】
〜アタリ本過去ログ!〜

とりあえずジャンル別、書いた順に並べました。
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□宗教・思想□

□日本史□

□その他学術系□

□ノンフィクション・ドキュメント□

□ミステリ□

□純文学□

□歴史系小説□

□異世界小説□

□エッセイ・その他□

□漫画□




■宗教・思想■

□ブッダの方舟/中沢新一・夢枕獏・宮崎信也/河出書房新社/1989

上記の三人が仏教について対談しております。はまりました……。とにかく内容が深い深い。聖書は読んでても仏教教典なんか一言だって読んでいない私じゃ、半分も理解できなかった(笑)。情けない。でも面白いんですよ! 特に、夢枕さんはどちらかというと専門家ではないから、中沢さん+夢枕さんの対談が一番分かりやすくて入り込んでしまいました。話題としては、中沢さんがチベット密教の方だし宮崎さんは真言宗のお坊さんなので密教系の話が大分あった。仏教は宗教というよりも思想とか科学に近いとか、自己表現の触媒と考えたほうが良いみたいな話とか、目が鱗が落ちました。キリスト教の話もからんできたりとかするし。これ読んで、ちゃんと教典読む気になりました。現代語訳したのならなんとかいけるかもしれない。読むぞ!(そしてこれをもう一度読むのだ!)

■日本史■

□隠された十字架/梅原猛/新潮社

なにを隠そう、私が日本古代史にはまった原因はこの本です。高校1年の時に出会いました。祖父の本棚に2冊あって、1冊奪ってきたのが運のツキ(^^; とにかく面白い! 梅原さんは人を引き込む文章を書くのがとても上手だと思います。内容は「法隆寺が一体誰によって何のために建てられたのか」を、法隆寺にある謎7つの検証を通して洗い直していく、というもの。学校で教えられて覚えるのは「聖徳太子が建てた」って事だと思うんですが、それが全然違う結果になるんですよー。今は井沢さんが言うようになったら有名になってきた説ですが、「法隆寺は聖徳太子鎮魂の寺である」という結果が導き出されるのです。論証も、私のようなへぼへぼ素人には説得力がありすぎで(^^;感化されまくりました。ここから端を発して、「古代には怨霊信仰というものがあったのだ」という宗教的な大きい問題へと発展して結論づけられています。しかし史学学界では未だにその説は認められていないそうで。・・・頭固いからな〜(笑)。特に宗教問題は・・・。フィクションにしたって、これはかなり面白い説だと思います。ミステリにあきたら、これを読め!?

■その他学術系■

□文字逍遙
/白川静/平凡社ライブラリー
ご存じ、立命館大の名誉教授白川先生! 中国文学というか、文字学が素晴らしい(なんて私が言うなんておこがましいにも程がありますが)。有名な逸話があって。学生運動が盛んな時期にも大学の研究室で一人夜中まで研究してらっしゃって、殴られしまった事があるそうです。でもその次の日にはまた夜遅くまで研究室の灯をともして研究を続けられたとか。学生もその後は何も言わなくなったらしいです。信念てのは人に伝わるモノだよな、と噛みしめて聞いた覚えがあります。
さてさて、この本、高校の時読んだのですが・・・(古い)。難しいんですけど、面白いんだ。これがまた。象形文字の造りから漢字本来の字義を面白いくらいドラマティックに読み解いてくれる1冊。自分の説には絶対の自信を持ってらっしゃるので潔いですし、迷うこともない。字や言語、言葉っていうのは、その時代時代の文化や習慣・思考なんかを読み解く為に本当に重要な、ヒトと密接な鍵なんだと思い知らされた一冊でした。
□「学ぶ」から「使う」外国語へ/ 関口一郎/集英社新書
付き合いの長い公文の先生(←算・国・英・独・仏なんでもやる)が、久しぶりに遊びに行った時プレゼントしてくれました。読み始めたら止まらないー! 文章がうまい!! すぐ読み終わります。オススメです。外国語を道具として駆使する為の授業をなんとかしようとすごく努力なさったのですねぇ。……最近お亡くなりになっ たと聞きましたが、本当に残念です。日本の外国語教育が根本から覆る、草分け的大御所になっていたはずでしょうに……。ご専門がドイツ語なもんで、異様な親近感があったことは確かでしょう(笑)。でも、英語専門だったら見えなかった事もあると思うなぁ。うん。いやもう小気味イイ!という様なことも色々書いて下さってて、読み進める程、ニヤリ。学習法はすごく参考になったし、やってみようかな。取り敢えずジャンル分けは取り敢えず……F1からか?(笑)

