カンタベリー派にもおすすめのザッパ
邦題が「フラック・ザッパの◯△□」(単にジャケットの見た目から安易につけられだけで内容とは全く関係ない。曲名もメチャクチャやりたい邦題)ぼくが最初に聴いたのがこれ。今でも一番好きかも。ザッパではこれが最も売れたと聞いた事がある。初めの一枚として、これをいちおし。"Valley Girl" でのコギャルのおしゃべりもインパクトある。A面ファンク・ポップ。B面アヴァンギャルド。とにかく密度が濃い!(追記:プロコフィエフみたいな "Envelopes" は「London Symphony Orchestra」に管弦楽版あり。ジャケットは抽象画ではなく原題タイトルの通り。よく見てみよう)
* The Mothers Of Invention - Absolutely Free (1967)
めまぐるしい展開をする "Brown Shoes Don't Make It" が聞き物。仕掛けの多いポップな歌を矢継ぎ早に繰り出してくるところなど、なんとなく Soft Machine の2枚目と似ている。マシーン1枚目の "Hope For Happiness" では「We're Only in It for the Money」収録“曲”"Absolutely Free" のフレーズが引用されてたり(逆か...)、「Uncle Meat」はチェンバー・ロックの元祖だったり、カンタベリー系への影響も見逃せないが、こっちはブロードウェイ・ミュージカル的な所もあって、アメリカ〜ン。(追記:Egg と同様に、ストラヴィンスキーとホルストの引用がある。偶然か)
一曲を除いてオール・インスト。どの曲もかっこよくて聴きやすい、ジャズ・ロックの名盤。血沸き肉踊るヒーローもののテーマ曲のような "Peaches en Regalia" がアドリブなしで畳み掛ける展開を見せるかと思えば、Captain Beefheart が歌う "Willie The Pimp" でのザッパのギター・ソロは Mike Ratledge のオルガンと同様、永遠に終わらないかのようだ。「Uncle Meat」 収録曲のインスト版 "Son of Mr. Green Genes" はその両面を合わせたような曲で、最高! "Little Umbrellas", "It Must Be A Camel" は奇妙な味のあるチェンバー作品。"The Gumbo Variations" はソロの応酬で燃える。(追記:CDはオリジナル・アナログ盤とはミックス違いの別ヴァージョン)
ライヴの一曲を除き全てシンクラヴィアによる自動演奏。「Uncle Meat」から続くチェンバー路線の延長上にある作品と言える。全然ジャズではない。ましてやテクノでもない("G-Spot Tornado" はYMOみたいだが...)。スピード感のある異様な音空間が快感。なんとグラミー賞を受賞した。(追記:"G-Spot Tornado" は後にオーケストラ用に編曲された。遺作「Yellow Shark」に収録)
この他に84年のライヴを収録したビデオ
もおすすめ。楽しい。CDは同タイトルながら別内容。
更に深みにハマりたい方へ
この3種は最後のツアー(88年)の時のもの。文字どおりの超強力バンド。この時のライヴが見たかった。つくづく惜しい。
68年マザーズ、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのライヴ。前半はほとんど演劇。後半のインスト・メドレーが圧巻。
ジョン・レノンとの共演ライヴ(「Some Time in New York City/Live Jam」に別編集で収録)も含むが、初心者が最初に聴くものじゃない。ツアー道中や楽屋裏でのしゃべりが中心で、日本人には辛いっす。
* Cucamonga Years (compilation) →Cucamonga
これは1962-64年当時の裏方としての仕事をまとめたもので、R&B、ドゥ・ワップ、サーフ・インスト等。「Ruben & the Jets」に近い世界。
「オン・ステージ」シリーズは、2枚組CD6セット(後に全12枚組ボックスも出た)。過去の様々なライヴ音源をランダムに集めたもの(Vol. 2 は1公演まるごと収録、など例外あり)。とは言え、編集の鬼ザッパの面目躍如たる見事なテープつなぎによって時間/空間を超越して一気に聴けてしまう。
「ビート・ザ・ブーツ!」シリーズは、良質のブートレグを集めて正規盤を作ってしまったもので、LPボックスが二つ出た。最初の分はボックスが飛び出す絵本(懐かしい! 今もあるのかな?)になってる。CDはバラ売りで、「雑派大魔神 ボストンで立腹」とかそのようなタイトルで8種、MSIから日本盤も出たが、今は廃盤かも。このシリーズはブートの内容/ジャケット共そのまま再現したもので、ブートのブート(リプロ)を作ったことになる。もちろんブートの製作者には無断で(連絡しようもないんだが...)。つまりこれまでの復讐をしたってことね。音の方は一応イコライジング(デジタル・リマスター)したようだが、元々盤(板)起こしなので音はあまり良くない。ビギナーは手を出さないように。
「オン・ステージ」は初心者でもOKだが、「ビート・ザ・ブーツ」は正規盤を全部制覇して(聴き倒して)しまって、もう聴くものがない、という人のためのもので、マニア向け。(ぼくも持ってはいるけど、ほとんど聴いていない。老後の楽しみにとっておく、といったとこか...)。