Random Disc Review #1
Can Flow Motion
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Can - Flow Motion (Virgin/Spoon, 1976)
こんなクソ暑い時には皆さんどんなものを聴いてますか? ボサノバなんかいいでしょうね。ジョアン・ジルベルトの声は涼しい。サーフィン/ホットロッドもピッタリ。初期ビーチ・ボーイズ最高! 50年代リー・コニッツ辺りのクール・ジャズもエエナァ〜。

で、ぼくがおすすめしたいのはこれ。コアなファンからは“実験性に乏しい”“退屈”とか評判はよくないみたいだが、この脱力感が気持ちいいのだ。
ポップで、ジョギングのBGMに合いそうな“もっと欲しい”、トロピカル(死語)“滝のワルツ”、のんびりレゲエの“泣くまで笑え、死ぬまで生きろ”、アフリカンな“煙(贋作エスノ・シリーズ第59番)”、そしてアンビエント・レゲエ“流れる動き”
冷房のガンガン効いた部屋でこれを聴きながらダラ〜っとしていたいな〜。

Eraserhead Original Soundtrack
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Original Soundtrack - Eraserhead (I.R.S., 1982)
デヴィッド・リンチ監督、長編第1作(1977年)のサントラ。収録時間40分弱だから編集は入ってるが、聴いた感じは映画そのまま。全2トラック。アナログ盤のAB面で区切られてるのだろう。
内容はほとんどノイズの嵐(ごぉ〜〜〜〜、びゃーーーー)。時折挿入されるのが、セリフや効果音、赤ん坊の泣き声(これが恐い)。音楽的なのはごく一部、ノイズにまぎれて遠くで鳴ってるパイプ・オルガン(オールド・ジャズの巨人 Fats Waller が弾く教会音楽風ラグタイム、これもかなり変)の断片と、お多福娘(Lady in the Radiator)の歌 "In Heaven"(歌ってるのは Peter Ivers という“男性”。作曲 Peter Ivers 、作詞リンチ)のみ。
Designed & Produced by David Lynch & Alan R. Splet

Miles Davis John Coltrane Complete Columbia Recordings
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Miles Davis & John Coltrane
- The Complete Columbia Recordings 1955-1961

(Columbia/Legacy, 2000)
最初にイチャモンを。今回もボックスの造りが酷い。CDが入った紙ケースとライナーが一体となって読みにくいのは相変わらず。今までのシリーズと違うのは、外箱が金属製になったこと(改悪。何故に蛍光灯が?)。CDケースに曲目が書いてないのは不便。元のジャケ写真も載せず、代わりに 何の関係もない、おしゃれ?な都会のイメージ写真が...(OUT THERE か、お前は!)。CD盤もディスク番号 (Disk1-6) が無くて、判別するのにコツが要る(赤丸と時計の文字盤との位置関係が対応)。不便極まりない。いったい何考えてんだ?

ただし、音質は大変良くなり、内容も文句のつけようのない素晴らしいものであることは言うまでもない。アルバムMilestones収録曲はすべてリアル・ステレオで収録。

いくつか入ってる未発表テイクは、本テイクに劣らず楽しめる。今まで散逸していた'Round About Midnightのセッションも録音順に並べることで、最初はバップ特集、2度目のセッションは歌もの特集であったことに気付いた。

<未発表テイクに関するメモ>
  • "Dear Old Stockholm" はテンポがかなり早い。
  • "Straight, No Chaser" のガーランドのソロが面白かった。本テイクでは、パーカーの "Now's The Time" (Savoy) におけるマイルスのソロを引用してブロック・コードで弾いていたが、その前のテイクを聴くと、シングル・トーンのソロからブロック・コードに移り、自然発生的にそのフレーズに近づいていって、ソロの終わりは尻切れトンボになってる。次の本テイクでは意識的に弾きにいってるのがわかる。
  • "Milestones" におけるマイルスのソロで、"Fran-Dance" のメロディが顔を出す!