■ノンフィクション・ドキュメント■

□宇宙からの帰還/立花隆/文春文庫

初めて読んだ立花氏の著書。今のところ一番のオススメ! いやー、これはホントに面白いです。宇宙飛行士に対して、精神的な面から徹底的にデブリーフィングを行ってみよう、というコンセプトで取材がなされているます。通常宇宙飛行士というのは、地球に戻ってくると専門家によって徹底的に質問をされ、それに答えるという作業(これをデブリーフィングと言う)をまるまる二日以上かけて行うそうです。飛行士自身から報告されなかった「ささいなこと」と思われることに、実は大きな意味が含まれていることが多いからだそうです。しかしこれまでその内容は科学的・技術的なことに偏ったものでした。もちろん、NASAや旧ソ連の「打ち上げ」目的はその情報収集なのですからそれで当然。立花氏はそこをあえて精神的な面からインタビューを行った初の本です。これを読むと、宗教観の変化や意識の変化などについて興味深い事がいっぱい書いてあります。むしろ日本人には受け入れやすい方へと思考が変わっていくのですね。キリスト教信者だったり無神論者だったりする「典型的アメリカ人」である宇宙飛行士が、次第に東洋の宗教に目を向けそちらを受け入れていくというのも興味深い。また、月まで行った人とそうでない人にも大きな意識変化の差が見られて面白いです。技術的なことで片時も頭を休めることが出来なかった人は、宇宙に行っても「何も変わらなかった」というのも面白い。
今鋭意読書中の「臨死体験(文芸春秋刊)」を読むと、体験者の意識変化内容がすごくこれと似てて面白いんですよ。これも読み終わったら書きますが、今のところ二番目にオススメなのはこの本です♪ おもろいで〜♪


□『脳死』『脳死再論』『脳死臨調批判』/立花隆/中公文庫

各刊行年数は、『脳死』'86、『脳死再論』(以下『再論』)'88、『脳死臨調批判』(以下『臨調』)'92となっており、そうとう古い本であることは間違いない。 が、脳死問題の根幹を知るには適切なテキストだと思う。特に『脳死』は本当に分かりやすく、かつ面白い。その後の2冊は脳死問題について社会が動く度に、著者が書いた論文を集めた作りになっており、『脳死』を読んだ後であれば、『再論』は和田移植の論文を重点的に、『臨調』は付随されている最終報告を呼んだ上でばーっと流し読みという読み方が出来ると思います(つまり短時間で読めちゃう)。
俺はバリバリの文系ですが、専門外ながらに、内容の簡便かつ詳細な説明、論理の精緻さ、説得性には文句の付けようがありません。とても読みやすい本です。俺の医系の友人が、 大学受験時に小論の題材としてよく見たと言っていたことからしても、内容的にプロパーの人間にも受け入れられるものであると見てもよいと思います。更に言えば、古い本であるにも関わらず入試に用いられるくらい「時事」に対応しているわけで。これは良い意味にも悪い意味にもとれますね。つまり、本そのものとしての価値はこの長いスパンで見ても妥当性のある、信頼に足るモノであること。しかし、上梓された後、更に言えば臨調以後も、このような問題が未だ残っていることが分かるわけで。私は臨調以後の動きを今は知りませんが、取り敢えず『臨調』に少数派で意見提出なさった梅原先生の脳死反対意見の本でも読もうかと思っています。一部、この本の理由では説得性に欠ける、という意見もありますが、根本姿勢には賛成です。つまり、日本人は日本人でまず死の定義をして、移植問題はそれから、でしょう。しかしこれを言っているのが梅原先生というのがまた俺的ツボ(笑)。まさか脳死読んでて行き当たるとは思っておりませんでした……。
それにしても、臨調の審議録を読んでみたくてしょうがありません。今もどこかで入手できるのでしょうか??

■ミステリ■

□十角館の謎/綾辻行人/講談社ノベルス&講談社文庫/????

「館」シリーズの第一作です。一冊完結型なのでどれからでも読めますが。綾辻さんの小説は、トリックやプロットが細心の注意を持って配置されていて、必ず最後に爽快感を伴うどんでんがえしが来る所がたまりません。また、小説でないと表現できないトリックも見所かと(友人、七丸談。私も同感です)。ホラー作品も多く、ミステリテイストのホラーやホラーテイストのミステリなんかも絶品かと。(ただしホラー嫌いな人にはススメません/笑)。
最近新作(暗黒館の殺人)がまた連載され始めたので嬉しくなってしまいます♪ 大ファンなので嬉しいですね〜! 待ったかいがあった!!
綾辻以後、という言葉があるほど本格ミステリでは代表的な書き手さんです。ミステリ好きなら読んで絶対損はない!


