Random Disc Review #4
John Lennon Yoko Ono Double Fantasy
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John Lennon & Yoko Ono - Double Fantasy (Capitol, 2000)
(Just Like) Starting Over / Kiss Kiss Kiss / Cleanup Time / Give Me Something / I'm Losing You / I'm Moving On / Beautiful Boy (Darling Boy) / Watching The Wheels / Yes I'm Your Angel / Woman / Beautiful Boys / Dear Yoko / Every Man Has A Woman Who Loves Him / Hard Times Are Over
bonus tracks:
Help Me To Help Myself / Walking On Thin Ice / Central Park Stroll (dialogue)


ジョン・レノン没後20周年、デジタル・リマスター&ボーナス・トラック付ミレニアム・エディションCD。

1980年、久しぶりに音楽シーンに復帰したオリジナル・アルバムとして生前に発表されてはいるが、ジャケットの雰囲気も含めて遺作として出来過ぎの感があり(出だしのチーンという鈴の音は今では死者への弔い以外の意味を聞き取るのは困難)、ジョンが射殺されたニュースに衝撃を受けた者にとっては感傷抜きでは聞けないアルバムだ。

ジョンの曲とヨーコさんの曲がほぼ交互に配置されていて、曲間をつなげたり、前後の関連性が考えられた構成になっている。その二人の交感がこのアルバムの重要なコンセプトなのだが、ヨーコさんの曲を飛ばして聞いてた人が多かったに違いない (^^;)。確かに、ジョンの曲は熟成した大人のロックの境地に到達していて素晴らしい。オールディーズ風味の "Starting Over"(ちょっとビーチ・ボーイズの "Don't Worry Baby" のようなメロディが出てくる)をはじめとして、"Beautiful Boy""Woman" と広く知れ渡った名曲が揃っている。ぼくが大好きなのは、ピアノとダルシマーの響きが印象深い "Watching The Wheels"4枚組アンソロジー・ボックスに収録されている生ギターの弾き語りデモを聴くと、ピアノの印象的なリフが未だ出来ていないのが分かる)

一方、今これを聴くと、ヨーコさんのスゴさを感じずにはいられない。激しく挑発する "Kiss Kiss Kiss"や、1分半しかないパンキッシュな "Give Me Something"、ボーナス・トラック "Walking On Thin Ice"(エルヴィス・コステロがカヴァーしている)で見せる攻撃的な面ばかりではなく、可憐な "Yes I'm Your Angel"(ジャズのスタンダード "Makin' Whoopee" に酷似)や、オリエンタルな哀愁味のある "Beautiful Boys"、ゴスペル的な "Hard Times Are Over" 等では優しさも見せ、ジョン以上に先進的でバラエティに富み、ヴォーカリストとしての魅力も感じられる。一般的ビートルズ・ファンからは過小評価(というより毛嫌い)されていたヨーコさんの音楽的才能を改めて認識させられる。

注目の未発表曲 "Help Me To Help Myself" はピアノ弾き語りデモ。"Imagine", "Real Love", "Grow Old With Me" 等に似た感じのバラード・タイプだが、まだ発展途上であり名曲度はそれほどでも...。弱さを曝け出したゴスペル調の歌詞が意味深。最後のトラックは曲ではなく、散歩中(?)のジョンの一声。十数秒しかない。

Randy Newman Bad Love
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Randy Newman - Bad Love (Dreamworks/Universal Victor, 1999)
My Country / Shame / I'm Dead (But I Don't Know It) / Everytime It Rains / The Great Nations Of Europe / The One You Love / The World Isn't Fair / Big Hat, No Cattle / Better Off Dead / I Miss You / Going Home / I Want Everyone To Like Me

オリジナル・アルバムとしては11年振りとなる、ランディ・ニューマンの最新作。いつものあの塩辛い声にノスタルジックな曲調(歌詞の方は皮肉たっぷり)も相変わらず。が、プロデュースをラテン・プレイボーイズなどで知られるミッチェル・フルーム&チャド・ブレイクが手掛けており、音の感触が今までのアルバムとは微妙に違っている。とは言え、基本的にはロン・セクスミスのアルバムと方向を同じくするオーソドックスな仕上がりで、トンガッた実験性は押さえられている。

1曲目、アメリカ讃歌、に見せといて違うんだろうな。
2曲目は "Lonely At The Top"(「Sail Away」収録)に少し似てる。「シャラップ!...ごめん」には吹き出してしまった。(^o^)
3曲目、すごいタイトルだ (^^;)。ザラッとしたギターがラテン・プレイボーイズみたいでかっこいい。コーラスが笑える。
4曲目は一転してしっとりと泣きのバラード。マイケル・ジャクソンのために書いたが、結局ボツになった、という意外な事実。
以下略。

余談その1:Vine Street

ランディ・ニューマンがヴァン・ダイク・パークスに書き下ろした "Vine Street" は、知る限り4種類のヴァージョンがあるが、イントロ部分の歌(ヴァース?)が全部違う。
Randy Newman Guilty
  • Van Dyke Parks「Song Cycle収録(オリジナル)
     Steve Young (?) が歌うカントリー・ソング。
  • Harpers Bizarre「Secret Life of収録
     ハーパースの前身バンド The Tikis の曲だという "Bye, Bye, Bye"
  • Nilsson「Nilsson Sings Newman収録
     ビートルズ風コーラスの入ったロックンロール "Anita"
  • Randy Newman「Guilty: 30 Years Of Randy Newman(4枚組ボックス=右写真)収録の未発表デモ
     ヴァースは付いてないが、前の曲 "Golden Gridiron Boy"(激レアなデビュー・シングル)がそれに相当するように構成されている。
ヴァースが終わって登場する本編の歌詞が
「今のは僕たちが作ったテープ、哀しいかな成功しなかったけど・・・」
で始まるから、こういう造りになってるのだろう。しゃれてるね。

余談その2:Film Score

ランディはオーケストレーションも素晴らしい。ボックス4枚目の映画音楽特集でまとめて堪能できる。インストだと(あの声がないおかげで?)メロディのはかない美しさが際立つようだ。「ラグタイム」「ナチュラル」「わが心のボルチモア」「マーヴェリック」等で古き良きアメリカの香りに浸る。「バックマン家の人々」(何度見ても泣ける大好きな映画)や「トイ・ストーリー」のテーマ曲などランディのヴォーカル入もある。おバカ映画「サボテン・ブラザース」のランディ本人のデモ(傑作!)はボックス3枚目に収録。"Clef Club No.2 (from Ragtime)" には驚いた。「アメリカ横断ウルトラクイズ」でお馴染みのあの曲じゃないか。(^^)
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