観月ありさ ARISA III LOOK
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観月ありさ - ARISA III LOOK (日本コロムビア, 1994)
パッケージのつくりが Pizzicato Five「overdoseみたいだと思ったらやっぱりコンテンポラリーのお仕事。音の方は小西氏絡みの4曲以外聴くべきものなし(小室哲哉2曲、他4曲)。でも意外に歌上手いね。

1. 遠い記憶
(作曲/小西康陽 編曲/坂元俊介)

短いワルツ・インスト。遊園地を連想させるスチームオルガンの音色が遠い記憶を呼び起こす・・・なんちゃって。

2. パリの恋人/トーキョーの恋人
(作詞・作曲・編曲/小西康陽)

“恋人たちは...”“audrey hepburn”などオッシャレ〜な小西フレーズてんこもり。アコーディオン使用でフレンチ風の味付け。なんとなく佐々木麻美子時代の未発表曲って感じも。

7. Friend and Lover
(作詞・作曲・編曲/小西康陽)

「グレイト・ホワイト・ワンダー」のライナーにもあるとおり、オケは野宮(ピチカート)ヴァージョンと同じで、もろ“ハッピー・サッド”路線。しかしこのコーラス(ハーイ!)うっとうしいなあ...(^^;;

10. 甘い記憶
(作詞/杉村純子 作曲・編曲/小西康陽)

“遠い記憶”と同じモチーフを用いたワルツ。出だしはちょこっと“世界中でいちばんきれいな女の子”かと思わせるが、全体としては“優しい木曜日”に近いムード。ここでもフレンチ・テイスト溢れるアコーディオン(小林靖宏)が活躍。

この4曲だけ選んでミニアルバムのつもりで聴くと、たいへんよろしい。ピチカート・ファンは(中古で安ければ)買って損はしない、と言っておこう。

For The Love Of Harry Everybody Sings Nilsson
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1. Randy Newman
..."Remember"
2. Marc Cohn
..."Turn On Your Radio"
3. Aimee Mann
..."One"
4. Fred Schneider
..."Coconut"
5. Joe Ely
..."Joy"
6. Ringo Starr with
Stevie Nicks

..."Lay Down Your Arms"
7. Beckley/Lamm/Wilson
..."Without Her"
8. Lavern Baker
..."Jump Into The Fire"
9. Steve Forbert
..."The Moonbeam Song"
10. Peter Wolf and the
Houseparty 5

..."You're Breaking My Heart"
11. Jennifer Trynin
..."Mournin' Glory Story"
12. Al Kooper
..."Salmon Falls"
13. Victoria Williams
..."The Puppy Song"
14. Marshall Crenshaw
..."Don't Forget Me"
15. Brian Wilson
..."This Could Be The Night"
16. Jellyfish
..."Think About Your Troubles"
17. Bill Lloyd
..."The Lottery Song"
18. Ron Sexsmith
..."Good Old Desk"
19. Adrian Belew
..."Me And My Arrow"
20. Richard Barone
..."I Guess The Lord Must Be
In New York City"
21. The Roches with
Mark Johnson

..."Spaceman"
22. John Cowan
..."Don't Leave Me"
23. Jimmy Webb
..."Lifeline"
V.A. - For The Love Of Harry: Everybody Sings Nilsson (Music Masters/BMG, 1995)
玉石混交様々なトリビュートものが巷に溢れる昨今、別格とも言える逸品がこれ。全員がノーギャラで参加した、銃規制推進チャリティというのもニルソンらしくて心暖まる。選曲は中期のものが多く、「Son of Schmilsson(シュミルソン二世)」から6曲も取り上げられているのが目立つ。個人的に好きな「The Point!(オブリオの不思議な旅)」からの3曲は嬉しい。

まず1曲目からいきなり泣かせる。オープニングにふさわしい人・曲はこれしかないという感じ。思い入れの深さが身にしみる。
3.ではなんと Neil Innes(Bonzo Dog Band)と Chris Difford(Squeeze)がバックで歌ってるのにビックリ。しかも "Together" のフレーズを入れたりしてニクイねえ。
7.の陳腐な現代風アレンジにはちょっとガッカリ。
それに比べて、4. 11.のオルタナ系轟音ギターはハマッてると思う。
15.は予想通りのスペクター・サウンドで意外性は全くないが文句は言うまい。
16.ニルソンのお気に入りバンドだったというジェリーフィッシュ(解散が惜しい)は素直なカヴァーで微笑ましい。
19.もオリジナルに忠実で、トッド・ラングレンの「Faithful」を思わせるアプローチ。
特にグッと来たのが18.。シンプルながら絶妙に凝った音作りと味のある歌が素晴らしい。

ライナーによると、少年ナイフも参加する予定で録音までしたのに外されたとか。やはりこのメンツの中では浮いてしまいそう。ハチャメチャに破壊したようなのがなく、全体にまとまりの良い仕上がりで統一感がある。何よりもそれぞれにニルソンへの愛が詰まっていて、聴いた後には幸福感が味わえる、トリビュートの鑑(ミラー・オブ・トリビュート...笑)とも言えるアルバムだ。
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