□京極堂シリーズ/京極夏彦/講談社ノベルス

世の中ではミステリィという区分になってるらしいのですが、そう思って読まないことをオススメします。ミステリィ風和製妖怪オカルトホラーといったところでしょうか・・・。単に「クセがある面白い小説」と思うのが一番正しい(^^; 作品全体を貫いている思想的な背景が馴染まない人はいるかもしれない。でも勉強になるしオススメです。古本屋兼神主兼陰陽師である京極堂(本名:中禅寺秋彦)とその妹敦子、売れない私小説(?)作家関口巽、人の記憶が見える奇人探偵(笑)榎木津、無骨でマメな刑事の木場などの一癖も二癖もある登場人物によるシリーズ。外伝を含めると全部で8冊。
注※600頁以上の本を見ると失神する人は絶対に目にしないこと!(笑)

●姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)
朽ち果てそうな病院を中心に巻き起こる「赤子殺し」の噂。そして、役に立たない探偵社に飛び込んできた依頼とは、病院にまつわるもう一つの噂、「妊娠し続ける女」に関わることだった・・・。シリーズ一作目。
一番短い話です(笑)。これでも。事件もそう複雑じゃないので、初心者はここから行きましょう。記憶と意識論みたいな話をえんえんとやってます(笑)。

●魍魎の匣(もうりょうのはこ)
匣の中に娘がいた。それを見てしまった男が選んだ道とは・・・? そして、美少女加奈子を巡る人物達は一体何なのか。黒く真四角な研究所では何が行われているのか・・・? そして、彼らと中禅寺の意外な関係が明らかに!
・・・というような内容です(笑)わけわかんないですね(^^; 今のところ私が一番好きな作品です。これはもう・・・完全にホラーだと思う。私は夜を徹して読んでいたのですが、本当にシャレでなく怖かった。小説って、どんなに感情移入して読んでいても所詮は非現実だ・・・って、心の隅では思って読んでいると思うんですよ。そんなだから、劇中劇なんてもっと「嘘だろ」と思って読んでる。・・・でも、それが、もし真実だったとしたら?・・・叫びそうになるほどのおぞましさですヨ・・・。
ホラー好きじゃないヒトには耐えられないかも知れないけど、ホラーに快感を感じるヒトには「黙って読め!」という位にオススメ!!!!・・・スプラッタではないですので、その辺はご安心を。映画の「リング1」に震えあがった貴方、きっと素質はあります(ニヤリ)。

●狂骨の夢(きょうこつのゆめ)
海に浮かぶ頭蓋骨の噂。それにだんだん髪が生え、肉が付き、再生したという噂が流れ・・・。過去の記憶を無くした女と、過去の記憶を違えた女。そして過去の記憶に人生を振り回される男。過去とは何なのか。自分とは?
このあたりからですかね。考えさせられるテーマが必ず出てくるようになるのは。自滅した精神科医と自滅しきってる私小説家の対比が面白い(笑)。フロイト・ユングあたりに詳しくなれましたよ・・・全然知らなかった(^^; 密教系の話題過多ですが、この話はわりと易しい気がします。しらなくても単なるオカルトと思って読んで大丈夫。・・・一番衝撃が少なかったのは・・・おそらく前後の作品の印象の強さのせいでしょうねぇ・・・。

●鉄鼠の檻(てっそのおり)
山奥にひっそりと誰にも知られずに建っている禅寺。事件はここの僧が殺されることから始まる。一体何のために、何故殺されたのか・・・? 次々と起こる殺害の裏にはどのような思いがあるのか? 一作目に出てきた病院の院長、そして、あの事件を起こす要因を造ったと言っても過言でない人物が、因縁の再会。伏線を覚えてない人は読み返そう(笑)。
芳冬が二番目に気に入っているのがこの本。友人の戒韻が挫折したのもこの本です(^^; 禅の説明に大きくページが割かれているので、まっっっったく何も知らないよりは知っていた方が楽しめます。とりあえず、話の核となる、禅思想の極み『十牛図』。これを押さえておくだけで、ニヤリと出来ること請け合いです(笑)。いや、見事です。ほんと。伏線としてのこういう利用法があるとはね・・・脱帽です(誉めてるんすよ! メチャクチャ!!)。

●絡新婦の理(じょろうぐものことはり)
隔離された女子校で非現実を生きる少女達。黒いマリア像が徘徊する校内。願い事を聞いてくれる優しい悪魔・・・。そして一方、目つぶし魔が徘徊する現実と、次々と起こる殺人事件。全く違う事件だとしか思えないひとつひとつが、蜘蛛の糸のようにからまりあって関係している・・・。
事件の複雑さにかけてはこの作品が一番すごいんじゃないかと思います。「書き方」にも感嘆の嵐。真相は冒頭にあるのにね〜全然わからないからね〜すごすぎる。キリスト教系雑学が多少あるとニヤリと出来る可能性が高いかと・・・。

●塗仏の宴(ぬりほとけのうたげ) 宴の支度・宴の始末
最終話。ついに二分冊です(笑)。今までの小説で語られた者のうち、生き残った人総出演ですので、これだけは前5作を読んでから読みましょう。自分とは何なのか、真実とは何なのか、個とは権利を主張できる程偉いモノなのだろうか・・・というような事を1200頁でえんえん考えさせられてる感じがしました。
読んだ直後で暴走した感想なんですけど・・・今までの中で一番善く分からない話やった・・・そしてあまりに壮大な話しすぎて、「これで終わりってどういうこっちゃー!」という気分です。ハッキリ言って、欲求不満。前までの5作は、いちおう事件ごとに解決が付いていたんですよ。納得のいくよう、それなりに。でも今回はそれらの事件すら抱え込んで伏線にされている構想のデカサでしたからねぇ。京極さんの頭の良さは「支度」を読んでて死ぬほど分かったけど。憑き物落としの時間が異様に短かったのもその理由かな・・・だいたい本の4分の1はそれに割かれるんだけど、今回は・・・6分の1もあったんだろうか。結局あのヒトは投獄されたままだし・・・(笑)。あうう、これって続き無いんですよねー?


□二階堂蘭子シリーズ/二階堂黎人/文庫版は講談社にて発刊中。他、立風書房発行。

舞台設定は戦後直後の昭和44年頃。警視庁総監を義父に持つ名探偵二階堂蘭子、そしてワトソン役(というか、書記?)の二階堂黎人が登場する、二階堂氏の代表著作。 「地獄の奇術師」を最初に読んで感じたのは、「うを〜なんか、懐かしいぞ〜! これぞ『探偵小説』だ〜〜!」という強烈な印象・・・。もちろんそれもこれも二階堂氏の意図的な罠であったわけで。ご本人のコメントや作品解説を読んでいると、古典作品を強く意識されて書かれている様子。なにしろルブランと乱歩と言われれば、私も小学生時代に狂ったように読んでましたから、フィーリングが合わない方がおかしいのです。はまりましたね、こりゃ。 本格派と呼ばれる作家さんのは何人も読みましたが、こーゆー思いをさせてくれるのは蘭子シリーズだけですね。懐古主義? いいじゃないですか、面白ければ!(笑)

●地獄の奇術師
最初に読んだ作品。まずなんといっても、注釈があるのにびびってしまった記憶あり(笑)。登場する犯人役のおどろおどろしい雰囲気といかがわしさ、怪しいエクソサイザーと教会等々。こういうソースにプラス少々グロテスクホラー風味が加わって、芳冬が逃れられるとは思えませんわね(笑)。キリスト教の教義に言及するとこなんて、かなり興味深いですね。蘭子の立場がまた、すっごく「分かる」だけに・・・葛藤とかも、なんか、他人事と思えません(笑)。

●吸血の家
何故か「聖アウスラ」の後に読んでしまいました(^^; 注釈があるのはこの2冊目までなんですよねー。ノベルスで読んだら相変わらず最後に全部載せてあったのでクライマックス読みそうになって苦労しました・・・。後で文庫版見てみたら、読みやすいように変えてあって呆然(笑)。 古典作品(特にカー)読んでいればもっと楽しめたんでしょうが・・・でもまぁ、読んでなくても充分面白いです。特に今回は3つのトリック一つ一つが冴えてると思います〜。血族的なおぞましさも感じられる作品。(でも京極と違ってホラーにはならないんだよなぁ・・・不思議)

●聖アウスラ修道院の惨劇
注釈ないので拍子抜け(笑)。
さびれた修道院(女学校)に棲む謎の存在を蘭子が看破していくあらすじ。桜の木にぶら下げられた首なし死体で幕を開けるという、これまた乱歩的グロさを思い出させる作品。途中で「犯人は吸血鬼よ!」とか言うのでどうなるのかと思ったら・・・ちゃんと「推理小説」してくれたので満足です(笑)。

●悪霊の館
まぢで長いお話でした……。これは、最初に延々と背景説明がありまして、かなり挫折しそうになりましたが……流石、二階堂黎人。本編は退屈どころか、過度の魔術装飾やら薄気味悪い洋館(まんま悪霊館が舞台ですから)なんかで、一気に読める内容でした。やはりこの人の面白さってのはプロット自体がトリックとして扱われているところにあるよな〜分量もすごいが、やはし内容で満足。

●ユリ迷宮
悪霊の館読んでないのに読んでしまった作品・・・。
3つのうちでは特に、「ロシア館の謎」の終わり方というか、オチがすごく好きです。幸せな気分に浸れる短編。
全体的に、長編とは雰囲気違いますね。トリックも当然ひとつで勝負!というかんじだし。どちらも好きですが。・・・個人的に、今、コントラクト・ブリッジがやりたくてしょうがありません(笑)。誰か付き合ってやってくれ!(むしろ、二階堂先生主催とかでコンベンションやってくれないかなぁ←無理言うなアホ)

●泥具根博士の悪夢  魔を呼ぶ密室  
密室殺人大百科の上巻に掲載されている短編。
これまた、短編といえど侮れないオイシイ素材で満ち満ちています。妻を愛するあまり欲するものの矛先が狂ってしまったマッドサイエンティストに、「完璧な密室状態」を意図して作られた部屋で行われた密室殺人! うーん・・・血沸き肉踊りますなぁ・・・げへ(←汚い)。


蘭子シリーズで読んだのはこれだけ。あと「バラ迷宮」「人狼城の恐怖」が残っています。
その他の作品についてもいずれ載せていくつもりです(特にボクちゃんシリーズ!)。

■純文学■

□いちご同盟/三田誠広/集英社

私の三田体験は中学時代までさかのぼる。「いちご同盟」という名著があって、ぼろぼろになるまで読み込んだ。その頃家から徒歩5分の場所に臨時図書館が出来たので、あの薄暗くて人のいない、殺伐とした図書館に行っては三田誠広を読んだ。なんだか懐かしいな・・・。デイドリーム・ビリーバーとか、なんとなく覚えてる。
◇この、文学を全く(!)読まない私が、純文学系統ではまった唯一の作家かもしれない。
中学三年生の良一は、同級生の徹也を通して、重傷の腫症で入院中の直美を知る。繊細な少年の恋愛と友情、生と死を描いた長編。(文庫本紹介文から抜粋)
これを読んだのは多分中学2〜3年で、作中に出てくるラヴェルのパヴァーヌから非常に強い印象を受けました。それまで曲自体を知らなかったんだけど、CD買って楽譜買って、はまりましたね。小説の、言葉に出ていない内面的な部分が、曲の題名一つで全て体の内側に流れ込んでくる感じがしていたのだと思います。今でもパヴァーヌは大好きです。フランスものが好きな影響の一端を確実に担っていますね(^^;

□文学部唯野教授/筒井道隆/岩波書店

……よく考えたらこれも割と構造的には「閉じられた」ものを ワザと作っているよなー。つまり、全体の分け方は週一回の講義が単位なんですよねー。
あらすじは…本題は文学批評論なんです。文学批評史が知りたい人は絶対に読むとイ イ。特にド素人ね、俺みたいな。相当細かく唯野先生がレクチャーして下さいます。 注釈も付いています。詳しくやりたいときはそっから出来る。しかも面白い。……で も多分、読み始めたら「そんなこと」はどうでも良くなる本です(笑)。
メインはどっちかっちゅーとさ、大学内部事情、の方っぽいんですよね(笑)。とに かく大学というのはどういう組織でどっちが強いとこっちにコネを作り、どうやった ら助教授が教授になれて、飲み会の付き合いとか二次会がどうのとか(笑)大学とい うアカデミズムの見にくい(醜い)部分の結晶みたいな感じで、それがまた苦笑の極 地、という意味で可笑しいんだな〜(笑)。あまりにあからさまだからもー笑うしか ない(^^; あと、まぁ、「うちの大学はこうだな」って比べたり。大学批判を正 当にやるよりよっぽど正確で皮肉的で真実味あるんじゃないかね(笑)全部が全部あ あとは言わないけれど、ま、ああいう部分があるのは確かだし。大学に行ったことの ある人にお勧めします。

■歴史系小説■

□陋巷に在り/酒見賢一/新潮社/〜10巻以下続刊

孔子の弟子である顔回の話。・・・というとすごく固そうなんですが、この酒見(さけみ)さんは中国モノの題材を料理するのがとても上手い方で、キャラクターもすごく魅力的に描かれています。おもしろいです。沢山の人に描かれている聖人孔子像がこの小説を読むとくずれるかもしれない。私のイメージではごつくて肩幅が広い渋い頑固な策略家のオヂサンになっています(笑)。もちろん、中国史を全く知らなくても全然大丈夫! 読んでいけば知らないうちに酒見節の効いた中国史うんちくがしっかり頭に残るというお得な仕組みです♪ 個人的には白川静氏の引用が多いので楽しいです。私も(おこがましくも)尊敬している一人なので・・・。儒教に興味のある人なら間違いなく引き込まれます! 有名な「ファンタジー大賞第一回」の大賞作「後宮物語」は、この酒見さんの作品です。

□薔薇の名前 Il nome della rosa/ウンベルト・エーコ

日本語版は上下巻で解説付きです。
イタリア人で記号論の権威であるU・エーコが書いた処女作(だよな?)でして、大変に入り組んだ作りになっています(色んな意味で)。
あらすじは…そうだなぁ、中世の修道院で起こる殺人事件、犯人を追う過程で明らかになる聖域の昼と夜 の顔、そして迷宮─アリアドネの助け無しに脱出できる種の─、様々な謎が謎を呼び、謎の根源に位置するのは誰なのか…?というような話(だと思う)。浅ましいジャンル分けを行えば、歴史物推理小説ってことになるんじゃないかと思います。
でも実際は様々な意図を内包していて非常に言い難い小説です。一般には映画の方が有名らしい(まだ見てない)。小説は挫折するって言いますけど……や、別に全然読 み難い本じゃないですよ、ホントに。先入観じゃないの?って感じで。彼自身も書いていますが、最初の何十頁かは「試練」なんだそうです(笑)。本の世界観に着いてこれるかどうかの(^^; そこを過ぎれば「貴方は私のものだ」ということらしい(笑)。堕とされましたネ、見事に(笑)。
西洋史、特に中世が好きな人には特にオススメです。読むに当たっては……うーん、やっぱりキリスト教の知識だけは…「現代の西洋人の常識レベル」は必要だと思う。それナシに読むと辛いのかなぁ。一般の「日本人」て、キリスト教のことどれくらい知ってるんだろう。まーでもこれはその事前勉強を克服する価値はありますよー。あと多分、ダンテの『神曲』を読 んでおくと有益なんだろうな(まだ読んでない)。こんな感じです。難しい、異端の話とかは、「わっかんねー」と思って読んでいると語り手である見習い修道士が師匠に質問してくれます(笑)彼も分かってないのね〜とか思って微笑ましかったよ(^ ^; だから全然大丈夫です。イタリア語原版は知らないけどね。難しいだろうけど。
んで、これ、書いたときの話とか意図とか裏話的な本があって。「『薔薇の名前』覚え書き」というのなんですけど、これは文章術上での大変面白い示唆がありますので、ネタバレ覚悟ならこれ単体でも是非読んで欲しい。これは短いしすぐ終わります。でも文章は……俺にはこっちの方が難しかったけどね。
とにかくこだわりが感じられるのね、本として、作品としての体裁が整いすぎるほど整っていて、怖いくらいです。面白かったのは……実は、京極堂シリーズと作りが似ている!と思ったんですけど……これ、俺だけなのかなぁ……。塗仏まで読んでて『薔薇の名前』も読んでいる人がいたら是非語りたいんですけど!!(無理そう…)


■SF・ファンタジー■

□デルフィニア戦記シリーズ/茅田砂胡/中央公論社/全18巻

異世界から飛ばされて来たリィが初めに出会ったのは何人もの暗殺者に囲まれる一人の男。なりゆきで男を助けることになったのだが、実はそれはある国から追放されてきた国王で・・・?・・・という感じの序章から始まります。
国王の追われている理由は? リィは元いた世界に帰れるのか?・・・あたりが見所なんかなぁ?(^^; キャラが魅力的で、感情移入のしやすい作品ではないでしょうか。完結した今でも大人気で、最近画集(イラストは沖さん)が出まして、今欲しいんです(笑)。ファンタジーが好きならオススメです。


□タイム・リープ
/高畑京一郎/主婦の友社/上下二巻

電撃ゲーム文庫の大賞を受賞なさった方です。あの賞で出てきた人はかなり面白いので信用しているんですが、この人はホントーにウマイ!! 頭いい人なんだろうなぁ・・・尊敬。現在は三作目の「ダブル・キャスト」が好評発売中。
ある事がきっかけで「意識」が肉体の置かれている時間軸に沿らずに飛び始め、過去と未来を行き来するようになった女子高校生、鹿島。困った彼女が見た日記には、過去の日付で未来の自分への助言が書いてあった。曰く、「君に相談しなさい」・・・。様々な策を立てて、彼女の意識を時間軸に沿うように元に戻す手腕は、見事! パズルのピースが次々とはまっていく感覚が爽快です♪

■エッセイ・その他■

□ショパンに飽きたら、ミステリー/青柳いづみこ/国書刊行会

この出版社は、濃いんですよ、実は・・・。それはどうでもいいんですけど(笑)。
ピアニストで、ドビュッシー研究家でもある青柳先生(・・・とお呼びするのが適当かどうか・・・)です。私がドビュッシーにはまる原因になって下さった方です。ドビュッシーなんぞ何も知らない時にトークを含むコンサートに行って、そのまま何故か(笑)好きになってしまいました。フランスもののピアノ曲が好きなのは、青柳先生のお陰といっても過言ではありません。「音楽ネタのからむミステリーについてのエッセイ」という内容の本です。とにかく、読み出したら止まらない! 面白いです! 音楽をちょっとでもかじった事のある方ならより楽しめるんではないでしょうか? 演奏家の隠された素顔がのぞける一冊です♪


□深くておいしい小説の書き方
/三田誠広/集英社文庫

懐かしさにほだされて(笑)買ってしまった。そしたらやはり面白かった。
この中で「小説体験」みたいな話が出てくる。彼はドストエフスキーだのヘーゲルだの、とにかく文学をメチャクチャ若いときにメチャクチャ沢山読んでいる。「ああ、やっぱり私は文学を向きじゃないな」と改めて自覚した(笑)。で、中でも初めて感動した本は「愛の妖精」(ショルジュ・サンド著)という本だそうで。あらすじを紹介して下さっているのですが、人の内面の変化を恋愛を通して描いているような作品らしい(・・・と思う)。成る程、作家という人種はそうなのか。俺が最初に感動したのは高一の時の「隠された十字架」だったからな・・・(爆)。文学向きでないことを更に確認(笑)。更に、後に「いちご同盟」ネタが出てくる。どうも、一般的な女性は自分をヒロインに投影するらしい。病弱な美少女に。ところが、いくら思い返しても私はそういうスタンスで読んだ覚えがない。私が自己投影したのは・・・ピアノが上手い、なんとなくハッキリしない(笑)主人公だった。あれを読んだ後イヤと言うほど「亡き王女のパヴァーヌ」にこだわり、思い出すたびやるせない・・・しかしなんだか忘れたくない、かすかな心の痛みを伴う気持ちになった(詩的?)わけは、どうやらそれらしい。フツーの文学少女ではなかったことを更に自覚(笑)。
長々と書きましたが、この本は「深くて美味しい小説」の「書き方」を教えてくれるだけでなく、「小説の読み方」を教えてくれる「深くて美味しい」本です。興味のある方は一度のぞいてみてはいかがでしょうか。

□東工大「作家」教授の幸福/秦恒平/平凡社

ごめんなさい。作家さんということなんですけど、小説の題名はおろか名前も知りませんでした。
この本は、この方が定年までの4年間だけ、いわゆる「パンキョー」の文学担当教授として東工大にお勤めになった時の、学生のミニレポートが中心となってます。
後輩に理系受験希望の子が居て、無謀にも(失礼)東工大行きたい!と騒いでいたので(笑)、題名を見たとき「ふぅん、東工大かー」と思いまして、手に取りました。文学概論など理科系の生徒にやっても意味がないという考えから、『毎時間、挨拶がわりに井上靖の短歌を、ただ、詠む』から始まり、色々なテーマ(「死後とは?」「祈りとは?」「父とは?」「寂しいか」等々……)について授業中に書かせて提出、それを先生が全て読んで翌週に生徒へ伝えてやる、というような内容だったようだ。もちろん、授業中は先生が容赦なくしゃべり続ける。なんと300人前後の収容人数の教室が500人くらいでいっぱいになったそうな。理系学生(しかも研究者レベル!)が人文に興味がないなんてヒドイ偏見だったと反省してます。
とにかくよく泣いた本だった……いや、私が特に涙腺が弱いのは自覚してるのですが。泣けます。
テーマが「東工大の一般教育について」だった時のレポートなんですが、これは是非文部省の人にでも読んで欲しいと思いました。多かれ少なかれ学生は皆こう思ってるんだな〜と思うと安心した。つまり……いわゆる「パンキョー廃止」の動きに対する批判だとか、専門科目以外のことを学ぶことについての重要さだとか。結局勉強ってのは自分でするしかないし、専門てのはほっといたって興味があるから自分でやるし、やる為の手段を持っているけれども、それ以外の事というのはやはりレクチャーを必要とする。そういう意味で、一般教養というのは凄く大事、という考えは、決して独りよがりなモノではないと思う。
授業の形態としては、俺の東洋史概説を担当して下さった教授がこれとほとんど似た形式だったので、すごくイメージしやすかった。毎回、古代中国の政治や人物論、コーランの思想などや、そこから引き出され考えられる現代に於ける問題点を2つテーマに出され、小さな紙に毎回書いて提出する。人数はだいたい、200人弱位。秦さんよりも、多分、ずっと毒のある人だった。授業中は、テーマについて先生が話し続ける。毎時間、学生を挑発するような刺激的な意見を吐き続け、批判・批評大歓迎!という方針でミニレポートを書かせ、全部読む。何週かに一回、それらの意見の中から先生が「これぞ」というもの(各テーマにだいたい5人前後。多いときもある)を選び出して掲載。批評する。真っ向から先生論に反発しているモノが好まれ(笑)、安易な同意をするより、視点を先生と変えて論議することを求められた。いわゆる紙上討論の形に近かったと思われる。匿名性は皆無で、全て本名が記載された。同一紙上にいくつものテーマに渡って採用される者もいれば、一年間無掲載の者もいただろう。内容は…といえば、学生の方が驚かされるほど、濃かった。皆真剣に一論者として意見を述べ、戦った。(載った意見に対しての批判も受け付けられたからだ。)あの授業ほど、概説として適切だった授業はなかったと今でも思う。学問をする、という事に対しての態度というか、考え方を教わったと思う。この教授、一般教養でも同じ形式の授業をしているらしいが、きっと面白いに違いない。ちなみに……巷では「レポートを全部出せばC、一回載ればB、二回載ればA、それ以上ならAA」とまことしやかに言われていた(笑)。真相はどうだったんだろ?

■漫画■

□白のファルーカ/槇村さとる/集英社文庫コミック版/全4巻

かなりの大御所先生ですね。最近では「イマジン」がドラマ化、「おいしい関係」が完結しました。
この話は、樹里という“愛の権化”な(笑)サッパリキッパリで“イイ女”な女の子が主人公。松木恵というスケーターに憧れてフィギュア・スケート始めたが、演技中に事故を起こしてアイスダンスに転向。なんと樹里をパートナーに選ぶ。シンデレラストーリーかと思いきや、恵はメチャクチャわがままで樹里を振り回すばかり。そこにまー、それはそれはネチッコイ“憎しみの権化”たる海堂まで出て来ちゃって、複雑な家庭環境・人物関係が浮き彫りになり混乱する樹里。しかし問題は山のようにあり、厳しい選択を突きつけられ続け・・・。槇村さんの絵での表現力もさることながら、なにより、人物の心の動きが一番の読みどころだと思います。人と人との関係に対する問題意識というか、難しさとかを考えてしまう。
このお話は“愛”と“憎しみ”の聖戦物語なのだそうだ。お描きになっていた本人さえ、ラストは予測できなかったとか。槇村さんの作品の中で一番印象深い最高の作品だと思っています。(好きなのはいっぱいあるんですけどね!)

□ハイテンション根性ERS
/中村かなこ/小学館/全5巻
芸能界ネタ。歌手でグループデビューしたものの一発屋で終わってしまった芸能人「紅林やこ」と名古屋出身のお笑いコンビ(笑)「根性ERS(コンジャラーズ)」が、コント番組を一緒にやるようになって・・・!?・・・というような導入。中村さんの描くマンガはどれもいい男といい女が溢れてるんですよ〜! そしてすごくイイ関係を築いてる。読んでいると「く〜っ! いいなぁ、この話!」と、思わず拳を握ってしまう感じ(笑)。最後には必ず幸せで、ちょっぴり切ない気分にさせてくれます(←恥ずかしい台詞・・・でも他に言いようが見つからぬ・・・)。
とにかく読んでくれれば面白さが分かります!!・・・そして抜け出せなくなります(笑)。

□め組の大吾
/曽田正人/小学館/全20巻
『火事のないめでたい「め」組』・・・そう呼ばれている署に配属された消防士、朝日奈大吾の異常な活躍、そしてその裏にある葛藤、それを乗り越えての成長などを描いた作品。消防署のポスターにもなっていましたし、有名ですよね。大吾の「火事のない世の中を望まなきゃいけないけど、火事が無くなったら俺達は必要が無くなる・・・。自分は、心の底では火事が無くなることを恐れているのではないか」という葛藤が痛いほど伝わってきます。消防士としての救助が天職だと思えば思うほど重くのしかかる影に対して大吾がどう成長していくのかが最大の見所。読み応えのある作品です。「シャカリキ!」もかなり好きだったんですが、個人的にこっちの方が好み・・・。読み終わったとき、自分の中に何かが大きな「確信」として残るような気持ちがしました。

なんか私の趣味って・・・ひどくまとまりがない・・・(とほほ・・・)。

◆モドル◆